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ネイピア数の不思議に迫る!①

公開日

2025年7月9日

更新日

2025年6月28日

こんにちは!和からの数学講師の岡本です。今回は高校数学でも登場する、何かと不思議で魅力的な「ネイピア数 \(e\)」について、歴史から身近な応用までわかりやすく解説していきます。

1.ネイピア数の定義と歴史

ネイピア数 \(e\) は、17世紀初頭にジョン・ネイピアが「対数」の概念を発明したことに端を発します。ただし、当時ネイピア自身は \(e\) という定数を明示的に扱ってはいませんでした。

その後、ヤコブ・ベルヌーイが複利計算の研究の中で、次の極限

\begin{align*}
\lim_{n \to \infty} \left(1 + \frac{1}{n}\right)^n
\end{align*}

が一定の値に収束することを発見し、これが現在の \(e\) の定義のひとつとなっています(値はおよそ 2.71828)。

18世紀にはレオンハルト・オイラーがこの定数を自然対数の底として体系化し、指数関数 \(e^x\) を解析学の中心に据えました。ちなみに「\(e\)」は「オイラー(Euler)」の頭文字に由来するという説もあり、「オイラー数」と呼ばれることもあります。

2.ネイピア数と確率

ネイピア数が登場する身近な例として、以下のような確率の問題を紹介しましょう。

【問題】1/100 の成功率のゲームを 100 回行った場合、少なくとも 1 回成功する確率はどのくらいでしょうか?

このような状況は、スマホゲームのガチャやトレーディングカードの封入率などにも置き換えられます。一般に「100回やれば1回成功しそう」という感覚があるかもしれませんが、「必ず成功する」という意味ではありません。

このような問題は、確率の理論を用いて定量的に評価できます。ここで驚くべきことに、ネイピア数が裏側で活躍しているのです。

3.確率の計算

では、実際に計算してみましょう。「少なくとも 1 回成功する確率」は、「1 回も成功しない確率」の余事象として求めることができます。

1回の成功率が 1/100 の場合、失敗率は 0.99。100 回すべて失敗する確率は:

\begin{align*}
0.99^{100} \approx 0.37
\end{align*}

したがって、「少なくとも 1 回成功する確率 \(P\)」は:

\begin{align*}
P = 1 – 0.99^{100} \approx 1 – 0.37 = 0.63
\end{align*}

つまり、成功率が 1/100 のゲームを 100 回行えば、約 63% の確率で少なくとも 1 回は成功するということになります。

さらに一般化してみましょう。

【問題】成功率が \(1/n\) のゲームを \(n\) 回行ったとき、少なくとも1回成功する確率は?

同様に、「1回も成功しない確率」は:

\begin{align*}
\left(1 – \frac{1}{n}\right)^n
\end{align*}

したがって、「少なくとも1回成功する確率 \(P\)」は:

\begin{align*}
P = 1 – \left(1 – \frac{1}{n}\right)^n
\end{align*}

この式の右辺を変形してみましょう。

\begin{align*}
\left(1 – \frac{1}{n}\right)^n
&= \left( \frac{n-1}{n} \right)^n \\
&= \frac{1}{\left(1 + \frac{1}{n-1}\right)^{n-1} \cdot \left(1 + \frac{1}{n-1}\right)}
\end{align*}

この式に対して、極限 \(n \to \infty\) を考えると:

\begin{align*}
\lim_{n \to \infty} \left(1 – \frac{1}{n} \right)^n = \frac{1}{e}
\end{align*}

よって、

\begin{align*}
P \approx 1 – \frac{1}{e} \approx 0.63212…
\end{align*}

となります。つまり、成功率が \(1/256\) のゲームを \(256\)回行う場合も、成功率が \(1/1000\) のゲームを \(1000\)回行う場合も、少なくとも1回成功する確率はほぼ 63% に近づくことがわかりました。

このように、私たちの身近な確率問題の背後には、ネイピア数 \(e\) がひそかに姿を現しています。

4.さいごに

今回は、ネイピア数 \(e\) の定義や歴史から、日常にひそむ確率の問題までを通じて、その魅力を感じていただけたのではないでしょうか?

実はこの \(e\)、まだまだ不思議な性質を秘めています。たとえば、小数点以下が無限に続くけれど循環しない「無理数」であり、さらに「超越数」であることも知られています。

次回は、ネイピア数が「無理数」であることの証明に迫ってみたいと思います!お楽しみに!

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<文/岡本健太郎>

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