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条件収束級数の不思議な性質②~規則正しく並べ替え~

公開日

2025年2月3日

更新日

2025年3月9日

条件収束級数の不思議な性質②~規則正しく並べ替え~

こんにちは!前回は「リーマンの再配列定理」によって、条件収束級数の並び替え次第で収束値を自由に変えられるという驚きの事実を紹介しました。今回は、より規則的な並び替えを行った場合に、収束先がどのように変化するのかを詳しく見ていきたいと思います!

 

規則的な並べ替えとは何か

前回紹介したように、条件収束級数は足し算の順番を変えることで、さまざまな値に収束させたり、発散させたりすることができます。しかし、前回の並べ替え方法はやや乱雑でした。

そこで今回は、より「規則正しい」並べ替えを行った場合に収束値がどのように変化するのかを考えます。具体的には、正の項を一定数並べた後に負の項を一定数並べるという方法をとります。例えば、正の項を p 個、負の項を q 個ずつ交互に並べるという形です。

驚くべきことに、この規則的な並べ替えを行うと、級数の収束先は \log 2 + \frac{p – q}{p + q} \log 2 という形になるのです!なぜこのような結果が得られるのでしょうか?

 

具体例として p = 2, q = 1 の場合を考える

まずは、具体例として p = 2, q = 1 の場合を考えてみましょう。つまり、正の項を 2 個続けた後に負の項を 1 個入れる、というルールで並べ替えを行います。

この場合、並べ替え後の級数は以下のようになります。

1 + \frac{1}{3} – \frac{1}{2} + \frac{1}{5} + \frac{1}{7} – \frac{1}{4} + \frac{1}{9} + \frac{1}{11} – \frac{1}{6} + \dots

この並び順にすると、級数は \frac{3}{2} \log 2 に収束します。これは、通常の順番で足した場合の収束値 \log 2 に対して、\frac{1}{2} \log 2 だけ増えていることになります。つまり、並べ替えのルールによって収束値が変化しているのです!

 

一般の場合の収束先

では、もっと一般的な p, q の場合を考えてみましょう。正の項を p 個、負の項を q 個ずつ並べるルールを適用すると、収束先は次の式で表されることが分かります。

\log 2 + \frac{p – q}{p + q} \log 2

この式から、いくつかの興味深い性質が読み取れます。

1. p = q の場合は元の級数と同じく \log 2 に収束する

• これは元の順番とバランスが同じだからです。

2. p > q の場合は \log 2 より大きな値に収束する

• 正の項の割合が多いため、全体として大きな値に収束します。

3. p < q の場合は \log 2 より小さな値に収束する

• 負の項が多くなることで、全体として小さな値に収束します。

4. p → ∞ の場合、収束先は無限大に発散する

• これは正の項ばかりを増やしているため、結果として発散することになります。

このように、規則的な並び替えでも収束先を自由にコントロールできるのです!

 

証明の概要

この結果を証明するには、以下のステップを踏みます。

1. デフォルトの級数の部分和 S_n を利用する

S_n \log 2 に収束することが知られています。

2. 規則的な並べ替えを数式で表現する

• p 個の正の項と q 個の負の項のブロックを考える。

3. ブロックごとに部分和を求め、無限に足し合わせる

• ここで区分求積法を使うことで、各ブロックの影響を評価する。

4. 極限をとることで収束先を求める

• 結果として、先ほどの公式が導かれる。

この証明の詳細は解析学の教科書などで紹介されていますが、基本的な考え方としては、「足し算の順番を変えることで部分的にスケールを変えることができる」という点がポイントになります。

 

直感的な理解

数式の議論だけでなく、直感的にこの現象を理解することもできます。

正の項を多く並べると、全体として値が大きくなる

負の項を多く並べると、全体として値が小さくなる

それぞれの影響がバランスするところに収束する

まるで「天秤」のようなバランスのとれた並び替えが、収束値を決定しているのです!

 

まとめ

今回紹介した「規則的な並び替え」による収束値の変化は、条件収束級数の持つ不思議な性質をより深く理解するための重要なポイントです。

規則的に並べ替えることで、収束値を任意にコントロールできる!

p > q の場合は収束値が大きくなり、p < q の場合は収束値が小さくなる。

p, q を適切に設定することで、特定の値への収束を狙うことができる。

このような性質を使えば、単なる「数の並び替え」が数学的に大きな意味を持つことがよく分かります。次回は、この性質を応用したさらなる興味深い例を紹介したいと思います!お楽しみに!

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