疑似相関とは何か|1on1を増やしたのに離職が止まらない理由
公開日
2025年12月28日
更新日
2026年1月23日
「最近、1on1をかなり増やしているのに、離職が減らないんですよね」
マネージャー同士の雑談や、定例会議でよく聞く言葉です。
メンバーの声を聞くために時間を確保し、忙しい中でも1on1を続けてきた。それなのに結果が出ない。むしろ、数字だけを見ると──1on1を多く実施している部署ほど、離職率が高い。
じゃあ、1on1は逆効果なのでしょうか?
結論から言うと、そうとは限りません。ここで起きているのは、因果関係ではなく、疑似相関と呼ばれる現象です。
「頑張っている施策ほど、疑われやすい」
この記事の主な内容
数字が示しているのは「事実」だけ
まず冷静に、数字が何を示しているのかを整理しましょう。
今回のデータが示しているのは、次の事実です。
・1on1の実施回数が多い部署ほど、離職率が高い
これは否定できません。数字として観測されている以上、事実です。
ただし、ここで一気に「だから1on1は意味がない」と結論づけてしまうのは、少し早い。
なぜなら、数字は「一緒に起きていること」は教えてくれますが、「なぜ起きたのか」までは教えてくれないからです。
疑似相関とは何か
疑似相関とは、
原因と結果のように見えるけれど、実際にはそうではない関係
のことです。
「Aが増えるとBも増える」という動きがあったとしても、
・Aが原因でBが起きたとは限らない
・別の“黒幕”が存在するかもしれない
このとき、AとBの関係は疑似相関になります。
犯人は、グラフに映らない
では、1on1と離職率の話に戻りましょう。
考えてみてください。
そもそも、どんな部署で1on1が増えやすいでしょうか?
・メンバーの不満が溜まっている
・チームの雰囲気が悪い
・成果が出ず、マネージャーが危機感を持っている
こうした部署ほど、「まずは話を聞こう」と1on1が増えるのは自然です。
つまり、
・もともと離職リスクが高い部署だった
・だから1on1が増えた
・結果として、離職も発生した
という流れかもしれません。
このとき、1on1は原因ではなく、対応策です。
交絡因子という考え方
ここで、ひとつ専門用語を紹介します。
交絡因子(こうらくいんし)。
少し難しく聞こえますが、意味はシンプルです。
原因でも結果でもないのに、両方に影響を与えている要因
今回の例で言えば、
・職場の人間関係
・業務負荷
・評価制度への不満
こうしたものが、
・離職率を高め
・1on1の実施回数も増やしている
可能性があります。
この「見えない要因」が、1on1と離職率を“同時に”動かしている。これが、疑似相関の正体です。
「本当の原因は、だいたい見えていない」
「だからやめよう」は、最悪の判断
もしここで、
「1on1をやっても離職が減らないなら、やめよう」
と判断してしまったらどうなるでしょうか。
・メンバーの声を拾う機会が減る
・不満が表に出にくくなる
・問題の発見が遅れる
結果として、さらに離職が増える可能性すらあります。
因果関係を取り違えると、
一生懸命やっていることほど、真っ先に切られてしまう
という悲劇が起きます。
疑似相関を疑うための視点
最後に、実務で使える視点をひとつ。
数字を見たとき、こう自問してください。
・この施策は「原因」か? それとも「対応」か?
・もともと問題があったから、動いていないか?
・裏で同時に動いている要因はないか?
この3つを考えるだけで、疑似相関に引っかかる確率は大きく下がります。
次回予告|原因と結果が、こっそり入れ替わる
次回は、
「研修を受けた部署ほど、トラブルが多い理由」
という、さらにややこしいケースを扱います。
原因と結果が“逆転”して見える、逆因果の話です。
疑似相関を理解した人ほど、次の罠にハマりやすい。
その理由を、わかりやすく解説します。





