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データ尺度のキホン-第4回:4つの尺度を使いこなす【統計学をやさしく解説】

公開日

2025年10月28日

更新日

2025年12月4日


はじめに


第1回から第3回までで、名義・順序・間隔・比例という4つの測定尺度を順に学んできました。それぞれの尺度には「扱えるデータの性質」と「できる分析の範囲」が異なり、これを理解していないと、数字の解釈や分析結果を誤る危険があります。

最終回となる今回は、これまで学んだ4つの尺度をまとめ、どのデータにどんな分析手法を使うべきかを整理していきます。社会人が実務でデータを扱う際に役立つ「判断の基準」として使えるよう、具体例も交えて解説します。


1. 4つの尺度の関係をもう一度整理

4つの尺度は、情報量が少ないものから多いものへと順に並べると、以下のようになります。

名義尺度 → 順序尺度 → 間隔尺度 → 比例尺度

この順序は「情報の豊かさ」を示します。名義尺度は単なる分類情報ですが、比例尺度は差も比も計算できる“最も豊かなデータ”です。


2. 尺度ごとの特徴と分析での使い分け

尺度 データの意味 できる計算 主な分析手法 代表的な例
名義尺度 分類(カテゴリー) 比率・最頻値 クロス集計、構成比 性別、部署、地域
順序尺度 順位・ランク 中央値・順位相関 順位比較、傾向分析 満足度、評価ランク
間隔尺度 差に意味あり 平均・差 回帰分析、相関分析 気温、日付、時間(時計)
比例尺度 差も比も意味あり 平均・比・比率 回帰分析、変化率、比率分析 売上、距離、体重

ポイント:
上の尺度ほど単純で、下の尺度ほど高度な分析が可能です。


3. ビジネス現場での“尺度の使い分け”実例

例1:顧客アンケート分析
・設問「あなたの性別を教えてください」→ 名義尺度(分類)
・設問「当社のサービスにどの程度満足していますか?」→ 順序尺度(順位)
・回答平均を取るのは“便宜的な近似”であり、実際には分布や中央値を見るのが正確。

例2:売上と気温の関係分析
・売上は比例尺度(0が絶対的な基準)
・気温は間隔尺度(0℃は基準点)
→ この場合、「差」で関連を分析するのはOKだが、「比」で比較するのは不適切。

例3:従業員データ分析
・部署や役職:名義尺度
・勤続年数や年齢:比例尺度
→ 名義データは集計・割合、比例データは平均・比率で分析できる。

各シーンごとのデータと対応する尺度

データの種類・シーン
対応する尺度

顧客アンケート
性別・満足度など
名義尺度(分類)
順序尺度(順位)

売上と気温の関係分析
売上高・気温(℃)
売上:比例尺度
気温:間隔尺度

従業員データ分析
部署・勤続年数・年齢
部署:名義尺度
勤続年数・年齢:比例尺度

アンケート結果の集計
5段階評価・自由回答
評価:順序尺度
自由回答:名義尺度

各データには対応する尺度があり、「どの尺度で扱うか」によって
分析の方法と結果の意味が変わります。


4. よくある分析ミスとその防止策

誤りの例:
🚫 「部署」データの平均値を求めてしまう(名義尺度を数量化)
🚫 5段階満足度を“比”で比較(順序尺度を比例尺度扱い)
🚫 気温を“2倍暖かい”などと表現(間隔尺度を誤解)

防止策:
✅ データ収集時に「これは何の尺度か?」を明示しておく。
✅ ExcelやBIツールの自動計算結果を鵜呑みにしない。
✅ 分析前に、尺度ごとの扱いをチームで共有する。

誤った分析と正しい分析の対比

❌ 誤った分析

・部署データの平均値を取ってしまう(名義尺度の誤用)
・5段階満足度を“比”で比較する(順序尺度の誤用)
・気温を“2倍暖かい”と表現する(間隔尺度の誤解)

→ 尺度を意識しないまま計算・比較を行うと、誤った結論につながります。

⭕ 正しい扱い方

・名義尺度は「割合」や「構成比」で比較
・順序尺度は「中央値」や「傾向」で比較
・間隔尺度は「差」を比較、比例尺度は「比」も使用可能

→ データの尺度に合わせて適切な統計処理を選ぶことで、誤解のない分析ができます。

このように、「誤った使い方」と「正しい扱い方」を明確に意識するだけで、
データ分析の精度と説得力が大きく向上します。



5. まとめ:尺度を意識するだけで分析が変わる

4つの尺度を正しく理解すれば、データの扱い方・分析方法・結論の精度が一気に向上します。

観点 誤った扱い 正しい扱い
名義尺度 平均を出す 割合で比較
順序尺度 比で比較 中央値・傾向で比較
間隔尺度 “2倍”など比を取る 差を分析
比例尺度 問題なし 比・変化率で分析

総まとめポイント:
・尺度を見極める=分析の“前提条件”を整えること。
・「どの尺度か」を意識すれば、誤った結論を防げる。
・データ分析は“数学”ではなく“文脈の理解”から始まる。


おわりに

4回にわたって解説してきたデータ尺度シリーズも今回で完結です。名義・順序・間隔・比例の4つを正しく区別し、データの“意味”を理解することができれば、あなたの分析力は確実にステップアップします。

次のステップは、これらの尺度を踏まえて「どんな統計手法を選ぶか」を学ぶこと。相関分析・回帰分析・分散分析など、尺度に応じた手法を選べるようになれば、データの見方がさらに深まります。

今後も「統計学をやさしく解説」シリーズで、あなたのデータ理解をサポートしていきます。

<文/綱島佑介>

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