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疑似相関シリーズ 第3回|ダッシュボードを見れば見るほど、売上が下がる?

公開日

2026年1月8日

更新日

2026年1月27日


いきなり結論

見てるから悪いんじゃない。悪いから見てるだけかもしれない。

「ダッシュボード(KPI)をよく見るチームほど、売上が低い」──そんな相関が見えることがあります。
でも、それを理由に「数字を見る文化はダメだ」と結論を出すのは危険です。

このケースの典型的な正体は、

売上が落ちたから不安になって、確認回数が増えた(逆因果)

です。

相関はヒント。因果は証拠。
今日は“数字を見るほど成果が下がる”という錯覚の正体を、ビジネス初心者でも一発で見抜ける形で整理します。



1. まず起きていること:データが正しいほど、解釈がズレる

たとえばこんな状況、思い当たりませんか?

・先月から売上が落ちている
・上司や経営から「数字を毎日見ろ」と言われる
・チーム内でも会話が「今日の数字どう?」ばかりになる

このとき起きるのは、自然な流れです。

売上が悪い → 不安になる → ダッシュボードを見る回数が増える

結果として、データを集めるとこう見えます。

ダッシュボード閲覧回数が多いチームほど売上が低い

ここで危ないのが、次の飛躍。

「ダッシュボードを見ることが、売上を下げているのでは?」

もちろん、そうとは限りません。
むしろ多くの場合、逆です。


2. 用語を“日本一やさしく”整理する

今回の主役は「逆因果」と「交絡因子」です。

相関(correlation)

Aが増えるとBも増える(または減る)という「いっしょに動く」関係。
相関があること自体は悪ではなく、手がかりです。

因果(causation)

Aが原因でBが起きるという関係。
相関があっても、因果があるとは限りません。

逆因果(reverse causality)

結果が先に起きて、その結果に反応して“原因っぽいもの”が増えること。

今回なら、

「売上が落ちる → ダッシュボード閲覧が増える」

これが逆因果です。

交絡因子(confounder:こうらくいんし)

AとBの両方に影響する“黒幕”。
今回なら、黒幕はたとえばこういうものです。

・競合参入
・在庫切れ
・価格改定
・炎上・障害
・主要チャネルの変化
・季節要因(繁忙期/閑散期)

売上も下がるし、見る回数も増える。
つまり、黒幕が「相関」を作っている可能性があります。


3. 「これは本当? 嘘?」をちゃんと分ける

今回も2つに分解します。

Q1:相関は本当?

本当です。
売上が悪い時期ほど確認が増える、という現象はよく起きます。

Q2:因果(見るほど売上が下がる)は本当?

嘘かもしれない。
少なくとも「相関がある」というだけでは、因果は言えません。

むしろ本当っぽいのは、

・売上が落ちたから見ている(逆因果)
・黒幕がいて両方が動いている(交絡)

のどちらかです。


4. ビジネスでの“実害”:数字を見る文化が“冤罪”になる

もし「見るほど売上が下がる」が因果だと決めつけると、打ち手がこうズレます。

・間違い:数字を見るのを減らす/ダッシュボードをやめる
・正しい:見る→判断→行動の流れを作る

数字は“見るだけ”では価値がありません。
価値が出るのは、

見る → 気づく → 打つ → 変わる

までつながったときです。

つまり問題は「見ること」ではなく、

見たあとに、何も変わっていないこと

かもしれません。


5. 今日から使える:逆因果チェック「3つだけ」

初心者でも迷わないように、3つに絞ります。

チェック①:時間の順番は合ってる?

原因なら、先に起きているはず。

・閲覧が増えた“あと”に売上が落ちた → 因果の可能性
・売上が落ちた“あと”に閲覧が増えた → 逆因果の可能性

まずは、どっちが先かを確認するだけでミスが減ります。

チェック②:誰が見ている?(閲覧者を分ける)

閲覧回数が増えるのは、現場ではなく「上長の監視」が増えたからかもしれません。

・現場が見る回数
・マネージャーが見る回数
・経営が見る回数

ここを分けると、相関の意味がまるで変わります。

チェック③:「見たあと」の行動は増えている?

閲覧回数だけをKPIにすると、簡単に壊れます。
代わりに、この3つをセットで見るのがおすすめです。

・ダッシュボード起点の改善アクション数
・改善までのリードタイム(気づき→手当て)
・アクション後のリカバリー率(戻り具合)


6. 実務の最小アクション:数字を「見せ方」ではなく「使い方」で改善する

「じゃあ、どう直す?」の最小手を紹介します。

最小手①:KPIを“3つまで”に絞る

見る項目が多いほど、見るだけで疲れます。
まずは「今週の最重要KPI」を3つに絞る。

・売上(または受注)
・リード数(または流入)
・成約率(またはCVR)

この3つだけでも、意思決定は回せます。

最小手②:ダッシュボードに「次の一手」を書く

数字だけ並べると、見て終わる。
おすすめは、ダッシュボードに“アクション欄”を付けること。

・目標との差分
・差分の原因仮説
・今日やること(1つ)

これだけで「見る→動く」に変わります。

最小手③:週1回だけ“意思決定ミーティング”にする

毎日見ると、短期のブレに振り回されます。
毎日は監視ではなく、週1回の意思決定に寄せる。

・何が起きた?
・なぜ起きた?
・何を変える?

これが揃うと、数字は味方になります。



まとめ

・「ダッシュボード閲覧が多いほど売上が低い」という相関は出る(これは本当
・でも「見るほど売上が下がる」という因果は言えない(これは嘘かもしれない
・正体は、逆因果(悪いから見ている)+黒幕(交絡因子)の可能性が高い
・解決策は「見る回数」を減らすことではなく、見たあとに動ける設計にすること

最後に一言。
数字は、見てるだけじゃ増えない。動かして増やす。


次回予告:第4回「チェックを増やすほど、不具合が増える?」
増えたのは不具合ではなく“見つかる量”かもしれない、観測のワナを扱います。

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