条件収束級数の不思議な性質①~リーマンの再配列定理とは~
公開日
2025年2月2日
更新日
2025年3月9日

条件収束級数の不思議な性質①~リーマンの再配列定理とは~
こんにちは!今回は、数学の世界でも驚きの定理として知られる「リーマンの再配列定理」についてお話しします。これは、19世紀の数学者リーマンが証明した、条件収束級数に関する非常に興味深い性質です。普通の足し算では考えられないような不思議な現象が起こるのですが、一体どういうことなのでしょうか?一緒に考えていきましょう!
条件収束級数とは何か
まず、「条件収束級数」という言葉の意味を整理しておきましょう。これは、「無限に続く足し算(級数)が収束するけれど、その各項の絶対値を取って足すと発散してしまうような級数」のことを指します。
私たちは小学校の頃から、「足し算の順番を変えても答えは変わらない」と学んできました。しかし、無限級数では話が違います。特に、条件収束する級数では、項の並び順を入れ替えることで、収束する値を自由に変えたり、発散させたりすることができるのです。
これは、一見すると信じがたい事実ですよね?しかし、リーマンの定理によれば、それが可能なのです。
具体例としての交項調和級数
リーマンの定理を理解するために、具体的な例を見てみましょう。最も有名な条件収束級数の一つに、以下のような「交項調和級数」があります。
1 – \frac{1}{2} + \frac{1}{3} – \frac{1}{4} + \frac{1}{5} – \frac{1}{6} + \dots
この級数は、順番通りに足し算を続けると、自然対数の底 e に関係する値である \log 2 に収束します。つまり、計算を続けると「およそ 0.693…」という値に落ち着くのです。
しかし、リーマンの定理によると、この級数の足し算の順番を変えることで、収束値を2にしたり、 \pi にしたり、さらには無限大に発散させることすら可能だというのです!これは、一体どういう仕組みなのでしょうか?
足し算の順番を変えると結果が変わる
リーマンの定理が示すのは、「条件収束する級数は、項の順序を並べ替えることで、どんな値にも収束させることができる」という驚きの事実です。たとえば、以下のように並べ替えを工夫すると、収束値を変えることができます。
① 2 に収束させる方法
まず、正の項だけを足していきます。
1 + \frac{1}{3} + \frac{1}{5} + \frac{1}{7} + \dots
この正の項の合計は無限大に発散します。しかし、適度なタイミングで負の項(マイナスの項)を足してバランスを取ることで、収束値を2に調整することができるのです。
1 + \frac{1}{3} + \frac{1}{5} + \dots – \frac{1}{2} – \frac{1}{4} – \dots
この操作を続けることで、級数全体の収束値を2にすることができます。
② 無限大に発散させる方法
無限大に発散させることも可能です。その方法は、ひたすら正の項だけを優先的に足していき、負の項を後回しにすることです。
1 + \frac{1}{3} + \frac{1}{5} + \frac{1}{7} + \dots
これだけを足していくと、どんどん値が大きくなり、無限大へと発散します。
一方で、負の項だけを集めると、それは -\infty に発散します。このように、並べ替えを工夫することで、級数の収束値を自在に操ることができるのです。
私たちの直感と違う数学の世界
この結果は、私たちが普段経験する足し算の感覚とは大きく異なります。私たちは日常生活で、「足し算の順番を変えても答えは変わらない」と思い込んでいますが、無限級数では事情がまったく異なるのです。
ただし、日常生活では無限個の数を足し合わせることはないので、この不思議な性質を気にする必要はありません!通常の有限個の足し算であれば、順番を変えても問題はないので安心してください。
まとめ
今回紹介したリーマンの再配列定理は、数学の世界の奥深さを感じさせる面白い定理のひとつです。
• 条件収束級数は、項の順番を変えることで、収束値を自由に変えることができる。
• 具体的な例として交項調和級数を使い、2に収束させたり、無限大に発散させることができることを確認した。
• 有限個の足し算では順序を変えても問題ないが、無限級数ではこのルールが通用しない。
まるで魔法のような性質ですが、数学的にきちんと証明されている事実です。次回は、この再配列によって収束値をもっと規則的に変化させる方法について考えてみましょう。どうぞお楽しみに!