【ロマ数トレラン】ブラックホールと一般相対論入門セミナー紹介
公開日
2020年11月18日
更新日
2020年11月18日
※本記事はロマ数トレラン「ブラックホールと一般相対論入門セミナー」の講師である酒井義彦先生によるセミナーの紹介記事になります。ご興味を持った方は是非ゼミにご参加ください。ガイダンス回は無料となっております。
この記事の主な内容
ブラックホールとは
昨年春、人類史上初めてブラックホールの撮影に成功したというニュースが世界中を駆け巡りました。また、今年のノーベル物理学賞はペンローズが受賞したことで話題になりましたが、その受賞内容はブラックホールの形成に関する理論でした。
ブラックホールは極めて高密度で、その強い重力のために物質だけでなく光さえ脱出することができない非常に重たい天体です。ブラックホールは何でも吸い込む黒い天体ということで、SFの世界によく登場しますが、現実の宇宙でもブラックホールと考えられる天体の候補が多く見つかっています。
本セミナーではブラックホールの周りで何が起こっているのかを数式で明らかにしていきます。
一般相対性理論とは
アインシュタインが作り上げた相対性理論には、特殊相対性理論と一般相対性理論の2種類があります。
特殊相対性理論は、1905年にアインシュタインが提唱した理論で、すべての慣性系において,物理法則は同形でなければならないという特殊相対性原理と,光の速さは一定であるという光速不変の原理の2つを柱として作られた理論です。
慣性系とは、静止または等速直線運動をしている座標系のことです。2つの座標系の間では、物理法則はすべて同型で表すことができ、結果として、静止系から見て、光の速さに近い速度で等速直線運動をしている座標系を見ると、時間がゆっくり進んだり、長さが短くなったりするなど、日常では起こらないような現象が起きることがわかります。また、特殊相対性理論を力学に応用して導かれる数式としては、質量とエネルギーが等価であるという、\(E=mc^2\)というアインシュタインの式も有名です。
本セミナーでは、もう一つの相対性理論である、一般相対性理論を中心に話を進めます。ブラックホールを扱うにはこの一般相対性理論が必須の道具になるためです。一般相対性理論とは、加速度系を含めたいかなる座標系においても,物理法則は同形でなければならないという一般相対性原理と,一様な加速度をもつ座標系と、一様な重力場とは同等であるという等価原理の2つを柱として作られた理論で、重力場の理論とも言われています。
重力場の方程式とシュヴァルツシルト解
アインシュタインの一般相対性理論から導かれた帰結として、重力場とは時空の曲がり具合であるという、重力場の方程式があります。
\[
R_{\mu\nu}-\frac{1}{2}g_{\mu\nu}R=\frac{8\pi G}{c^4}T_{\mu\nu}
\]
方程式の左辺は時空の曲がり具合である幾何的な量を表し、右辺は物質やエネルギーを表します。これを結びつけたアインシュタインは正に天才です。
この重力場の方程式を静的で球対称な条件の下で最初に解いたのが、シュヴァルツシルトで、正にこれがブラックホールを表す方程式となります。
\[
ds^2=-\left(1-\frac{2GM}{c^2r}\right)c^2dt^2+\frac{dr^2}{1-\frac{2GM}{c^2r}}+r^2(d\theta^2+\sin^2{\theta}d\phi^2)
\]
これを読み解くと、ブラックホールは光ですら脱出出来ない、もの凄く重い天体であることが分かるのです。
「ブラックホールの時空の中に入ってしまうと、一体どうなるのでしょうか?」
この数式が何を意味するのかをじっくり読み込んで、日常では起こることのない不思議な世界を一緒に学習し、堪能していきましょう。
<文/酒井義彦>