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教養としての力学-第3回:300年前の法則がロケットを飛ばしている-ニュートンが見つけた「力の正体」【高校物理をやさしく解説】

公開日

2026年5月3日

更新日

2026年4月13日

2024年、SpaceXのロケット「スターシップ」が宇宙から帰還し、発射台のアームでキャッチするという前代未聞の映像が世界中で話題になりました。

最先端技術の塊のように見えるこのロケット。しかしその飛行を支える基本原理は、なんと約300年前にアイザック・ニュートンが発見した法則です。

ニュートンの3つの法則、通称「ニュートンの運動の法則」は、現代のロケット工学から自動車の設計まで、あらゆる「動き」の根底にあります。今回はこの3つの法則を、身近な例を使ってやさしく解説します。


第1法則:「ほっておくと、物は今の状態を続けようとする」

ニュートンの第1法則は慣性の法則と呼ばれています。

外から力が加わらない限り、止まっているものは止まり続け、動いているものは同じ速度で動き続ける。

これだけ聞くと「当たり前では?」と思うかもしれません。しかし少し考えてみると、不思議なことに気づきます。

ボールを転がすと、やがて止まりますよね。「動いているものは動き続ける」はずなのに、なぜ止まるのでしょうか。

答えは「外から力が加わっているから」です。床との摩擦や空気抵抗という力が、ボールの動きを妨げているのです。もし摩擦も空気抵抗もない宇宙空間でボールを投げたら、そのボールは永遠に同じ速度で飛び続けます。

【専門用語の解説】慣性(かんせい)
物体が「今の状態を保ち続けようとする性質」のことです。
電車が急ブレーキをかけたとき、体が前に倒れそうになるのは、体が「今の速度で動き続けようとする」慣性があるからです。
重いものほど慣性が大きく、状態を変えるのに大きな力が必要です。

ビジネスの世界でも「慣性」という言葉を使いますが、まさにこの物理の概念が語源です。組織や習慣が「今の状態を続けようとする力」を、物理の慣性になぞらえているわけです。

【図1】慣性の法則

第2法則:「力が大きいほど、そして軽いほど、よく加速する」

第2法則は運動方程式とも呼ばれ、前回学んだ「加速度」と深く関係しています。

内容をシンプルに言うとこうです。

加わる力が大きいほど加速度は大きくなる。そして物体が軽いほど、同じ力でも加速度は大きくなる。

身近な例で考えてみましょう。

空のショッピングカートと、食料品を山盛りに積んだショッピングカート。同じ力で押したとき、どちらが速く動き出すでしょうか。当然、空のカートです。これが「軽いほどよく加速する」ということです。

逆に、同じカートを押すとき、力を強くすれば強くするほど、カートは速く動き出します。これが「力が大きいほど加速度は大きくなる」ということです。

前回のテスラの話に戻ると、EVの加速が鋭い理由はまさにここにあります。発進の瞬間から大きな力(トルク)を出せるため、加速度が大きくなるのです。

第3法則:「押せば、必ず押し返される」

第3法則は作用・反作用の法則と呼ばれています。

ある物体が別の物体に力を加えると、必ず同じ大きさで逆向きの力が返ってくる。

【専門用語の解説】作用・反作用(さよう・はんさよう)
「作用」=加えた力、「反作用」=返ってくる力のことです。
2つの力は必ず同じ大きさで、互いに逆方向に働きます。
どちらか一方だけが存在することはありません。

壁を手で押してみてください。手が痛くなりますよね。これは壁が手を押し返しているからです。あなたが壁を押す力(作用)と、壁があなたを押し返す力(反作用)は、常にセットで存在しています。

そして、この法則こそがロケットが飛ぶ原理です。

ロケットは燃料を燃やして、高温のガスを猛烈な勢いで下に向けて噴射します。これが「作用」です。するとその反作用として、ロケット本体は上に向けて押し上げられます。

【図2】作用・反作用の法則

宇宙空間には空気がありません。プロペラで空気を押すことも、地面を蹴ることもできません。しかし作用・反作用の法則は、空気がなくても成立します。だからロケットは真空の宇宙空間でも飛べるのです。

SpaceXのロケットも、このシンプルな法則の上に成り立っています。

3つの法則をつなげて考える

ここで3つの法則を整理しましょう。

【図3】運動の3法則

第1法則は「力が加わらなければ状態は変わらない」という前提です。第2法則は「力が加わったときにどう動くか」を説明します。第3法則は「力は必ず2つセットで存在する」という原則です。

この3つは互いに補い合い、「力と動き」の世界を完全に説明するセットになっています。ニュートンがこれを発見したのは17世紀。リンゴが木から落ちるのを見て着想を得たという逸話は有名ですが、その法則が300年後の宇宙開発を支えているというのは、改めて考えると驚くべきことです。


まとめ:法則を知ると「動き」の見え方が変わる

今回学んだニュートンの3法則を振り返ります。

第1法則(慣性の法則)は、物体は外から力が加わらない限り今の状態を続けるという法則です。第2法則(運動方程式)は、力が大きいほど、また軽いほどよく加速するという法則です。第3法則(作用・反作用)は、力を加えると必ず同じ大きさの力が返ってくるという法則です。

ロケットの打ち上げ映像を見るとき、今日からは「あの噴射が作用で、ロケットが上がるのが反作用なんだ」と思えるはずです。物理の法則を知ることで、世界の見え方が少しずつ変わっていきます。

次回予告

第4回は「運動量と衝突」を取り上げます。自動運転車はどうやって衝突を回避しているのか。その判断の裏側にある物理の考え方を一緒に覗いてみましょう。

<文/岡崎 凌>

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