EBPM推進のための自治体研修設計ガイド|総務省・自治体での実績から学ぶ7つの型
公開日
2026年5月29日
更新日
2026年5月25日
「EBPMを推進したいが、職員のデータリテラシーにばらつきがある」——これは、多くの自治体で共通する課題です。本記事では、総務省統計局・和歌山県・複数自治体での研修実績をもとに、自治体でEBPM研修を設計する際に押さえておきたい7つの型を整理しました。政策担当者・人材育成担当者・公共調達担当者に向けた実践ガイドです。読了の目安は約14分です。
この記事の主な内容
1. EBPMとは何か|自治体での位置付けと2026年の論点
結論:EBPM(Evidence-Based Policy Making=証拠に基づく政策立案)は、政策の立案・実施・評価を、経験や勘だけでなくデータや根拠に基づいて進める考え方です。国の政策評価や地方創生、自治体DX、交付金事業の効果検証とも関わるため、自治体運営における重要性が高まっています。
1-1. 国の方針と地方への展開
2025年12月に内閣府が公表した「EBPMアクションプラン2025」では、EBPMの取組を本格化し、政策効果の分析・検証を翌年度以降の方針に反映していく方向性が示されています。EBPMは、KPIを置くだけの段階から、政策効果をデータで分析し、予算・制度・事業の見直しにつなげる段階へ進みつつあります。総務省統計局もデータ利活用に関する取組を進めており、和からも和歌山県との共催を含め、公共部門での研修実績があります。
1-2. 地方創生・デジタル実装での位置付け
地方創生の総合戦略や各種交付金事業では、課題設定、KPI設計、実施後の効果検証がますます重視されています。2026年時点では、旧「デジタル田園都市国家構想交付金」の流れを受けた「新しい地方経済・生活環境創生交付金(デジタル実装型)」が運用されており、事業の具体的使途や実施体制、KPIの達成状況、効果検証の結果などを公表することが求められています。つまり、単に「システムを導入する」だけでは不十分で、地域課題と施策、指標、効果検証、改善計画を一貫して設計する力が問われています。
1-3. 2026年の論点
2026年の自治体EBPMでは、「研修を実施したが、現場で使われない」という課題への対応が重要になっています。研修を単発の学習機会で終わらせず、政策形成プロセス、庁内データ活用、デジタル人材育成、年度ごとの効果検証とつなげる設計が求められます。今後は、職員一人ひとりのリテラシー向上に加えて、庁内で相談・伴走できる仕組みをどう作るかが大きな論点になります。
2. 自治体EBPM研修の7つの型
EBPM研修7つの型
- データリテラシー:全職員向けに、データの見方・読み方の基礎を学ぶ(半日〜1日)
- 統計入門:政策担当者向けに、平均・割合・相関・検定などの基礎を学ぶ(2〜4日)
- 政策評価設計:ロジックモデルとアウトカム指標を使い、施策の評価方法を設計する(2〜3日)
- ロジックモデル:政策の投入・活動・産出・成果を整理し、論理構造を見える化する(半日〜1日)
- データ可視化:BIツールやダッシュボードを使い、庁内外に伝わる形でデータを可視化する(2〜3日)
- 住民データ活用:行政データを扱う際の統計処理、個人情報保護、倫理面の注意点を学ぶ(2〜3日)
- 継続改善:年次フォローアップやPDCAを通じて、研修内容を政策実務に定着させる(年4回など)
EBPM研修は、すべての職員に同じ内容を提供すればよいわけではありません。一般職員には「データを読む力」、管理職には「数字をもとに議論し、意思決定する力」、政策担当者には「評価設計と分析を実務で進める力」が求められます。対象者ごとに目的を分けることで、研修効果が出やすくなります。
3. 階層別カリキュラム|一般職員/管理職/政策担当
3-1. 一般職員向け(リテラシー研修)
一般職員向けの研修では、データに基づいて業務を進める意義を理解し、基本的な指標を読み解けるようになることを目指します。所要時間は半日〜1日が目安です。平均と中央値の違い、グラフの読み方、相関と因果の違い、住民データを見る際の基本的な注意点などを扱います。
3-2. 管理職向け(マネジメント研修)
管理職向けの研修では、データに基づく意思決定とKPI設計をテーマにします。所要時間は2〜3日程度が目安です。ロジックモデル、KPI設計、政策評価フレーム、データを使った会議運営、部下への問いかけ方などを学び、庁内でEBPMを進めるためのマネジメント力を高めます。
3-3. 政策担当者向け(実務研修)
政策担当者向けの研修では、政策立案・評価の中核を担う職員を育成します。所要時間は5〜10日、または半年程度の継続プログラムが目安です。統計学の基礎、回帰分析、A/Bテスト、ベイズ推論、住民データ分析、レポート作成など、政策実務に近い内容を扱います。
4. 研修コンテンツ例|事例・ロジックモデル・統計
4-1. 事例ベース学習
「健康診断受診率向上施策」「子育て支援の効果測定」「商店街振興策の評価」など、自治体の現場で起こりやすいテーマをもとに学びます。匿名化した他自治体の事例を比較しながら、自庁の施策ではどのようなデータを見ればよいのか、どの指標を成果として置くべきかを考えます。
4-2. ロジックモデル演習
ロジックモデル演習では、「投入→活動→産出→中間成果→最終成果」の流れを、自部署の業務に当てはめて整理します。単に図を作ることが目的ではなく、事業の目的、対象者、活動内容、成果指標のつながりを明確にすることが重要です。1日程度の研修でも、基本的なロジックモデルを作成するところまで進められます。
4-3. 統計演習
統計演習では、Excelなど職員が日常的に使いやすいツールを用いて、実際にデータを処理します。平均・中央値・割合・クロス集計から始め、必要に応じてt検定、カイ二乗検定、相関係数、回帰分析まで扱います。数式を暗記するのではなく、「どの場面で、どの分析を使うのか」を判断できるようにすることを重視します。
5. 公共調達フローへの組み込み
5-1. 契約方式を検討する際の観点
EBPM研修の契約方式は、各自治体の契約規程、案件規模、求める専門性に応じて検討します。一般競争入札、企画競争、随意契約などのいずれを採用する場合でも、「なぜその研修が必要なのか」「どのような専門性を評価するのか」「受講後に何を変えたいのか」を仕様書や評価基準に明確に書くことが重要です。契約方式の判断は、必ず庁内の契約担当部署と確認しながら進めましょう。
5-2. 企画競争の評価軸
企画競争で事業者を選定する場合は、「公共部門での研修実績」「講師の専門性」「カリキュラムの自治体業務への適合度」「継続支援の設計」「効果測定指標」などを評価軸に入れると、研修の質を比較しやすくなります。単に価格だけでなく、研修後に庁内で活用が続く設計になっているかを確認することが大切です。
5-3. 入札仕様書のポイント
仕様書には、「自治体業務に合わせたカスタマイズ」「教材の更新方針」「研修後3〜12ヶ月のフォロー」「行動変容を確認する効果測定」などを明記しておくと、汎用的なパッケージ研修との差が分かりやすくなります。特に、カークパトリック(Kirkpatrick)モデルのLevel3にあたる「職員の行動変容」をどう見るかを設計しておくと、研修後の成果を説明しやすくなります。
6. 効果測定と継続的な学習設計
6-1. カークパトリック(Kirkpatrick)モデルでの設計
研修効果は、Level1(満足度)、Level2(知識の習得)、Level3(行動変容=政策プロセスでの活用)、Level4(成果=政策アウトカムの改善)の4階層で考えると整理しやすくなります。EBPM研修では、満足度や理解度だけで終わらせず、実際にロジックモデルを書いたか、KPIを見直したか、会議でデータを使った議論が増えたかまで確認することが重要です。
6-2. 毎年継続のリテラシー研修モデル
和からでは、複数自治体で毎年継続するリテラシー研修を支援しています。年1回の集合研修に加え、月次オンラインセッションやQ&Aサポートを組み合わせると、学んだ内容を現場で使い続けやすくなります。単発研修で終わらせず、年度ごとにテーマを更新していく設計が定着につながります。
6-3. 庁内データチームとの連携
研修と並行して、情報政策課、統計担当、企画部門などの庁内データチームと連携することも大切です。受講者が日常業務でつまずいたときに相談できる相手がいると、学びが現場に残りやすくなります。研修を「学ぶ場」としてだけでなく、庁内の相談体制づくりの入口として位置付けると効果的です。
7. 和からの公共部門での実績
- 総務省統計局・和歌山県共催「データ利活用セミナー」
- 複数自治体でのEBPM推進・毎年継続のリテラシー研修
- 京都橘大学|文系学生向け「数学的思考」「線形代数」正規科目(教育機関での実績)
- 大学公開講座での社会人向け統計学講座
公共部門向けの研修では、専門知識を一方的に伝えるだけでなく、職員の方が「自分の業務でどう使うか」を考えられる設計が重要です。和からでは、文系出身の職員にも伝わる説明、数学・統計・データ分析・生成AIを横断したカリキュラム、全国出張・オンライン対応を組み合わせて、自治体ごとの目的に合わせた研修を設計しています。
8. よくある質問(FAQ)
Q1. 専門知識ゼロからでも受講できますか?
可能です。和からでは、職員の数字への苦手意識に配慮し、難しい数式を使わない説明から段階的に進めます。平均・割合・グラフの見方など、基本的な内容から始めることもできます。
Q2. オンライン対応は可能ですか?
可能です。Zoom、共有ホワイトボード、ExcelやBIツールを使った演習を組み合わせ、オンラインでも理解しやすい形で進めます。複数支所・出先機関を含む全庁研修にも対応できます。
Q3. 短期間でも実施できますか?
可能です。半日〜1日のリテラシー研修から始め、必要に応じてロジックモデル演習や政策評価設計へ段階的に拡張できます。実施時期や準備期間は、内容・人数・カスタマイズ範囲に応じて調整します。
Q4. 教材は提供されますか?
教材は作成・提供します。貴庁の業務文脈、既存データ、地域事情を反映したカスタム教材の作成も可能です。制度変更や研修目的に応じて、必要に応じたアップデートにも対応します。
Q5. 大学正規科目としての導入は可能ですか?
可能です。京都橘大学で「数学的思考」「線形代数」を正規科目として担当した実績があります。シラバス設計、授業設計、評価設計まで含めてご相談いただけます。
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