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データを“見る”統計グラフ-第2回 相関を読む散布図【統計学をやさしく解説】

公開日

2025年10月13日

更新日

2025年11月25日


はじめに:2つのデータを同時に“見る”という発想


前回は、1つのデータの広がりを“箱ひげ図”で見る方法を紹介しました。今回は少しステップアップして、「2つの変数の関係性を見る」=散布図(さんぷず)を取り上げます。

ここでいう「変数」とは、観測や計測によって得られるデータ項目のことです。例えば「広告費」や「売上」など、それぞれ数値として測定できる対象を指します。散布図では、横軸と縦軸に異なる変数を置くことで、それらの関係を視覚的に捉えることができます。

散布図は、データ同士の関係を直感的に理解するための最も基本的なグラフです。ビジネスの現場でも、売上と広告費、顧客満足度とリピート率、時間と生産量など、2つの要素がどう関係しているかを見極めるためによく使われます。


散布図とは?:点の“集まり方”が関係性を語る

散布図(Scatter Plot)は、横軸と縦軸にそれぞれ異なる変数を取り、データのペアを点としてプロットしたものです。点の“集まり方”を見ることで、2つの変数の関係性を読み取ることができます。

例えば、広告費(横軸)と売上(縦軸)の散布図で、点が右上がりに並んでいれば「広告費を増やすほど売上も伸びる傾向がある」と分かります。逆に右下がりであれば「一方が上がるともう一方が下がる」関係です。


相関とは?:関係の“強さ”と“向き”を表す指標

2つの変数の関係を、数値で表す指標を相関係数(correlation coefficient)といいます。相関係数は −1から+1 の範囲をとり、以下のように解釈します。

■ +1:完全な正の相関(右上がりに一直線)
■ 0:相関なし(点がバラバラ)
■ −1:完全な負の相関(右下がりに一直線)

たとえば、広告費と売上の関係では、相関係数が0.9なら「かなり強い正の相関」、−0.8なら「強い負の相関」と言えます。

一般的なビジネスデータの目安としては、相関係数が0.7を超えると「強い相関」、0.4〜0.7は「中程度の相関」、0.3未満は「弱い相関」と判断されることが多いです。ただし、業界やデータの性質によってこの基準は変わるため、絶対的なものではありません。


注意:相関は“因果”ではない

ビジネスデータでよくある誤解が、「相関がある=原因と結果の関係がある」と思い込むことです。しかし、相関はあくまで「一緒に動く傾向」を示しているだけで、原因までは示していません

たとえば、アイスの売上と熱中症の件数には強い正の相関がありますが、アイスが熱中症を“引き起こしている”わけではありません。どちらも「気温」という第三の要因によって動いているだけです。


散布図の読み方のコツ

ここまでで相関の意味と注意点を学びました。では、実際に散布図を見るときに、どこに着目すれば関係をより正確に読み取れるのでしょうか。

散布図を使う際には、次のような点に注目しましょう:

点の傾き(右上がり・右下がり):関係の方向を示す。
点のまとまり具合(散らばりの程度):関係の強さを示す。
外れ値(他と離れた点):異常・例外・新しい発見の手がかり。
グループの違い:セグメントごとに色を変えると、構造が見やすい。


ビジネスへの応用例

散布図はあらゆるビジネス分野で応用できます。単に「見える化」するだけでなく、「改善ポイントの発見」や「戦略の立案」にも役立ちます。

営業活動の分析

顧客訪問回数と契約数を散布図にすると、成果と活動量の関係が見える。

マーケティング分析

広告費と売上、クリック率と購入率などの関係を可視化して、費用対効果を判断できる。

人事評価や教育分析

研修時間と成果指標、勤続年数と離職率など、組織のパフォーマンスを多角的に分析できる。



まとめ:点が語る“見えない関係”を読み解こう

散布図は、単なる点の集まりではなく、データの裏にある「関係の構造」を見せてくれる鏡です。相関係数で数値化しつつ、外れ値や例外にも目を向けることで、単なる数値比較では気づけない“つながり”を見出すことができます。たとえば、散布図を使うことで営業活動と成果の関係や、広告投資と売上伸び率の関係など、業務改善のヒントを掘り起こすことが可能になります。

さらに、散布図は他のグラフと組み合わせることで、より説得力のある分析ができます。たとえば、箱ひげ図で分布の特徴をつかみ、散布図で関係性を示す──このような組み合わせはビジネスデータの解釈を一段と深めます。

次回は、これまで扱ってきた箱ひげ図や散布図を含めて、棒グラフ・折れ線グラフ・円グラフなども比較しながら、「どんなデータにどのグラフが最も適しているのか」を整理します。目的に応じた“グラフ選び”のポイントを、ビジネスの実践例を交えてわかりやすく紹介します。

<文/綱島佑介>

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