ROIとROASの違い|費用対効果の正しい測り方をやさしく
公開日
2026年8月17日
更新日
2026年8月16日
この記事の主な内容
この記事のポイント
・ROAS=売上ベース(広告費1円で何円の売上が立ったか)
・ROI=利益ベース(投資に対して、いくら利益が出たか)
・ROASが高くても、ROIは低い(赤字)こともある——原価や経費を見ていないから
・広告運用の効率はROAS、事業として儲かったかはROIで判断する
「この広告、ROAS500%だから大成功!」——そう報告したら、上司に「で、儲かったの?」と返されて言葉に詰まる。マーケティングの現場でありがちな場面です。実はROASとROIは、似ているようでまったく別の指標。違いを知らないと、効率は良いのに赤字、という事態を見逃してしまいます。
この記事では、ROIとROASの違いを、計算式と具体例でやさしく解説します。どちらをいつ使うのか、なぜ数字がずれるのかまで、累計3万人以上を指導してきた和からの視点でお伝えします。
ROASとは|「広告費1円で、いくら売れたか」
ROAS(ロアス:Return On Advertising Spend)は、広告費に対して、その広告経由でいくらの売上が立ったかを表す指標です。計算式はシンプルです。
ROAS(%)= 広告経由の売上 ÷ 広告費 × 100
広告費10万円で、その広告から50万円の売上が出たなら、ROAS=50万÷10万=500%。「広告費1円で5円の売上」という意味です。広告そのものの効率を見るのに便利で、広告運用の最適化(どの広告にお金を回すか)でよく使われます。
ROIとは|「投じた費用に対して、いくら利益が残ったか」
ROI(ロイ:Return On Investment)は、投資に対してどれだけの利益が出たかを見る指標です。一般形は次のとおりです。
ROI(%)= 投資による純利益 ÷ 投資額 × 100
難しいのは計算ではなく、分子の「利益」と分母の「投資額」をどこまで含めるかです。総費用を投資額とするROIと、広告費だけを分母にするマーケティングROIでは、同じ施策でも値が変わります。したがって、数値だけを示さず、「何を引いた利益か」「分母は広告費か総費用か」を必ず併記します。予測値なら「予測ROI」、実績値なら「実績ROI」と明記することも大切です。
参考:Google 広告では、ROASを「コンバージョン値÷費用」、ROIを「利益÷費用」と説明しています。Google 広告ヘルプ
ROIとROASの違い|同じ広告でも数字がこんなに変わる

図:ROAS(売上)とROI(利益)の違い
同じ広告を、両方の指標で見てみましょう。広告費10万円、広告経由の売上50万円、原価率70%とします。
| 項目 | 計算 | 結果 |
|---|---|---|
| 広告経由の売上 | — | 50万円 |
| ROAS | 50万 ÷ 10万 | 500% |
| 原価 | 50万 × 70% | 35万円 |
| 純利益 | 50万 − 35万 − 10万 | 5万円 |
| 総費用基準のROI | 5万 ÷(35万+10万) | 約11.1% |
| 広告費基準のマーケティングROI | 5万 ÷ 10万 | 50% |
ROASは500%ですが、原価と広告費を引いた純利益は5万円です。総費用45万円を分母にすればROIは約11.1%、広告費10万円だけを分母にすればマーケティングROIは50%になります。どちらか一方が自動的に正しいのではなく、定義と判断目的が違うのです。異なる定義のROIを横に並べると、施策の良し悪しではなく計算範囲の違いを比較してしまいます。
どちらを使う?|目的別の使い分け
2つは対立する指標ではありません。ROASは広告費に対するコンバージョン価値を比較しやすく、ROIは原価や関連費用を含めた利益性の判断に向きます。
どちらも予測・実績で使えます。日々の運用でもROIの概算は可能ですし、ROASも計測条件が違えば単純比較できません。「速報はROAS、最後だけROI」と固定せず、判断目的と更新頻度に合わせて併用しましょう。
よくある誤解と注意点
誤解1:ROASが高ければ儲かっている。そうとは限りません。ROASは売上やコンバージョン価値を分子にするため、原価や制作費などを引くと利益が薄い、または赤字になることがあります。
誤解2:ROIは利益が確定するまで出せない。予測利益を使えば予測ROIを計算できます。確定前か確定後かではなく、予測・実績のラベルと計算範囲をそろえることが重要です。
和から式|ROAS・ROIの定義シート
和からでは、指標名から計算を始めず、先に次の6項目を1枚に固定することをおすすめしています。数字の違いを「広告の良し悪し」だけにせず、定義と計測条件に分けて確認するためです。
| 固定する項目 | 確認例 |
|---|---|
| 判断したいこと | 広告配分か、施策全体の採算か |
| 期間 | 月次/キャンペーン期間 |
| コンバージョン価値 | 税込・税抜、返品・取消の扱い |
| 計測条件 | アトリビューションモデル、コンバージョン計測期間 |
| 費用・分母の範囲 | 広告費だけか、原価・制作費・人件費・ツール費も含むか |
| 利益の前提 | 粗利か純利益か、初回購入かLTVか、予測か実績か |
会議資料には「ROI 50%」だけでなく、「広告費基準の実績ROI 50%(原価・広告費控除後利益÷広告費)」のように書きます。数字の後ろに定義を一行添えるだけで、部門間の認識ずれを大きく減らせます。
広告費だけを費用とする単純な損益分岐点ROASは、次の式で概算できます。
損益分岐点ROAS(%)= 1 ÷ 粗利率 × 100
粗利率30%なら約333%です。制作費や人件費などを含める場合は、必要なROASはさらに上がります。LTVを使うときは、初回売上と将来見込みを混ぜず、前提を明記しましょう。
参考:計測期間やアトリビューションの違いで数値は変わります。コンバージョン計測期間/アトリビューションモデル(Google 広告ヘルプ)
よくある質問(FAQ)
Q1. ROASは何%あればいいのですか?
一律の基準はありません。広告費だけを費用とする単純な目安なら、損益分岐点ROASは「1÷粗利率×100」で概算できます。粗利率30%なら約333%です。制作費や人件費、返品、LTVなどを含める場合は前提を調整します。
Q2. ROIの「投資」には何を含めますか?
目的によって変わりますが、広告施策なら広告費が中心です。より厳密に見るなら、制作費や人件費など、その施策にかかった費用をすべて含めます。「何を投資に数えるか」を決めておくと、比較がぶれません。
Q3. 計算に難しい数学は必要ですか?
必要ありません。どちらも割り算(割合)だけで出せます。難しいのは計算ではなく、「売上で見るか、利益で見るか」という視点の切り替えです。ここを押さえれば、誰でも使いこなせます。
まとめ|「売上」か「利益」かに加えて、分母をそろえる
ROASは広告費に対するコンバージョン価値、ROIは投資に対する利益を見る指標です。ROASが高くても、原価や関連費用を引けば利益が薄い、または赤字になることがあります。さらにROIは、分母を広告費にするか総費用にするかでも値が変わります。期間・価値・計測条件・費用範囲・利益前提をそろえて初めて比較できます。
1. ROAS=コンバージョン価値÷広告費。ROIは利益と投資額の定義を併記する
2. 損益分岐点ROASの単純式は「1÷粗利率×100」
3. 予測・実績、計測条件、分母の範囲をそろえて比べる
とはいえ、「自社の数字でROI・ROASを正しく出し、判断に使えるようになりたい」という方も多いはずです。和からの数トレ教室では、費用対効果や割合の考え方を、実務で使える形までマンツーマンでサポートしています。まずは無料カウンセリングで、お手元の数字の読み解き方を一緒に整理してみませんか。
広告や施策の効果を統計的に検証したい方には、マーケティング効果検証・ABテストの個別指導もあります。
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<監修/和から株式会社 堀口智之>
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