教養としての力学-第5回:なんとなく知ってる再生可能エネルギーを物理で説明する【高校物理をやさしく解説】
公開日
2026年5月9日
更新日
2026年9月18日
「再生可能エネルギーへの転換が急務だ」「太陽光発電の普及率が過去最高を更新」といったニュースを、毎日のように目にするようになりました。
企業の環境対策やエネルギー調達でも、太陽光発電や風力発電が話題になります。
では、太陽の光や風は、どのように電気に変わるのでしょうか。
今回は物理の「エネルギー」と「仕事」という概念を使って、再生可能エネルギーの仕組みを説明します。
この記事の主な内容
エネルギーとは何か?
物理における「エネルギー」とは、何かを動かしたり、変化させたりする能力のことです。
日常では気力や体力を「エネルギー」と呼ぶこともあります。ここでは、ジュール(J)という単位で表す物理の量として説明します。
エネルギーにはさまざまな形があります。動いている物体が持つ「運動エネルギー」、高い場所にある物体が持つ「位置エネルギー」、熱としての「熱エネルギー」、光としての「光エネルギー」、電気としての「電気エネルギー」などです。
【専門用語の解説】エネルギー(energy)
「仕事をする能力」のことです。
単位はJ(ジュール)で表します。
エネルギーは形を変えても、総量は変わらないという「エネルギー保存の法則」が成り立ちます。これについては後ほど詳しく説明します。
物理でいう「仕事」とは
日常では職業や作業を「仕事」と呼びます。物理では、力が物体を動かすことで伝えるエネルギーを指します。
物理における仕事とは、力を加えて物体を動かしたときに発生するものです。
【専門用語の解説】仕事(しごと)
力を加えた方向に物体が動いたとき、「仕事をした」といいます。
一定の力が移動方向と同じ向きに働く場合、仕事は「力の大きさ×移動距離」で求めます。
単位はエネルギーと同じJ(ジュール)で表します。
具体的な例で考えてみましょう。
床に置いた重い荷物を持ち上げる場面を想像してください。上向きに力を加えて、荷物が上に動く。力の方向と動きの方向が一致しているので、これは物理的な仕事が発生しています。
さらにその荷物を持ったまま階段を上る場合も同じです。重いものを持って、より高い場所まで移動する。持ち上げる力が大きいほど、上る距離が長いほど、仕事の量は大きくなります。
荷物を一定の速さで持ち上げる場合、持ち上げる人がする仕事は荷物の重力の大きさ×持ち上げた高さです。仕事を求めるときは、重さだけでなく、どの力がどの方向に働いているかを確認します。
仕事をするにはエネルギーが必要であり、仕事をすることでエネルギーが移動します。荷物を持ち上げるとき、あなたの体のエネルギーが荷物の位置エネルギーに変換されているのです。

【図1】仕事とエネルギー
太陽光・風力発電はエネルギーの「変換」である
ここまでエネルギーと仕事の基本を押さえました。これを踏まえて、再生可能エネルギーの話に入りましょう。
太陽光発電も風力発電も、エネルギーを別の形に変換する装置です。
太陽光発電の場合
太陽から降り注ぐ光は「光エネルギー」を持っています。太陽光パネルはこの光エネルギーを受け取り、「電気エネルギー」に変換します。
この変換を行うのが太陽電池(ソーラーセル)と呼ばれる素子です。光が当たると電気が流れるという性質を利用しています。「光エネルギーを電気エネルギーに変える」という大枠は、物理のエネルギー概念で理解できます。
風力発電の場合
風は空気が動いている状態です。動いているものは運動エネルギーを持っています。風力発電は、この風の「運動エネルギー」を受け取り、プロペラを回転させ、「電気エネルギー」に変換します。
同じ質量の空気なら、風速が2倍になると運動エネルギーは4倍です。ただし、風力発電では、風が速いほど同じ時間に風車を通る空気の量も増えます。空気の密度と風車の受ける面積が一定なら、風が運ぶ単位時間あたりのエネルギーは風速の3乗に比例します。実際の発電量は、風車の効率や定格出力、運転できる風速の範囲にも左右されます。詳しくは米国エネルギー省の風力発電の解説(英語)も参照してください。

【図2】エネルギー変換の流れ
エネルギー保存の法則:エネルギーは消えない、形が変わるだけ
ここで物理の重要な法則を紹介します。
エネルギーはなくなることはなく、形を変えて保存され続ける。
これを「エネルギー保存の法則」といいます。
太陽光発電を例にすると、太陽の光エネルギーは太陽光パネルで電気エネルギーに変わり、その電気エネルギーはエアコンで熱エネルギーに変わり、照明で光エネルギーに変わります。形は変わっても、エネルギーの総量は変わりません。
【専門用語の解説】エネルギー保存の法則
エネルギーは形を変えても、総量は常に一定に保たれるという法則です。
「エネルギーが消える」ことはなく、必ず別の形のエネルギーに変換されます。
物理学の中でも最も基本的かつ重要な法則の一つです。
では「再生可能」とはどういう意味でしょうか。石炭や石油などの化石燃料は、燃やすと二酸化炭素になり、再び燃料として使うことができません。一方、太陽の光や風は自然界で絶えず補充され続けます。エネルギー源が「再生」され続けるため、再生可能エネルギーと呼ばれているのです。
まとめ:太陽光と風力が電気に変わる仕組み
今回学んだことを整理しましょう。
物理の「エネルギー」とは何かを動かす能力のことで、さまざまな形に変換されながら保存され続けます。一定の力が移動方向と同じ向きに働く場合、物理の「仕事」は力の大きさと移動距離の積で求めます。そして仕事をすることでエネルギーが移動します。
太陽光発電は光エネルギーを、風力発電は風の運動エネルギーを、電気エネルギーに変えます。発電の仕組みを考えるときは、何のエネルギーを電気に変えているのかに注目すると整理しやすくなります。
次回予告
第6回は力学編の最終回、「円運動と万有引力」です。人工衛星が地球の周りを回り続ける理由を、万有引力と円運動から説明します。
<文/岡崎 凌>
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