「統計的問題解決の方法」-第1回:全体像をつかむ【統計学をやさしく解説】
公開日
2025年9月21日
更新日
2025年10月7日
この記事の主な内容
はじめに
「統計」と聞くと、数字やグラフが並んでいて難しそう…と感じる方は多いかと思います。特に数学が苦手な文系出身の方にとっては、「自分には無理」と思ってしまうかもしれません。ですが実際には、統計は日常やビジネスのあらゆる場面で役立つ“問題解決の道具”です。
今回、統計的問題解決について全5回の内容でお届けしていきます。第1回は、統計的問題解決の全体像をわかりやすく紹介し、難しい計算は一切なし、身近なビジネス例と図解で、「統計を学ぶと何ができるのか」をイメージできるようにしたいと思います。
統計的問題解決とは?
統計的問題解決とは、「データを使って課題を見つけ、改善策を導き出すプロセス」のことです。大きく分けると、以下の流れになります。
- 課題設定:何を解決したいのかを明確にする
- データ収集:必要なデータを集める
- 分析:データを整理・可視化して現状を理解する
- 結論と改善:打ち手を考え、次のアクションにつなげる
統計的問題解決の流れ(課題→収集→分析→結論)

この流れは、ビジネスでよく使われる「PDCAサイクル」にも通じています。違うのは、“感覚や経験”ではなく“データ”を根拠に判断する点です。
PDCAサイクルと統計の関係性

事例で考える:売上低迷の原因を探る
例えば、あるカフェで「売上が去年より10%落ちている」という課題があったとしましょう。ここでのプロセスを追ってみます。
- 課題設定:「なぜ売上が落ちたのか?」
- データ収集:来店客数、客単価、曜日別売上、天気データなどを集める
- 分析:
- 結論と改善:
・来店客数が減っているか?
・客単価が下がっているか?
・特定の曜日だけ売上が落ちているか?
・平日のランチタイムの客数が大きく減少 → 会社員向けメニューを見直す
・土日は客数横ばいだが単価が下がっている → セットメニューや限定商品を追加
カフェの売上推移グラフ(前年との比較)

こうして、データを根拠に「どこを改善すべきか」が明確になります。
なぜ「全体像」から学ぶのか?
多くの入門書は、いきなり「平均値」「分散」といった用語説明から始まります。しかし、それだと「何のために学んでいるのか」がわからず、学び始めた直後に挫折してしまうケースも少なくありません。数字や記号だけが先に出てくると、現実とのつながりが見えにくく、「自分にとって役立つのだろうか?」という疑問を持ちやすいのです。
そこでまずは、個々の概念に入る前に、「データを使って問題を解決する流れ」を全体として俯瞰することが重要です。全体像を理解することで、なぜ統計を学ぶ必要があるのか、そしてその学びが自分の仕事や日常にどうつながるのかが具体的にイメージできるようになります。これにより学ぶ意味が腑に落ち、モチベーションを維持しやすくなります。
まとめ
- 統計的問題解決は「課題設定→データ収集→分析→結論」の流れ
- ビジネスで使うPDCAと相性がよく、実務に直結する
- データを根拠にすることで、改善策が明確になりやすい
次回は、この流れの第一歩である「課題設定」にフォーカスします。数字やグラフが苦手でも安心してください。課題設定は“問いを立てる力”であり、むしろ文系の強みを活かせる部分です。
<文/綱島佑介>





