「この紐、ほどける?」-結び目理論への誘い-
公開日
2020年11月29日
更新日
2020年11月29日
こんにちは。和からの数学講師の岡本です。今回は比較的新しい数学の研究分野である「結び目理論」について簡単にお話しようと思います。個人的にも大好きな理論です。
早速ですが、次の問題を考えてみましょう。
意外と難しく、頭のいい運動になります。(解答は本ページに下に表記しています)
この記事の主な内容
1.結び目とは?
「結び目」と聞くと紐と紐を結んで「つなげる」イメージがありますが、数学の研究対象としての「結び目」は、絡まって閉じている(=輪として完結している)紐(「閉曲線」といいます)を指します。
2.結び目理論の問題
このような「結び目」は複雑に絡まっているように見えて、実はほどくと簡単な結び目であったり、想定していた結び目と「異なる」ものであったり、「結び目が同じかどうかの判定」は非常に難しい問題です。
例えば、実際にほどいてみて同じ形にできるのであれば、「同じである」と判断できますが、「同じでない」ことの証明は難しいのです!
たとえば、一見して次の結び目はこれ以上ほどけず、輪にはならない、つまり、右の結び目と左の結び目は「同じでない」ように思えますが、「証明」となると難しくなってきます。ここで「結び目理論」の出番となります!
3.結び目理論の威力
結び目理論を使った結び目の判定方法として「多項式」や「数値」を使った古典的な方法があります。
つまり、結び目の絡まり具合の情報から多項式や数値といった「量」を対応させ、2つの「量」が「異なる」ものであれば、元の結び目も「異なる」ものであることが証明できます!
ただし、どんな「量」でもいいわけではありません。例えば、結び目を少しねじったもの(連続的に変形したもの)と最初の結び目とで、対応する「量」が違ってしまうといけません。結び目にはいくつかの基本的な「変形(ライデマイスター変形)」があり、これらの変形に対し「変わらない量」があれば便利です。このような「変わらない量」のことを総じて「不変量」と呼びます。有名な不変量としてAlexander多項式、Jones多項式、HOMFLY多項式、最小交点数、橋指数など、大量にあります。
4.さいごに
近年では、これらの不変量をまとめる理論や生物学(DNA関係)、化学(原子の結合構造)への応用など、様々な発展が見られます。また、結び目はデザインとしても最近では注目されており、ファッションデザイナーのエマ理永さんによる、結び目をモチーフにしたドレスというものもあります。美しいですね!
https://www.emarie-weddingdress.com/works_and_philosophy/topology_topological_form.html
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この機会に奥深い結び目理論の世界へ足を踏み入れてはいかがでしょう!書籍に関しては、結び目理論の基本的な内容から応用までわかり易くまとまった「結び目理論とその応用」がオススメです。
また、不変量に関する最先端の話題を解説した「結び目の不変量」があります。この本のベースとなった(英語版)同じく大槻先生の「QUANTUM INVARIANTS」はもはやバイブルと言っても過言ではありません。
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【問題】の答え:②, ③, ⑤, ⑥
<文/岡本健太郎>