マスログ

意外と知らない?方程式で重要な「判別式」の秘密①

公開日

2025年1月19日

更新日

2025年1月17日


みなさんこんにちは!和からの数学講師の岡本です。受験シーズンとなりました。今回は2次方程式の解の個数を議論する際に使用される「判別式」についてお話してみようと思います。

1.2次方程式の判別式

 方程式というものを中学、高校で学びます。最も単純な方程式は\(ax+b=0\)という形で表される1次方程式であり、これは移項や両辺の定数倍などの操作で必ず解を求めることができます。また、\(ax^2+bx+c=0\)という形で表される2次方程式というものを中学3年生で学びます。これは1次方程式と違い、解き方がやや複雑になります。しかも、場合によっては実数の解が存在しないこともあるので、扱いが厄介に感じられるでしょう。しかし、平方完成と呼ばれる式変形を駆使することで、2次方程式の解を機械的に求めてしまう『解の公式』というものがあります。例えば2次方程式\(ax^2+bx+c=0\)の場合、解は

\begin{align*}
x=\frac{-b\pm \sqrt{b^2-4ac}}{2a}
\end{align*}

と表すことができます。さらに、ルートの中身である\(b^2-4ac\)に注目しましょう。ここがもし0であれば、ルートの前の\(\pm\)の効果がなくなり、解が1種類だけになることがわかります(ちなみに、これを「重解」といい、本来2つある解が“重複している”と考えます)。なお、\(b^2-4ac<0\)であれば、負の数の平方根は実数では考えられないので、「実数解なし」となります。つまり、\(b^2-4ac\)は、解の状況を方程式の係数である\(a, b, c\)の情報のみで判別できることから、「判別式」と呼ばれ、\(D\)で表されます。

2.複素数OKの世界

 次に「複素数」というものを導入します。これは高校数学で学習する内容で、「負の数の平方根を許容する」というものです。一見意味のない空論だと思われますが、複素数を導入することで、方程式の解の構造が驚くほど整理ができ、物理学や現代の科学技術の中にも複素数は数多く利用されています。
 さて、\(i:=\sqrt{-1}\)として虚数単位と呼びます。このとき、複素数とは、2つの実数\(a, b\)を用いて\(a+bi\)の形で書けるものを指します。複素数を許容することで、2次方程式の解の公式にあった\(b^2-4ac\)の値が負の値であっても「複素数解」として意味をもち、ルートの前にある\(\pm\)により2つの複素数解を持つことがわかります。重解も2つの解が偶然同じ値になっていると考えられるので、結局2次方程式はどんな場合であっても複素数の世界であれば必ず「2つの解を持つ」と統一的に述べることができます。
 複素数の恩恵はこれだけではありません。より次数の高い3次方程式ではちょうど3個の解があり、4次方程式ではちょうど4個の解を持つと説明できます。より一般に\(n\)次の代数方程式はちょうど\(n\)個の解を持つことが数学的に証明されています(これを「代数学の基本定理」と呼びます)。

3.重解の有無と判別式の正体

 以上から、複素数の範囲で考えるならば、解の個数は方程式の次数をみれば明らかです。そのため、解の状況を理解するのに「いつ重解になるのか?」を判別することに重きが置かれます。2次方程式における判別式\(D=b^2-4ac\)は、その値が0になるとき重解を持つと判断することができます。しかし、判別式とはそもそもなんなのでしょうか?得られた解の公式におけるルートの部分を拝借して勝手に「判別式」と名付けているだけだとすれば、判別式は偶然の産物のようなものに思えてしまうかもしれません。
 しかし、実はどんな代数方程式であっても、重解を持つか否かを判断できる「判別式」を定義することができます。つまり判別式は解の公式の中にある偶然の産物なんかではありません!次回のマスログでは、判別式の正体について詳しく見ていこうと思います。

4.さいごに

いかがでしたでしょうか?2次方程式の問題を解く際に必ずと言っていいほど登場する「判別式」ですが、実は意外な視点があります(人によっては全く意外ではなくむしろ自然な視点と思えるでしょう)。次回では、判別式の正体と、その先にある壮大なある理論の存在について解説していこうと思います。

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<文/岡本健太郎>

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