第8回|“なんとなく優秀”をやめる:人材マネジメントをデータで見る方法
公開日
2026年1月24日
更新日
2026年1月20日
この記事の主な内容
はじめに:なぜ“評価のモヤモヤ”はなくならないのか?
人事評価やタレントマネジメントの現場では、こんな声がよく聞かれます。
・「あの人は優秀だと思う」
・「うちのチームは最近元気がない」
・「誰を昇格させるべきか直感で決めている」
・「成果が出ていない理由がよく分からない」
しかし、この“なんとなく”で判断する文化が続く限り、
優秀な人が埋もれ、組織が非効率になる可能性が高まります。
結論から言うと——
人材マネジメントは「感覚」だけで行うと必ず歪む。最低限のデータ視点を入れることで、納得度も再現性も劇的に上がる。
今回は、実例とともに「人材をデータで見る」ためのシンプルな方法を紹介します。
1|実例:“雰囲気優秀”な人の評価が高くなる理由
● 実例1:声が大きい人が評価されてしまうチーム
ある企業では、次のような現象が起きていました。
・会議でよく発言する
・上層部からもよく名前が挙がる
・元気で明るい
こうした“見えやすい特徴”だけで評価が上がる人がいる一方、
・黙々と成果を出す人
・問題発生時に必ずフォローする人
・顧客満足度が高い人
といった“静かな優秀層”が見過ごされていました。
データで見てみると——
・発言数と成果には相関なし
・顧客満足度が高いのは、むしろ静かなメンバー
・ミスが少ないのも静かなメンバー
つまり、見える人≠優秀な人だったわけです。
これは、多くの組織で起こる“評価のバイアス”です。
2|評価を歪ませる「3つのバイアス」
人材評価が間違う理由の多くは、次のバイアスによって説明できます。
● バイアス1:可視性バイアス
「目立つ人ほど高く評価される」現象。
・発言が多い
・上司と仲が良い
・印象に残りやすい
こうした要素が、実際の成果より強く影響してしまいます。
● バイアス2:最近バイアス
直近の出来事に引っ張られる評価。
例:
・直前の失敗で評価が下がる
・直前の成果だけで評価が上がる
本来、半年〜一年の貢献を見るべきなのに、「最近だけ」見てしまう現象です。
● バイアス3:好き嫌いバイアス
人間なのでどうしても発生します。
・コミュニケーションが合う
・共通点がある
・話しやすい
好意・嫌悪が評価に入り込みます。
これらのバイアスは、“データの仕組み”を入れない限り消えません。
3|データで人材を評価すると何が変わる?
では、人材マネジメントにデータ視点を入れると何が変わるのでしょうか?
● 変化1:評価の“理由”が明確になる
例:
・顧客満足度の高さ
・期限遵守率の高さ
・プロジェクト成功率
・行動量(案件数、改善提案数など)
数字や客観的データがあるだけで、評価の説明責任が果たしやすくなります。
● 変化2:静かな優秀層を見つけられる
成果を出しているのに目立たないメンバーが浮き彫りになります。
● 変化3:昇格・配置の精度が上がる
感覚ではなく、根拠ある判断ができるようになるため、ミスマッチが減ります。
4|実例:人材データを“3軸”で見たら意外な優秀層が見つかった
ある企業では、次の3軸でメンバーを可視化しました。
● 軸1:成果(アウトカム)
例:
・売上貢献
・プロジェクト成功率
・顧客の評価
● 軸2:行動(ビヘイビア)
例:
・提案数
・フォロー頻度
・トラブル対応の速さ
● 軸3:姿勢(アティチュード)
例:
・協力姿勢
・成長意欲
・チームへの貢献度
これをマッピングしたところ、
・“静かだが成果が高い”メンバー
・“行動量は少ないが、顧客からの信頼が厚い”メンバー
・“成果は普通だが、改善提案が多い”メンバー
など、多様な強みが見えました。
その結果、
・昇格候補が従来の3名から5名に増えた
・重要プロジェクトのアサインが適切に
・チーム全体の納得度が向上
という効果が出ました。
5|今日からできる“人材をデータで見る3つの問い”
難しいデータは不要。次の質問だけで、評価の軸が明確になります。
● 問い1:どんな成果を出した?(結果)
・売上
・期限遵守
・顧客満足
● 問い2:どんな行動をしていた?(プロセス)
・行動量
・改善活動
・チームワーク
● 問い3:どんな姿勢だった?(姿勢)
・協力性
・主体性
・成長意欲
この3つを記録するだけで、「なんとなく評価」が消えます。
まとめ:“人を見る”ではなく“人の事実を見る”
最後に、一言でまとめます。
優秀さは雰囲気では決まらない。事実とデータに向き合うことで、本当の人材が見えてくる。
データドリブンな人材マネジメントを導入すると、
・評価の納得度が上がる
・配置の精度が上がる
・静かな優秀層が救われる
・組織の成長スピードが上がる
というメリットが生まれます。
次回予告:組織文化に効くデータドリブン
次回は、
「“社長の一声”で全部決まる会社から抜け出す方法」
を実例とともに紹介します。





