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トレンドを見抜く「移動平均」のチカラ-第3回:3か月?6か月?どれが正解?【統計学をやさしく解説】

公開日

2025年11月12日

更新日

2025年11月6日

はじめに:期間設定ひとつでトレンドの見え方は変わる

前回までの第1回・第2回では、「移動平均とは何か」「季節変動をならしてトレンドを読む」ことを学びました。今回はその続編として、“移動平均の期間をどう設定するか”に焦点を当てます。


「3か月移動平均」と「12か月移動平均」、どちらも同じデータを扱っているのに、グラフの印象がまったく違う──そんな経験はありませんか?

実は、移動平均で“どの期間を使うか”は、分析の目的によって最適解が変わります。この記事では、短期・中期・長期移動平均の特徴と選び方、さらに一歩進んだ「加重移動平均」や「指数平滑法(EMA)」の考え方を、ビジネスパーソンでも直感的に理解できる形で解説します。

短期・中期・長期の違いを知ろう

移動平均の期間設定は、分析対象の「スピード感」をどう捉えるかで決まります。一般的には以下のように分類されます:

短期移動平均(例:3か月):変化に敏感で、最新の動きを素早く捉える。
中期移動平均(例:6か月):短期の波をならしつつ、トレンドを安定的に把握。
長期移動平均(例:12か月):全体の流れを見るのに適し、ノイズをほぼ除去。

たとえば、次のような傾向が見られます:

種類 特徴 利点 欠点
短期(3か月) 変化に素早く反応 トレンド転換の早期把握 一時的なブレに影響されやすい
中期(6か月) 安定性と反応速度のバランス 実務で扱いやすい トレンド転換をやや遅れて捉える
長期(12か月) 総合的な傾向を明確化 季節要因をならせる 変化を察知するのが遅れる

「なめらかだが遅れる」現象を理解する

移動平均の期間を長くすると、グラフは確かに見やすくなります。しかし、その分だけ「反応が遅れる」現象が起きます。これは、平均を取ることで過去データの影響が強く残るためです。

例えば、売上が急に上昇したとき:
・3か月平均ではすぐに上向きの傾向が見える。
・12か月平均では、半年後になってようやく上昇が反映される。

つまり、短期平均=スピード重視、長期平均=安定重視。報告書やKPIモニタリングでは、この性質を意識して使い分けることが大切です。

業種や目的によって最適期間は変わる

移動平均に「正解」はありません。重要なのは、“何を見たいのか”。目的によって期間設定のベストは変わります。

ECサイトやWebサービス:短期(3か月以内)。トレンド変化をすぐに掴みたい。
製造業・BtoB事業:中~長期(6~12か月)。需要変動が緩やかで、ノイズを除去したい。
経営全体のモニタリング:長期(12か月以上)。季節性や一時的イベントを平滑化して把握。

一つの考え方として、「変化のスピード × 意思決定の周期」で期間を決めるとバランスが取れます。

目的 意思決定サイクル おすすめ期間
キャンペーン効果測定 月次~四半期 3か月
半期レポート 四半期~半年 6か月
年次戦略評価 半年~1年 12か月

加重移動平均・指数平滑法(EMA)の考え方

ここまで紹介した「単純移動平均(SMA)」は、全ての期間を同じ重みで平均します。ですが、実際には「新しい情報を重視したい」ケースもあります。そんな時に使えるのが:

加重移動平均(Weighted Moving Average):最近のデータほど重みを大きくする。
指数平滑法(Exponential Moving Average, EMA):指数関数的に重みを減らして過去データをならす。

たとえば、直近3か月の売上を次のように扱う:
・単純平均: (100 + 120 + 150) ÷ 3 = 123.3
・加重平均(重み=1,2,3):(100×1 + 120×2 + 150×3) ÷ 6 = 130
→ 新しい月(150)の影響が強く反映される。

Excelでは、=AVERAGE()で単純移動平均、加重平均は=SUMPRODUCT(範囲, 重み)/SUM(重み)で計算できます。

ChatGPTで「Excel式を生成してみる」

ChatGPTを使えば、移動平均の計算式を自動生成することも可能です。たとえば:

プロンプト例:「Excelで12か月移動平均を計算する数式を教えて」

すると、ChatGPTがこのように答えてくれます:

=AVERAGE(B2:B13)

さらに、「加重移動平均にしたい」と伝えれば、

=SUMPRODUCT(B2:B13,{1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12})/78

といった数式も生成できます。AIを活用すれば、難しい関数を暗記せずとも即座に実践できます。


まとめ:目的に合わせた期間設定が“本当の分析力”

移動平均は、データを滑らかにするだけでなく、「何を見るか」を明確にするツールです。

・短期はスピード重視。市場の変化を素早く察知。
・長期は安定重視。持続的な成長を見極める。
・加重・指数平滑法で“情報の鮮度”を反映できる。

トレンドを読む力は、「平均の取り方」で大きく変わります。あなたのビジネスに合った期間設定を選び、数字の奥にあるストーリーを見抜きましょう。

次回: 第4回「実務での読み方と判断ミスを防ぐコツ」。短期線と長期線の交差からトレンド転換をどう読むか、ビジネス現場での実践的な使い方を紹介します。

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