【パズル的数学】2次関数と図形の問題②~エレガントな別解を味わう~
公開日
2023年4月9日
更新日
2023年4月9日
みなさんこんにちは!和からの数学講師の岡本です。以前、マスログで以下の話題を扱いました。
放物線上の3点をもつ平行四辺形の面積の問題です。今回はその続きということで別の解法をご紹介しようと思います。
この記事の主な内容
1.2次関数と平行四辺形の問題(再掲)
まずは問題を思い出してみましょう。
「平行四辺形の面積=底辺×高さ」という公式に注目し、前回は下図のように底辺\(L\)と高さ\(d\)を力技で求め、面積を計算しました。今回はもう少し「エレガント」な解法をご紹介します。
2.線形代数の力をお借りする
\(\overrightarrow{\mathrm{DA}}\)と\(\overrightarrow{\mathrm{DC}}\)が成分で表すことができれば、この2つのベクトルで張られる平行四辺形の面積は「行列式」を使って1発で計算することができます。今回、点A、点D、点Cの座標は二次関数と直線の交点であり、それぞれA\((\alpha, \alpha^2\)),D\((\delta, \delta^2)\),C\((\gamma,\gamma^2)\)と表すことにします。すると
\begin{align*}
\overrightarrow{\mathrm{DA}}=\begin{pmatrix}\alpha-\delta \\ \alpha^2-\delta^2 \end{pmatrix}, \overrightarrow{\mathrm{DC}}=\begin{pmatrix}\gamma-\delta \\ \gamma^2-\delta^2 \end{pmatrix},
\end{align*}
であり、2つのベクトルで張られる平行四辺形の面積\(S\)は2つの縦ベクトルを横に並べることで得られる2×2の正方行列の行列式の絶対値で計算できます。
\begin{align*}
S&=\left|\det \begin{pmatrix}
\alpha-\delta & \gamma-\delta \\
\alpha^2-\delta^2 & \gamma^2-\delta^2
\end{pmatrix}\right|\\
&=|(\alpha-\delta)(\gamma^2-\delta^2)-(\gamma-\delta)(\alpha^2-\delta^2)|\\
&=|(\gamma-\delta)\{(\alpha-\delta)(\gamma+\delta)-(\alpha^2-\delta^2)\}|
\end{align*}
ここで、\(\delta, \gamma\)は2次方程式\(x^2-ax-c=0\)の解なので、\(\gamma+\delta=a\)であり、2次方程式の解の公式から
\begin{align*}
\gamma-\delta=\frac{a+\sqrt{a^2+4c}}{2}-\frac{a-\sqrt{a^2+4c}}{2}=\sqrt{a^2+4c}
\end{align*}
であることがわかります。また、\(\alpha^2=a\alpha+b\),\(\delta^2=a\delta+c\)と表すことができるので
\begin{align*}
S=|(\gamma-\delta)\{a(\alpha-\delta)-a(\alpha-\delta)-(b-c)\}=|(\gamma-\delta)(-b+c)|=(b-c)\sqrt{a^2+4c}
\end{align*}
となり、面積を求めることができました(前回の記事と同じ式が得られました)。
3.図形の性質をうまく利用する方法
もう一つ解法をご紹介します。これは最も素朴で、最も簡単な方法です。まず、点Aと点B’をAB’の長さを変えずにA’Dが\(y\)軸と平行になるように直線\(L_1\)上で移動させます。
こうしてできる平行四辺形A’B”CDはもとの平行四辺形と同じ面積\(S\)になります。A’Dの長さは\(L_1\)と\(L_2\)の切片の幅と同じ\(b-c\)となります。また、底辺をA’Dと考えると高さは幅\(\gamma-\delta=\sqrt{a^2+4c}\)であるので、求める面積\(S\)は
\begin{align*}
S=(b-c)\sqrt{a^2+4c}
\end{align*}
であることがわかりました。こうした、面積を同じにしたまま図形を変形させることを「等積変形」と呼びます。
4.さいごに
いかがでしたでしょうか?前回のように力技で計算するのもいいですが、知識や工夫によりすっきりとした解法を考えるのもまた数学の楽しみ方の1つです。
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<文/岡本健太郎>