知られざる切り絵アートの世界へ!切り絵数学入門(前編)
公開日
2021年10月5日
更新日
2021年10月5日
こんにちは。和からの数学講師の岡本です。今回は2021年9月23日に開催された「第16回ロマンティック数学ナイト」にて講演した「切り絵の中の数学」という内容について全2回でまとめてみようと思います。
この記事の主な内容
1.切り絵とは
まず、「切り絵」とは何か?という根本的な話題から入ります。切り絵とは「紙の切り抜いていくことで描く、絵画手法の一つ」です。特に今日が扱っていく切り絵には「全てつながっている」「紙に着色はなし」という条件を付けておきます。
そうすると、切り絵を作成するにあたって必要なものは「図案の紙」「デザインナイフ(またはカッター)」「カッターマット」の3つだけとなります。非常に経済的ですし、だれでも手軽に始められる超オススメの創作活動となります。
しかし、こだわった作品を創りたいときはもう一つ「強靭な精神力」も必要になってきます。これは意外と知られていないかもしれません。
2.切り絵の作品例
次に岡本の切り絵をいくつか紹介します。写真ベースや書道の切り絵も行いますが、基本的には数学的なモチーフを切ることが多いです。例えばこちらのような折り紙の「平坦折りの理論」をモチーフにした作品。
折り紙は小さく小さく折りたたんでいき、広げると無数の折り目ができます。実はこの折り目には美しい対称性が備わっており、折り線で分けられたエリアは、必ず2色で塗り分けられます。つまり、隣り合うエリアを異なる色で塗り分けるのに、2色あれば十分であることが示されます。この切り絵はこうした性質そのものをデザインしています。
お次はこちら。
非常に複雑な曲線となっており、3次元っぽくも見えますが、これも切り絵なのです…!
そもそもどうやって図案を作ったのかも気になりますよね?実は、この図案、Excelで描いています!
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とりあえず、Excelで図案を作成し、あとはひたすらデザインナイフと強靭な精神力で切っていくだけです(ドン引きポイント)
3.数学的な考察その1「プロセスを厳密に捉える」
それでは、次に「切り絵」を数学的に考察していきましょう。はじめは無茶な取り組みと思いましたが、やってみると案外面白い数学と結びついてきました!
「数学」を展開するには大きく2つの切り口があります。1つは、「厳密に定義し、一般化する」。もう一つは「数学的なモデルを考えて、構造をみるor効率化を図る」です。
今回は前者に注目し、切り絵のステップをもう少し厳密に考えてみましょう。
最初に切りたいモチーフを考えます。例えば、東京の「夜景が切りたい」と思った場合、夜景の写真を用意します。しかし、このままでは切れないので、次に元となる図を白黒(モノトーン)にします。これで「切るところ」と「残すところ」を明確に分けます。しかし、グレーの部分もあるので、取捨選択等を行い、切るか切らないかを分別していきます。さらに、白黒にできても、図案がつながっていないといけないので、不自然にならない程度に加筆し黒の部分をつなげていきます。このようなつながりを数学的には「弧状連結」といいます。
さて、後はデザインナイフと「強靭な精神力」を使って切り抜いていくだけです。
かなり細かい部分はありましたが、完成したものがこちらです。
今回はプロセスに関してやや厳密に見ていきましたが、切り絵そのものについても厳密に考えると面白いかもしれません。例えば、そもそも切り絵とは2次元平面の図を切り抜いて「自明な被覆(射影)」の構造を持っています。被覆を考えるのであれば、別に2次元でなくてもいいので、一般の次元における「切り絵」が考察可能な気がします。このように、一般化、抽象化していくのも数学の切り口の一つです。
4.さいごに
いかがでしたでしょうか?今回は前半ということで、「切り絵とは」、「切り絵の例」、「切り絵のプロセス」について簡単にお話してみました。
次回は数学的なモデルを考えて切り絵の問題を数学の力で解説していこうというややマニアックなお話です。お楽しみに!
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<文/岡本健太郎>