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疑似相関シリーズ 第7回|満足度が高いのに、解約が増える?

公開日

2026年1月12日

更新日

2026年1月27日


いきなり結論

「満足度が上がったのに解約が増えた」は矛盾じゃない。“誰が増えたか”が違うだけかもしれない。

満足度(NPSなど)が上がったのに、解約率も上がる。
この現象、SaaS・サブスク・会員ビジネスではわりと普通に起きます。

すると、こう言いたくなる。

「満足度って意味あるの?」

でもそれは早い。
このケースは、疑似相関の中でも特に重要なテーマで、正体はたいてい次のどれかです。

・セグメントが混ざっている(新規と既存、プラン別など)
・平均にだまされている(シンプソンのパラドックス)
・時間差がある(満足度は先行、解約は遅れて出る/逆もある)

相関はヒント。因果は証拠。
今日は「全体平均の数字」で現場を誤解しないための話をします。



1. なぜ「満足度が高いのに解約が増える」が起きるのか

まず、超わかりやすい例を作ります。

例:既存は満足、新規はミスマッチ

・既存顧客:プロダクトに慣れていて満足度が高い(解約しにくい)
・新規顧客:期待と違ってミスマッチが起きやすい(解約しやすい)

ここで、ある月に「新規獲得が爆増」したとします。

するとどうなるか。

・既存顧客の満足度は高いまま(むしろ改善でさらに上がる)
・でも新規が増えた分、ミスマッチ解約が増える

結果として、全体ではこう見えます。

満足度が上がったのに、解約が増えた

ここで危ないのが、次の飛躍。

「満足度を上げても意味がない」

違います。
“誰の満足度が上がって、誰が解約しているか”を分けて見ていないだけ。


2. 用語を“日本一やさしく”整理する

今回の主役は「平均のワナ」と「セグメント」です。

相関(correlation)

Aが上がるとBも上がる(または下がる)という「いっしょに動く」関係。
満足度と解約が同時に動くこともありますが、解釈には注意が必要です。

因果(causation)

Aが原因でBが起きるという関係。
満足度が上がったから解約が減る、は“あり得る”けど、相関だけで断定はできません。

セグメント(層)

顧客を「似た者同士」で分けること。

・新規/既存
・プラン別
・利用頻度別
・業種別

など。

顧客が混ざっていると、全体平均の数字は“ぼやけます”。

シンプソンのパラドックス

全体で見るとAとBはこう見えるのに、グループ別に見ると逆(または別の結論)になる現象

つまり「全体平均が嘘をつく」ことがあります。

難しそうに聞こえますが、やることはシンプル。

分けて見るだけ。


3. 「これは本当? 嘘?」をちゃんと分ける

今回も2つに分解します。

Q1:相関(満足度↑ 解約↑)は本当?

本当です。
全体データでは同時に起きることがあります。

Q2:因果(満足度を上げると解約が増える)は本当?

嘘かもしれない。
少なくとも相関だけでは因果は言えません。

むしろ疑うべきは次。

・新規比率が増えた(解約が増えやすい層が増えた)
・プラン構成が変わった(解約しやすいプランが増えた)
・価格改定・競合参入など、別要因が解約に直撃している


4. ビジネスでの“実害”:全体平均で判断すると「正しい施策」を捨てる

この現象を雑に解釈すると、こんな誤判断が起きます。

・間違い:「満足度改善は意味ない」→ CS/UX改善をやめる
・正しい:「誰が解約しているか」を特定し、そこに手当てする

満足度改善は、たいてい“既存”には効きます。
一方、解約が増えるのは“新規”のオンボーディングや期待値ズレが原因だったりする。

つまり打ち手は、同じではありません。

・既存:体験改善、サポート強化、機能改善
・新規:オンボーディング、期待値調整、導入支援

全体平均だけで見ていると、この違いが消えます。


5. 今日から使える:平均のワナチェック「3つだけ」

初心者でも迷わないよう、3つに絞ります。

チェック①:新規/既存で分けると結論はどうなる?

まずはこれだけでOKです。

・新規の満足度と解約
・既存の満足度と解約

これを分けると、「満足度↑なのに解約↑」が一気にほどけることが多い。

チェック②:プラン別・利用頻度別で見ると逆転しない?

解約は、層によって“当たり前に違う”指標です。

・低単価プランは解約が高い
・利用頻度が低い層は解約が高い

ここが混ざっていると、全体の解釈がズレます。

チェック③:時間差(ラグ)を疑う

満足度は“今の気持ち”。解約は“後で起きる行動”。
だから、こういうズレが起きます。

・今月の満足度改善が、解約低下として出るのは来月以降
・逆に、今月の価格改定の解約が、満足度にはまだ出ていない

時間差を無視すると、因果が読めなくなります。


6. 実務の最小アクション:満足度を「意思決定の武器」に変える

最小手を3つ紹介します。

最小手①:満足度を「セグメント×推移」で見る

おすすめは、この2軸。

・セグメント(新規/既存、プラン別)
・月次推移(いつから変わったか)

全体平均より、10倍役に立ちます。

最小手②:解約の前兆指標をセットで持つ

解約は突然見えて、実は前兆があります。

・ログイン頻度
・利用機能数
・重要機能の利用回数
・問い合わせの増減

満足度と一緒に見ると、「どの層が危ないか」がわかります。

最小手③:新規の“期待値ズレ”を潰す

新規解約の多くは、満足度の低さというより

・想像と違った
・使いこなせなかった

です。

・LP/営業トークで期待値を揃える
・初回導入の成功体験を最速で作る

ここが効きます。



まとめ

・「満足度が高いのに解約が増える」という現象は起きる(これは本当
・でも「満足度を上げると解約が増える」とは言えない(これは嘘かもしれない
・正体は、セグメント混在+平均のワナ(シンプソンのパラドックス)+時間差の可能性
・解決策は「分けて見る」こと。新規と既存で打ち手は変わる

最後に一言。
平均は便利。でも、現場を消す。


次回予告:第8回「クーポンを配るほど、利益が下がる?」
割引が悪いのか、配る状況が悪いのか。疑似相関で裁きます。

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