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データ尺度のキホン-第1回:数字の意味を見抜く!データの基本【統計学をやさしく解説】

公開日

2025年10月25日

更新日

2025年12月2日


はじめに


ビジネスの現場で「数字に強くなりたい」と思ったことはありませんか?
でも実は、“数字を扱う”前に知っておくべきことがあります。それがデータの種類と尺度(スケール)です。

このシリーズでは、全4回にわたって「名義・順序・間隔・比例」という4つの尺度をやさしく解説していきます。数字の意味を正しく理解することで、データ分析の誤解を防ぎ、ビジネス判断の精度を高めるヒントを得られるはずです。

同じように見える数字でも、その意味はまったく違います。たとえば――

・売上:50万円
・満足度アンケート:5段階中「5」

どちらも“5”が出てきますが、「比べていい数字」と「比べちゃダメな数字」があるのです。今回は、その見極め方をやさしく解説します。


1. データの種類:質的データと量的データ

まずはデータを大きく2つに分けて考えましょう。

種類 説明
質的データ(カテゴリデータ) 数字ではなく「名前・分類」を表すデータ 性別・部署・血液型・都道府県など
量的データ(数値データ) 数字で表し、計算できるデータ 売上金額・気温・年齢など

質的データは「どのグループか」が重要で、平均や差を求めるのは不適切です。量的データは「どれくらいか」を扱うため、数値計算が可能です。詳しくは、以前の記事「データ収集の種類」-第1回:量的データと質的データ【統計学をやさしく解説】で解説していますので、あわせてご参照ください。


2. “尺度(スケール)”という考え方

量的・質的の分類をさらに深掘りすると、測定尺度(スケール)という概念が出てきます。これは「データがどんな意味を持つ数字か」を区別するためのものです。

データを正しく扱うには、この尺度を理解することが不可欠です。測定尺度は次の4種類があります。

① 名義尺度(Nominal Scale):名前・ラベル(例:性別・部署)
② 順序尺度(Ordinal Scale):順位・評価(例:満足度・学年)
③ 間隔尺度(Interval Scale):差は意味があるが比は意味がない(例:摂氏温度・日付)
④ 比例尺度(Ratio Scale):差も比も意味がある(例:売上・身長・時間)


3. 同じ“数字”でも意味が違う!

ここでちょっと面白い例を見てみましょう。

例1:アンケート評価
A社の平均満足度:4.5点
B社の平均満足度:3.0点

「A社の方が1.5点高いから、50%くらい満足度が上?」
→ 実は違います! 満足度は“順序尺度”なので「順位」はあっても「差」や「比」に意味がないのです。A社とB社の1.5点差は「より高い傾向」を示すだけで、“1.5倍満足”ではありません。

例2:売上金額
A店:100万円
B店:50万円
→ これは“比例尺度”なので「A店はB店の2倍売れている」と言えます。


4. なぜビジネスでは尺度を意識すべきなのか

実務でありがちなミスの多くは、この尺度を混同して起こります。

・アンケートの平均点だけで顧客満足を判断するのは誤りです。たとえば5段階評価のアンケートで「平均4.2だから満足度が高い」と言っても、その差がどれほど意味を持つかは分かりません。評価は“順序”を表すだけで、4から5への差と2から3への差が同じとは限らないのです。正しくは、各評価の分布(何%が「とても満足」と答えたか)を見たり、中央値を使って全体の傾向を把握したりする方が適切です。
・「営業部=1」「開発部=2」といったように、部署名に数字を割り振り、その数値の平均を取って“1.5=総務部”のように解釈してしまうという誤りです。実際には、部署名は数字に意味のない「名義尺度」のデータなので、平均値を求めても何の情報も得られません。
・気温の上昇を「2倍暑い」と表現する

こうした誤りを防ぐには、まず「その数字はどんな意味のデータか?」を考えることが大切です。



5. まとめ:数字の“性格”を見抜こう

同じ数字でも、意味が異なれば使い方も変わります。

尺度 扱い方のポイント
名義尺度 平均や差を取らない。分類・頻度で扱う。
順序尺度 大小はOKだが、差・比はNG。中央値などを使う。
間隔尺度 差はOK、比はNG(例:気温・日付)。
比例尺度 差も比もOK(例:売上・体重・時間)。

尺度を理解すると、データを“正しく比べる力”が身につきます。次回はこの中から「名義尺度」と「順序尺度」のちがいを、実例を交えて詳しく解説します!

<文/綱島佑介>

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