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教養としての力学-第5回:なんとなく知ってる再生可能エネルギーを物理で説明する【高校物理をやさしく解説】

公開日

2026年5月9日

更新日

2026年4月13日

「再生可能エネルギーへの転換が急務だ」「太陽光発電の普及率が過去最高を更新」といったニュースを、毎日のように目にするようになりました。

ビジネスの場でもESG投資やカーボンニュートラルといった文脈で話題になり、「再生可能エネルギーくらいは知っておかないと」と感じている方も多いのではないでしょうか。

でも正直なところ、「なんとなくエコなんでしょ」「太陽光や風力で発電するやつ」くらいの理解で止まっていませんか?

今回は物理の「エネルギー」と「仕事」という概念を使って、再生可能エネルギーの仕組みをしっかり説明します。


エネルギーとは何か?

物理における「エネルギー」とは、何かを動かしたり、変化させたりする能力のことです。

日常生活でも「エネルギーが湧いてきた」「エネルギー不足」という言葉を使いますが、物理のエネルギーも本質的には同じです。「何かをする力の源」がエネルギーです。

エネルギーにはさまざまな形があります。動いている物体が持つ「運動エネルギー」、高い場所にある物体が持つ「位置エネルギー」、熱としての「熱エネルギー」、光としての「光エネルギー」、電気としての「電気エネルギー」などです。

【専門用語の解説】エネルギー(energy)
「仕事をする能力」のことです。
単位はJ(ジュール)で表します。
エネルギーは形を変えても、総量は変わらないという「エネルギー保存の法則」が成り立ちます。これについては後ほど詳しく説明します。

物理の「仕事」は、日常の「仕事」と全然違う

「仕事」という言葉、日常では「頑張った」「疲れた」という意味で使いますよね。しかし物理の「仕事」はまったく異なる意味を持ちます。

物理における仕事とは、力を加えて物体を動かしたときに発生するものです。

【専門用語の解説】仕事(しごと)
力を加えた方向に物体が動いたとき、「仕事をした」といいます。
仕事の大きさは「加えた力の大きさ」と「動いた距離」をかけ合わせた値です。
単位はエネルギーと同じJ(ジュール)で表します。

具体的な例で考えてみましょう。

床に置いた重い荷物を持ち上げる場面を想像してください。上向きに力を加えて、荷物が上に動く。力の方向と動きの方向が一致しているので、これは物理的な仕事が発生しています。

さらにその荷物を持ったまま階段を上る場合も同じです。重いものを持って、より高い場所まで移動する。持ち上げる力が大きいほど、上る距離が長いほど、仕事の量は大きくなります。

つまり物理の仕事は「どれだけ重いものを、どれだけ遠くまで動かしたか」で決まります。重いものを動かすほど、遠くまで動かすほど、大きな仕事をしたことになるのです。

そしてここが重要なポイントです。仕事をするにはエネルギーが必要であり、仕事をすることでエネルギーが移動します。荷物を持ち上げるとき、あなたの体のエネルギーが荷物の位置エネルギーに変換されているのです。

【図1】仕事とエネルギー

太陽光・風力発電はエネルギーの「変換」である

ここまでエネルギーと仕事の基本を押さえました。これを踏まえて、再生可能エネルギーの話に入りましょう。

太陽光発電も風力発電も、本質的にはエネルギーを別の形に変換する装置です。

太陽光発電の場合

太陽から降り注ぐ光は「光エネルギー」を持っています。太陽光パネルはこの光エネルギーを受け取り、「電気エネルギー」に変換します。

この変換を行うのが太陽電池(ソーラーセル)と呼ばれる素子です。光が当たると電気が流れるという性質を利用しています。「光エネルギーを電気エネルギーに変える」という大枠は、物理のエネルギー概念で理解できます。

風力発電の場合

風は空気が動いている状態です。動いているものは運動エネルギーを持っています。風力発電は、この風の「運動エネルギー」を受け取り、プロペラを回転させ、「電気エネルギー」に変換します。

風が強いほど運動エネルギーが大きく、より多くの電気を生み出せます。第1回で学んだ「エネルギーは速さの2乗に比例する」という話を覚えていますか。風速が2倍になると、風の持つ運動エネルギーは4倍になります。だから風力発電は風の強い場所に設置することが非常に重要なのです。

【図2】エネルギー変換の流れ

エネルギー保存の法則:エネルギーは消えない、形が変わるだけ

ここで物理の重要な法則を紹介します。

エネルギーはなくなることはなく、形を変えて保存され続ける。

これを「エネルギー保存の法則」といいます。

太陽光発電を例にすると、太陽の光エネルギーは太陽光パネルで電気エネルギーに変わり、その電気エネルギーはエアコンで熱エネルギーに変わり、照明で光エネルギーに変わります。形は変わっても、エネルギーの総量は変わりません。

【専門用語の解説】エネルギー保存の法則
エネルギーは形を変えても、総量は常に一定に保たれるという法則です。
「エネルギーが消える」ことはなく、必ず別の形のエネルギーに変換されます。
物理学の中でも最も基本的かつ重要な法則の一つです。

では「再生可能」とはどういう意味でしょうか。石炭や石油などの化石燃料は、燃やすと二酸化炭素になり、再び燃料として使うことができません。一方、太陽の光や風は自然界で絶えず補充され続けます。エネルギー源が「再生」され続けるため、再生可能エネルギーと呼ばれているのです。

まとめ:エネルギーの「変換」という視点で世界を見る

今回学んだことを整理しましょう。

物理の「エネルギー」とは何かを動かす能力のことで、さまざまな形に変換されながら保存され続けます。物理の「仕事」は力を加えて物体を動かしたときに発生するもので、重いものを遠くまで動かすほど大きくなります。そして仕事をすることでエネルギーが移動します。

太陽光発電も風力発電も、自然界のエネルギーを電気エネルギーに変換する装置です。「再生可能エネルギーへの転換」というニュースを見るとき、今日からは「あれはエネルギーの変換効率と供給の安定性の話なんだ」と少し違う視点で見られるはずです。


次回予告

第6回はいよいよ力学編の最終回、「円運動と万有引力」です。GPSはなぜあれほど正確に現在地を測れるのか。人工衛星の軌道を支える万有引力の法則を一緒に覗いてみましょう。

<文/岡崎 凌>

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