代表値② 最頻値と3つの使い分け-【統計学をやさしく解説】
公開日
2025年10月8日
更新日
2025年11月11日
この記事の主な内容
はじめに:シリーズ第2回は「最頻値」
難しく思われる統計学をやさしく解説するシリーズ。代表値の第2回は「最頻値(さいひんち/モード)」です。前回は平均と中央値を紹介しましたが、現場では「いちばん多い値」が最も役に立つ場面があります。たとえばECの注文金額で“最もよく出る価格帯”や、アンケートで“最も多い回答”を把握したいとき——それが最頻値の出番です。
最頻値とは:いちばん多く現れた値
最頻値は、その名のとおりデータの中で最も頻繁に現れた値のこと。たとえば注文金額が 3,000円、3,000円、5,000円、8,000円、3,000円 なら最頻値は 3,000円です。平均や中央値が“真ん中”を示すのに対し、最頻値は“群れの中心(集まりやすいところ)”を教えてくれます。
ビジネスでの典型例
■ アンケートの選択肢(「満足」「どちらでもない」「不満」など)
■ アパレルのサイズ(Mが最多、など)
■ ECの注文金額帯(1,000〜2,000円が最も多い、など)

連続データの場合:階級を作って“最頻階級”を読む
売上や金額のように値が細かくバラける連続データでは、同じ金額がピッタリ何度も出るとは限りません。そのときは、範囲(階級)に分けて「どの階級に最も多くデータが入ったか」を見ます。これを 最頻階級 と呼びます。
例:顧客単価を 0〜1,000円/1,000〜2,000円/2,000〜3,000円… と区切ったとき、1,000〜2,000円にデータが最も多ければ、その階級が“最も選ばれている価格帯”です。

平均・中央値・最頻値のちがいを直感でつかむ
■ 平均:全体の合計を人数で割った“ならし”の値。総額感や予算感をつかむのに良い。
■ 中央値:並べたときの真ん中。外れ値に強く、実態に近い“標準的な人”を表しやすい。
■ 最頻値:最も多い(選ばれる)値。顧客が“どれを一番選んでいるか”を掴むのに最適。

ありがちな誤解と注意点
1. 最頻値は複数になることがある:
例)アンケートで「満足」「不満」が同数トップ → 最頻値が2つ(多峰性)。
2. 階級幅しだいで最頻階級が変わる:
区切り(ビン幅)を粗くすると“どこが最多か”が変わることがあります。目的に合わせた幅設定が大切。
3. 最頻値は必ずしも“典型値”とは限らない:
購買金額が広く分散している場合、最頻値は“よくある一例”でしかないことも。中央値や分布の形と合わせて判断しましょう。

シーン別:どれを使う?(使い分けミニガイド)
■ 価格戦略:最頻値(最頻階級)で“よく選ばれる価格帯”を確認 → 平均で売上総額の見込み、中央値で“標準客”を把握。
■ 人事・採用広報:実態感を出したいときは中央値。給与幅の多峰性(部署で山が2つ等)があるなら最頻値も併記。
■ UX/アンケート:選択肢の最頻値で“多数派の声”をつかみつつ、中央値で満足度スコアの中心も把握。

さっと計算するコツ(手順メモ)
1. データの種類を確認:カテゴリ/連続値?
2. 連続値なら階級を作る(等幅が基本、迷ったら5〜8区間)
3. 最も多い値(または階級)を探す → 最頻値(最頻階級)
4. 可能なら平均・中央値も併記して“三面図解”にする
まとめ:3つをそろえると、見える景色が変わる
平均は“ならし”、中央値は“真ん中”、最頻値は“よく出る”。同じデータでも、見る指標が違うと結論が変わります。実務では 「最頻値=顧客の選好」「中央値=現場の実感」「平均=経営の総額感」 と捉えると使い分けがスムーズです。迷ったら3つを並べてみる——それだけで意思決定の質が一段上がります。
次回以降は、代表値から一歩進んで、散らばり(分散や標準偏差)や分布の形の読み方にも踏み込みます。
<文/綱島佑介>





