疑似相関シリーズ 第8回|クーポンを配るほど、利益が下がる?
公開日
2026年1月13日
更新日
2026年1月27日
この記事の主な内容
いきなり結論
クーポンが利益を下げたんじゃない。利益が下がりそうな状況だから、クーポンを配っただけかもしれない。
「クーポンを配った月ほど、利益率が下がっている」
「割引施策を増やすほど、利益が減る」
こういう相関、EC・店舗・SaaSの有料プランでもよく見えます。
すると、つい言いたくなる。
「クーポンって、やっぱり悪なのでは?」
でもそれは早い。
クーポンは“毒”にも“薬”にもなります。
相関はヒント。因果は証拠。
今日は「割引=悪」と決めつけて、売上と利益の両方を失わないための話です。
1. なぜ「クーポンを配るほど利益が下がる」が起きるのか
まず、超ありがちな状況を2つだけ出します。
パターンA:売れないときにクーポンを配る(逆因果)
売上が落ちていると、会社はどうするか。
・集客が落ちた → クーポンでテコ入れする
・在庫が余った → クーポンで回転させる
・競合が強い → クーポンで対抗する
つまり、
利益が悪い(または売上が悪い)→ クーポンが増える
が普通に起きます。
その結果、データではこう見える。
クーポンが多いほど利益が下がる
でも、これは「クーポンが原因」ではなく「悪い状況への反応」かもしれません。
パターンB:クーポンが“利益が高い商品”に当たっていない(設計ミス)
クーポンが本当に利益を下げるのは、たいていこのケースです。
・値引きが必要ない人に配っている(ただの取りこぼし)
・利益の薄い商品に当たっている(赤字拡大)
・リピートしない顧客だけを集めている(一発屋)
つまり、問題は「クーポン」ではなく「配り方」です。
2. 用語を“日本一やさしく”整理する
今回のキーワードは3つだけ。
相関(correlation)
Aが増えるとBも増える(または減る)という「いっしょに動く」関係。
クーポン配布量と利益率が同時に動くことは普通に起きます。
因果(causation)
Aが原因でBが起きるという関係。
相関だけで「クーポンが利益を下げた」と断定できません。
逆因果(reverse causality)
結果が先にあって、その結果に反応して“原因っぽいもの”が増えること。
今回なら、
「利益が落ちる(売上が落ちる) → クーポンが増える」
が起きやすい。
交絡因子(confounder:こうらくいんし)
クーポンと利益の両方に効く“黒幕”。
・季節要因(セール期、閑散期)
・競合の値下げ
・広告単価の高騰
・在庫の偏り
・商品構成の変化(高粗利→低粗利に寄った)
この黒幕を見ずに「クーポン悪」と結論を出すと、改善が外れます。
3. 「これは本当? 嘘?」をちゃんと分ける
今回も2つに分解します。
Q1:相関(クーポン↑ 利益↓)は本当?
本当です。
データ上、クーポンが増える局面で利益率が下がることはよくあります。
Q2:因果(クーポンが利益を下げる)は本当?
嘘かもしれない。
少なくとも相関だけでは因果は言えません。
むしろ疑うべきは次。
・利益が悪いからクーポンが増えた(逆因果)
・黒幕(季節・競合・在庫)が両方を動かした
・クーポンの設計ミス(当てる先がズレている)
4. ビジネスでの“実害”:クーポンをやめて売上も利益も落とす
「クーポンは利益を下げる」と決めつけると、こうなりがちです。
・間違い:クーポンを禁止する/値引き施策をやめる
・正しい:クーポンを“利益が増える形”にチューニングする
クーポンは、やり方次第で
・利益を削る(悪)
にも
・利益を守る(善)
にもなります。
重要なのは、クーポンが生むのは「売上」ではなく、
買う人の入れ替え
だということです。
つまり、
・どんな人に
・何を
・いくらで
・何回買ってもらうか
を設計しないと、利益は守れません。
5. 今日から使える:割引のワナチェック「3つだけ」
初心者でも迷わないよう、3つに絞ります。
チェック①:クーポン配布は“売上が落ちた後”では?(時間順)
原因なら先に起きているはず。
・売上が落ちた → クーポンを配った → 利益が下がった
この順番なら、クーポンが原因とは言いにくい。
まずは「いつ配ったか」を見てください。
チェック②:クーポンで増えたのは“新規”? “既存”?
同じクーポンでも、意味が変わります。
・新規獲得:将来のLTV(継続利益)で回収できるか
・既存割引:離脱防止ならOK、ただの値引きならNG
ここを分けないと、クーポンは必ず損に見えます。
チェック③:クーポン適用後の「粗利」と「リピート」を見ている?
クーポンは、1回の利益で判断するとほぼ負けます。
最低でも次をセットで。
・適用後粗利(割引後でも黒字か)
・リピート率(次に買うか)
・平均購入回数(何回買うか)
6. 実務の最小アクション:クーポンを「利益の武器」に変える
最小手を3つ紹介します。
最小手①:「全員に配る」をやめて、配る相手を限定する
おすすめは“買う理由が足りない人”にだけ当てる。
・カゴ落ち(購入直前で止まった人)
・初回で迷っている新規
・一定期間買っていない既存
「すでに買う人」に配ると、利益だけが減ります。
最小手②:値引きではなく“条件”で利益を守る
割引額より、条件の設計が効きます。
・◯円以上で利用可(客単価を上げる)
・特定カテゴリのみ(粗利が高い方へ誘導)
・期限短め(だらだら配らない)
「配り方」で、利益は守れます。
最小手③:判断は「LTV − 獲得コスト」でやる
クーポン施策の勝ち負けは、ここだけでOK。
・LTV(将来も含めた利益)
・クーポン+広告などの獲得コスト
これがプラスなら、クーポンは“利益を増やす施策”になります。
まとめ
・「クーポンが増えるほど利益が下がる」という相関は出る(これは本当)
・でも「クーポンが利益を下げる」とは言い切れない(これは嘘かもしれない)
・正体は、逆因果(悪い状況への反応)+黒幕(季節・競合・在庫)+設計ミスの可能性
・クーポンは“配り方”で、毒にも薬にもなる
最後に一言。
クーポンは利益を削る道具じゃない。利益を守る設計に変えられる。
次回予告:第9回「SNSフォロワーが増えるほど採用応募が増える?」
フォロワー数に踊らされない、因果の見抜き方をやります。





