疑似相関シリーズ 第1回|アイスが売れると溺死が増える?
公開日
2026年1月6日
更新日
2026年1月27日
この記事の主な内容
いきなり結論
その相関、犯人は“暑さ”かもしれない。
「アイスの売上が増えると溺死事故が増える」という相関が見えても、アイスが事故を増やしているわけではありません。
このケースで本当に起きているのは、“暑さ(気温)”という黒幕が、両方を同時に押し上げているということです。
相関はヒント。因果は証拠。
今日は、相関を“因果”と勘違いして意思決定をミスらないための、超シンプルな考え方を身につけます。
1. 「そんなバカな」が、仕事では普通に起きる
まずは有名な例を出します。
・暑い日ほど、アイスが売れる
・暑い日ほど、海や川に行く人が増える
・人が増えるほど、事故も増える
この結果、データだけを見ると
アイスの売上が増えるほど、溺死事故が増える
という“相関”が見えます。
ここで危ないのが、次の飛躍。
「アイスが事故を増やしてるのでは?」
もちろん違います。
でも、ビジネスの現場ではこのレベルの飛躍が、もっと“それっぽい顔”で起きます。
・「広告を増やした月にクレームも増えた → 広告のせい?」
・「研修を増やした部署ほど離職が多い → 研修が悪い?」
・「KPI監視が厳しいチームほど売上が低い → 見過ぎが悪い?」
データは正しいのに、解釈が間違う。
これが、疑似相関の怖さです。
2. 用語を“日本一やさしく”整理する
ここで難しい言葉を、ちゃんと噛み砕きます。
相関(correlation)
Aが増えるとBも増える(または減る)という、「いっしょに動く」関係のこと。
相関があると、グラフにしたときに同じタイミングで上下しやすい。
・例:気温が上がると、冷たい飲み物の売上が増える
重要:相関がある=原因がわかった、ではない。
因果(causation)
Aが原因でBが起きるという関係。
・例:値下げ(A)をしたから購入が増えた(B)
因果を言うには、「たまたま」や「別の要因」を排除する必要がある。
疑似相関(spurious correlation)
一見つながって見えるけど、実は原因→結果ではない相関。
そして、疑似相関の“主犯”になりやすいのが次。
交絡因子(confounder:こうらくいんし)
AとBの両方に影響する、いわば黒幕。
今回の黒幕は「暑さ(気温)」です。
3. 今回の正体:黒幕は“暑さ(気温)”
「アイス売上」と「溺死事故」の関係を、矢印で書くとこうです。
・暑さ(気温) → アイスが売れる
・暑さ(気温) → 水辺に人が集まる → 事故が増える
つまり、
アイス売上 ↔ 溺死事故
という線が見えても、それは
暑さ(気温)という黒幕が、両方を動かした“結果”
なんです。
ここを見抜けると、仕事の判断が変わります。
4. 「これは本当? 嘘?」をちゃんと分ける
今回の問いを、2つに分解します。
Q1:相関は本当?
本当です。
暑い季節は、アイスも売れるし、事故も増えやすい。データとして相関は出ます。
Q2:因果(アイスが事故を増やす)は本当?
嘘です。
アイスを食べることが、事故の原因になっているわけではない。
この「本当(相関)」と「嘘(因果)」を分けられるかが、疑似相関対策の第一歩です。
5. ビジネスでの“実害”:間違うと打ち手がズレる
疑似相関を因果だと勘違いすると、打ち手がこうなります。
・間違い:アイスを減らせば事故が減る(ズレた施策)
・正しい:暑い日の安全対策を強化する(黒幕=暑さに打つ)
仕事に置き換えると、もっと痛い。
・間違い:広告を止める/研修を止める/監視を緩める
・正しい:季節要因・在庫・人員・競合・プロセスなど黒幕に手当てする
原因を外すと、努力が空振りします。
6. 今日から使える:疑似相関チェック「3つだけ」
初心者でもすぐ使える形に絞ります。迷ったらこれだけ。
チェック①:黒幕(交絡因子)はない?
「AとBの両方に効いてるものは?」と自問する。
ビジネスで黒幕になりやすいのは、だいたいこの辺です。
・季節(気温・連休・年度末)
・供給(在庫・人手・生産能力)
・露出(テレビ・SNS・PR)
・価格(値上げ/値下げ、競合価格)
・商品/品質(新機能、障害、リニューアル)
チェック②:時間の順番は合ってる?
原因なら、先に起きているはず。
「売上が落ちた“あと”に会議が増えた」なら、会議が原因とは言いにくい。
チェック③:分けて見ると結論は変わらない?
全体で見た相関が、
・地域別
・既存/新規
・チャネル別
・商品別
で崩れるなら、疑似相関の可能性が高い。
7. 実務での最小アクション:黒幕を固定して比べる
「じゃあどう確かめるの?」に、超シンプルな答えを出します。
例:今回なら
気温をそろえて比べます。
・同じ気温帯(たとえば30〜32℃の日)だけを取り出す
・その中で「アイス売上が高い日」と「低い日」で事故が増えるかを見る
もし同じ気温でも関係が消えるなら、
「アイス↔事故」は黒幕(気温)が作った見せかけだった可能性が濃厚。
ビジネスでも同じです。
・同じ予算
・同じ季節
・同じ在庫
・同じ顧客層
条件をそろえて比較する。
これが“相関を、使えるヒントに変える”基本動作です。
まとめ
・「アイス売上」と「溺死事故」には相関が出ることがある(これは本当)
・でも「アイスが事故を増やす」という因果は成り立たない(これは嘘)
・正体は、交絡因子=暑さ(気温)という黒幕
・仕事では「黒幕探し」「時間順」「分けて見る」の3点でだいたい防げる
最後に一言。
相関は、犯人じゃない。手がかりだ。
次回予告:第2回「消防車が増えるほど火事の被害が大きい?」
“増えたのは原因ではなく対応”かもしれない、逆因果の話をします。





