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疑似相関シリーズ 第2回|消防車が増えるほど火事の被害が大きい?

公開日

2026年1月7日

更新日

2026年1月27日


いきなり結論

その相関、犯人は“消防車”じゃない。火事の「規模」かもしれない。

「消防車の出動台数が多いほど、火事の被害額が大きい」という相関が見えることがあります。
でもそれは、消防車が被害を増やしているという意味ではありません。

このケースの正体はシンプルで、

大きい火事ほど消防車がたくさん必要で、被害も大きくなる

というだけです。

相関はヒント。因果は証拠。
今日は、“増えたもの”を原因と勘違いして、打ち手をズラさないための話です。


1. なぜ「消防車が増えるほど被害が大きい」が起きるのか

例えば、火事を2つ比べてみます。

小さな火事

・出動:消防車1台
・被害:小

大きな火事

・出動:消防車10台
・被害:大

この2つをデータでまとめると、当然こうなります。

消防車が多いほど、被害が大きい

ここで危ないのが、次の飛躍です。

「消防車が多いから、被害が増えたのでは?」

もちろん違います。

でも仕事では、これと同じ勘違いがよく起きます。

・「サポートの対応回数が多い顧客ほど解約が多い → サポートが悪い?」
・「会議が多いプロジェクトほど遅れる → 会議が原因?」
・「監視が厳しい部署ほど不正が多い → 監視が悪い?」

データは正しい。なのに解釈がズレる。
これが疑似相関(+逆因果)の怖さです。


2. 用語を“日本一やさしく”整理する

今回のキーワードは2つだけ。

相関(correlation)

Aが増えるとBも増える(または減る)という「いっしょに動く」関係。
相関が見えるのは、悪いことではありません。むしろ“手がかり”です。

因果(causation)

Aが原因でBが起きるという関係。
相関があっても、因果があるとは限りません。

逆因果(reverse causality)

今回の核心。
結果が先にあって、その結果に反応して原因っぽいものが増えることです。

「被害が大きい → 消防車が増える」

これが逆因果です。

交絡因子(confounder:こうらくいんし)

AとBの両方に影響する“黒幕”。
今回なら黒幕は、火事の規模です。


3. 「これは本当? 嘘?」をちゃんと分ける

今回の問いを、2つに分解します。

Q1:相関は本当?

本当です。
大規模火災ほど消防車が増え、被害も増えるので相関は出ます。

Q2:因果(消防車が被害を増やす)は本当?

嘘です。
消防車は被害を増やすどころか、減らすために来ています。

この「本当(相関)」と「嘘(因果)」を分けるだけで、意思決定の精度が一気に上がります。


4. ビジネスでの“実害”:犯人を間違えると改善が外れる

この疑似相関を因果だと勘違いすると、こうなります。

・間違い:「消防車を減らせば被害が減る」
・正しい:「火事を小さいうちに消す仕組みを作る」

仕事に置き換えると、もっと痛い。

例えば「サポート対応が多いほど解約が多い」という相関。

・間違い:サポートを減らす/対応を厳しくする
・正しい:そもそもトラブルが起きないように、プロダクトや導入を改善する

“増えたもの”が原因とは限らない。
多くの場合、それは「問題が大きいことへの反応」です。


5. 今日から使える:逆因果チェック「3つだけ」

初心者でも迷わないよう、3つに絞ります。

チェック①:時間の順番は合ってる?

原因なら、先に起きているはずです。

・被害が大きくなった“あと”に消防車が増えている → 逆因果の疑い

仕事でも同じ。

・解約が増えた“あと”にサポートが増えた
・炎上した“あと”に会議が増えた

この順番なら、「サポート」や「会議」が原因とは言いにくい。

チェック②:黒幕(規模)をそろえると関係は残る?

火事の規模を同じくらいに揃えたとき、

・消防車が多いほど、被害が大きい

がまだ残るか?
残らないなら、黒幕(規模)が作った見せかけの可能性が高い。

チェック③:対応を増やした時に、被害はどう動く?

もし本当に消防車が原因なら、消防車を増やすと被害は増えるはず。
でも現実は逆で、増やすほど被害は抑えられる可能性が高い。

つまり、

「増えた=悪」ではなく、むしろ必要な反応

ということ。


6. 実務の最小アクション:因果っぽさを確かめる方法

「じゃあ、仕事ではどう確かめるの?」に答えます。

ポイントは、“問題の大きさ(規模)”を固定して比較すること

例:サポート対応と解約のケース

(1)トラブルの重さが同じ顧客だけを集める(同じプラン、同じ利用頻度など)
(2)その中で「対応回数が多い顧客」と「少ない顧客」で解約が違うか見る

もし同じ重さでも「対応が多いほど解約が増える」なら、
対応品質の問題かもしれない。

逆に、同じ重さなら関係が消えるなら、
「トラブルの重さ(規模)」が黒幕だった可能性が高い。



まとめ

・「消防車の数」と「被害」の相関は出る(これは本当
・でも「消防車が被害を増やす」という因果は成り立たない(これは
・正体は、逆因果+黒幕(交絡因子)=火事の規模
・仕事では「時間順」「規模をそろえる」「増やした時の変化」で見抜ける

最後に一言。
増えたものが、犯人とは限らない。たいていは“対応”だ。


次回予告:第3回「ダッシュボードを見れば見るほど、売上が下がる?」
“悪いから見ている”かもしれない、逆因果の続編をやります。

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