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文系の新社会人に捧ぐ!今こそ数学を学ぶべき3つの理由

公開日

2016年4月30日

更新日

2016年4月30日

この春、社会人になられた皆さん、おめでとうございます。

新しい環境はいかがですか?

新人研修で、いろんなことを学んでいるところかもしれないですね。そう、社会人になっても「学び」はずっと続きます。

学生時代までは勉強のための勉強であり、探求することそのものが主な目的だったと思います。

でも社会人になると、仕事で生産性を上げるため、成果を出すために勉強する、そんな感じになります。

エンジニアや建設系などの技術職の方は、これからも日常的に数学と接し、仕事に活かすことが続いていくことでしょう。

でも、理系職種の人だけなく、「もう数学とはおさらば…」なんて思っているであろう、営業、企画、マーケティング、管理系の文系職種に就いた方こそ、社会に出た今、数学を学ぶべきなのです。

どうしてそんなことが断言できるのか…?

今回は、「数学を学ぶべき理由」を、大人のための数学教室 和(なごみ)の3人の先生方に一つずつ挙げてもらいました。

理由1.数学は、仕事をする上で皆が持つべきコミュニケーション道具だから

まずは、「大人のための数学教室 和(なごみ)」を運営する和から株式会社の代表でもある、堀口先生に経営者の視点も織り交ぜつつ、数学を学ぶべき理由をお話ししてもらいました。
horiguchi

数学は、仕事をする上でも、日常の生活を送る上でも、社会人として身につけているべき『常識』の一つだと思います。

特に、ビジネスの現場では、数字が共通言語です。

「Aさんの今月の売上は200万円で、目標達成率は105%でした」
「今月の売上は、前年同月比で120%でした」
「1件成約するために必要なアポイントの数は平均すると20件です」

こんな感じで、個人の実績も会社の業績も、数字で語ることが求められます。

皆さんも会社で働き始めてから、周りが数字であふれていることに気づいたのではないでしょうか。

「Aさんは今月たくさん売りました。おめでとう!」
「去年よりは多く売れた気がするし、お客さんから感謝の言葉もいただけたし、好調なんじゃない?」
「今期も頑張ったな!来期もとにかく全力で頑張ろう!」

もし上から下までこんな会話しかしていない会社があったら、非常に残念です。

すべての出来事を解釈するときには、定性的なもの、定量的なものの2つに分けることができます。

もちろん定性的(なぜ?どうなった?など)なものは非常に重要ですが、定量的(売上・人数・経費など)な把握は間違いなく必要です。

数字はある意味で残酷です。事実を事実のままに伝えるので。

しかし、その数字としっかり向き合っていくことでこれからの改善や成長につながっていきます。

事業が過去から現在まででどう動いてきたかを把握すること、これからの市場を予測してこれからどんな施策を打っていくのか意思決定すること。

これらのことを、数字を使って捉え、考えなければ、感覚や直感に頼るしかなくなります。

基準となる数字が分からなければ、過去が良かったのか、悪かったのか、これから成果が期待できるのか、望み薄なのか、いずれも判断することは難しいでしょう。

課題は何なのか仮説を立て、仮説に基づいて施策を実行し、結果何の指標が変わったのか(変わらなかったのか)を検証する。

これを繰り返しながら、よりよい結果を求めていくことは、ほとんどすべての仕事に共通するものです。

そこに必要なのは、数字や論理を使って物事や現象を捉える力です。

でもこれだけなら、「たしかに数字は出てくるけど、“数学”が必要とは言えないのでは?」と思われるかもしれませんね。

たしかに、高校レベル以上の数学の大半は、一般的には必要ない知識でしょう。

中学で学ぶ数学ですら、全部が全部必要というわけではありません。

ただ、数学の本質はきちんと理解していた方がよいと思います。

世の中の根本的な仕組みは数学的な原理を元にしていることが多く、それらを全く知らないまま生きるのか、何をしているのかをなんとなく理解できるまでいくのは、高校までの数学の本質をきちんと理解しているかどうかで大きく違います。

世の中が複雑化していく中で、いつだって数学は物事をシンプルに解釈し、高度な科学技術を根本から支えてきました。

例えば、「平均」という小学生のときに学ぶ概念一つとってみたって、「平均は信用できないよね」という理系の人の言葉が何を意味するのか分かりますか?

これがより高度な数学的概念になるほど文系の人と理系の人と会話が通じなくなることがあることは容易に想像できると思います。

さて、いろいろと語ってきましたが、会社という組織の中で上司・同僚と働く上で、あるいはお客さんと話をする上でも、数学的思考が身についていなければ、コミュニケーションがうまく取れない可能性があるというのを感じることができたでしょうか。

ご飯を食べるのに箸の持ち方を覚えるのと同じように、新社会人の皆さんには、数字の使い方や、数学の本質を学んでいってほしいと思います。

理由2.これからのビジネスでは、ビジネスモデルの根幹にデータ分析が関わるから

2つめの理由は、石井先生に挙げていただきました。

石井先生は、統計学/データ分析教育を担当しています。
ishii

今、いろいろなビジネスの裏側で、統計学の知識やデータ分析の手法が使われています。

身近な例を挙げると、AmazonなどのECサイトでよく見る「この商品を買った人は、こんな商品も買っています」といったレコメンド。

これは、ユーザのサイト内の閲覧行動や購買履歴などのデータを元に、統計的にお勧めの商品が導き出され、自動的に表示されています。

これまでも、ビジネスにデータが活用されてこなかったわけではありません。

では、なぜ今あらためて「データ分析」が注目されているのでしょうか。

この背景には、インターネット通信で送れるデータの量が増えたことや、コンピュータの処理能力が上がったこと、データを得て、蓄積する機器やシステムの発達、Webサービスの利用者増加などがあります。

集計と可視化で学ぶデータ分析超入門

簡単に言うと、集められるデータの種類・量が爆発的に増えたということですね。

こうして集めた膨大なデータをビジネスに活かそうと、さまざまな企業がデータ分析への関心を強めています。

文系の皆さんは、経済学などを専攻した方はそうでもないかもしれませんが、統計学に関しては馴染みがないかもしれません。

統計学とは、「与えられたデータから規則性や傾向を見いだすことで現実の『複雑さ』と『不確実さ』を克服するための学問」です。

また、意思決定のために必要な指標作りも統計学がカバーする領域の1つです。

皆さんお馴染みの「偏差値」も統計学を利用した有名な指標ですね。

企業が直面している複雑で不確実な「今」と「未来」に対して、より確からしい答えを導き出すために、統計学・データ分析が求められています。

特に、「数値化できることは改善ができる」「データを根拠にして意思決定をする」という信念を持った企業は、社員教育から内部システムの構築まで莫大な投資を行い、統計学の活用を進めています。

ここまで聞いて、「なんだか難しそうだから、専門家に任せておけばいいや」と考える人もいるかもしれません。

確かに、皆が皆、統計学の専門家になる必要はないと思います。ただ、専門家に依頼するためにも、最低限のリテラシーは必要です。

データ分析の際に、どんなデータをもとに、どういう手法を使うと、何を見いだせるのか、その概要を知っておくと、ビジネス上の課題を見いだす力や、その解決のための有効な施策を見いだす力が高まるはずです。

統計学やデータ分析は、用意された例題のようなデータを使って学ぶよりも、仕事を通じて実際の現実社会から得られるデータに触れながら学ぶほうが面白い分野だと思います。

これまで統計学に触れて来なかった方はもちろん、学校で勉強したけれど面白くなかったという人にも、社会人になった今こそ、あらためて学んで、面白さに触れてほしいと思います。

ちなみに、和(なごみ)ではお客様の業務データや研究データをそのまま “教材” にして統計学の授業を行うことがよくあります(もちろん機密情報やプライバシーはマスキングした上でお持ちいただきます)。

テキストを進めていた時と比べてお客様の目の色が変わるのがとてもよく分かり、実データ授業の確かな学習効果を日々実感しています。

しかもお客様にとっては統計学の勉強だけではなく業務分析もできて、一石二鳥ですね(笑)。

理由3.デキる大人にはロマンが必要だから

3つめは、永井先生に挙げていただきました。

見ての通り、イケメンの数学講師が語る、数学を学ぶべき理由とは…。
nagai

社会人になると、少なくとも一日の3分の1、すなわち8時間もの時間を仕事に費やすことになります。

人によってはもっと多いかもしれませんね。

それだけ仕事につぎ込む時間が多くなると、住む世界が狭くなって、社会的な視野も狭くなってしまいます。

また、会社で目的を同じくした人たちとずっといると、考え方を押し付けられたり、一部の人の思考に偏ってしまったりしがちです。

人によっては、それが苦痛で会社を辞めたいと思っているかもしれません。

そこで、仕事から解放された後や休みの日は、意識して羽根を伸ばすつもりで息抜きをして、アタマを仕事から解き放って解放してあげる時間を作ると良いと思います(寧ろ作るべきです)。

スポーツをするのでもいいし、好きな音楽を聴いたり、映画を見たり、友人とおしゃべりをしたり、お酒を飲んだり…(自分はお酒がほとんど飲めませんが ^^;)。

この話の流れで行くと、「まさか息抜きに数学をやる!ってことじゃ…」と思われる方もいるかもしれません。

しかしながら、その通りです。

私の場合は、自分の世界を数学で創造しています(最近は、日常のあらゆる対応を集合と写像で説明できるよう、あれこれ探しています)

「休みの日にまで勉強したくないよ」という声も聞こえてきそうですが…、真の数学は勉強とは違うものでマンガや音楽のように創作物みたいなものだと考えています。

日常と連動していることが数式だとたった一言で記述できたり、自分自身で作り出したストーリーを世界中の人と共有できたりします。

このように、数学には未知なるロマンが詰まっています

学校で数学に苦労した人は、二度と関わりたくないと思っているかもしれませんが、学校でやった数学だけが数学というわけではなく、夢のような世界が広がっているのです。

皆さんもご存知の通り、数学には論理的な思考を養ったり、日常生活のいたるところにおける計算、シミュレーションモデルを設計し、身の回りの現実の問題解決に役立てたり、便利な側面もあります。

夢のようなことを語っている中で、しっかり世の中に貢献しています。

大げさかもしれませんが本来は、世界の真理を突き止めようとすること、そして分かったことを真実として表現する学問です。

世の中には、科学的に説明でき解決された事実がある一方で、学問が進歩してきた現代において説明がつかない不思議なこともまだまだたくさんあります。

宇宙の果てはどうなっているのか、海の底はどんな世界なのか、なぜ人は人を好きになるのか、人工知能は人間を超えるのか…未知のものを解明していくのに、数学や数学的な思考が必要ですし、その進歩は欠かせません。

そうだと分かっても、数学を「好き」になれなかったら、受験がトラウマになっていたら、面白い数学に出会えなかったら…数学は苦痛でしかなく息抜きにはなりませんよね。

ただ、数学は分からなくても、宇宙ロケットの打ち上げや、放った人工衛星が地球へ帰ってきたというニュースを見て、それが数学で創造されていると聞けば、ワクワクする人は多いんじゃないでしょうか。

そういう気持ちを持てる人なら、きっと数学を楽しめると思います。

いろいろな方向からアプローチできる数学の世界を、皆さんなりのアプローチで、好きになってもらいたいですね。

数学は、一人で黙々と机に向かうイメージがあるかもしれませんが、世の中には数学が好きな人、趣味で数学をやっている人、もちろん学術的に研究している人が大勢います。

4月28日に「ロマンティック数学ナイト」という名の数学のショートプレゼン交流会を開催しましたが、こういう場で、数学に埋もれている人、興味を持っている人と知り合って、数学の面白さを分かち合えたら、もっと数学を好きになるかもしれません。

◇ ◆ ◇

いかがでしたでしょうか。納得できる「数学を学ぶべき理由」はありましたか?

今こういう話を聞いても、すぐには理解できないかもしれません。

ただ、30代になっても、40代になっても、経営者になっても、「数学勉強しとけばよかった~」と言って、数学を始める人は増えてきているようです。

何か問題に突き当たった時に始めても遅いということはありませんが、学校を卒業してから時間がたてばたつほど忘れてしまうものなので、社会人になった今、興味を持てそうなところから、数学に触れてみてはいかがでしょうか。

データ利用・活用超入門-データを情報に変える統計学-

(文/畑邊康浩)

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