マスログ

郵便局が多いほどコロナ患者も多い?—“交絡”で読み解くデータの罠

公開日

2025年9月30日

更新日

2025年9月24日

◎完全版を動画視聴サービス「ハビット」で視聴できます。

※無料会員登録をしていただけますとご覧になれます。

1. 導入:数字は私たちをしばしば勘違いさせる

グラフや表で「Aが増えるとBも増える」という並びを見ると、私たちはつい因果関係を思い描きます。しかし、数字が並んでいるだけでは、そこに原因と結果があるとは限りません。本記事のテーマは、その思い込みを優しくほぐすキーワード—交絡(confounding)です。

はじめに取り上げるのは、「郵便局の数が多い都道府県ほど、新型コロナウイルス患者数も多い」という一見すると奇妙な観察。直感的には「郵便局が多いから感染が広がるのか?」と思ってしまいがちですが、ここで立ち止まって考えたいのが交絡という視点です。

メッセージ:相関は“関係があるように見える”だけ。因果かどうかは、別の筋道で確かめる必要があります。

2. 交絡とは何か(やさしい定義)

交絡とは、2つの変数(ここでは郵便局の数と患者数)が連動して見えるとき、実は共通の第三の要因が両方に影響していることで相関が生じる現象を指します。つまり、AとBが一緒に動いて見えても、A→B(またはB→A)の直接的な因果があるとは限らない、ということです。

  • 相関:AとBが一緒に増減しているように見える関係。
  • 因果:Aが変わると本当にBが変わる、という原因と結果の関係。
  • 交絡:AとBの背後にあるC(第三の要因)が、両方を動かしているために相関が生まれる状態。

この違いを押さえておくと、データを見るときの“足場”が安定します。

3. 例で理解する:郵便局の数と新型コロナ患者数

この例で第三の要因としてまず疑いたいのは、人口規模です。一般に、人口が多い地域ほど郵便局の数は増えますし、患者数の“絶対数”も増えやすくなります。すると、郵便局の数と患者数の間に相関が見えてしまうのは自然なことです。

もう少し視野を広げると、以下のような要因も“共通の第三の要因”として働き得ます。

  • 都市化の度合い:人の移動量や接触機会が多い地域ほど患者数は増えやすく、同時にサービス拠点(郵便局)も多くなりがち。
  • 年齢構成・世帯構成:地域の人口構造の違いが、医療受診行動や検査受検などに影響。
  • 検査・報告体制:検査が受けやすい地域ほど把握される患者数は増え、行政・インフラ拠点の密度とも関係している可能性。

ここで大切なのは、「因果を跳躍しない」ことです。たとえば確かめ方の一例として、

  • “絶対数”ではなく人口当たりの率(例:10万人あたり件数)で比較する。
  • 地域を層別化して(人口規模や都市度でグループ分けして)同程度の条件同士で比べる。
  • 時系列で見て、先に動いているのはどちらかを検討する。

ポイント:交絡は“見かけの相関”を作ります。まずは第三の要因を書き出し、指標の定義(率か絶対数か)を点検しましょう。

4. 交絡が潜みやすいシーン

交絡は、私たちが日常で扱う多くのデータに潜みます。たとえば次のような文脈では、特に注意が必要です。

  • 季節性のある現象:季節そのものが第三の要因になり、複数の事象を同時に動かす。
  • 地域差(社会経済要因):所得水準、人口密度、交通利便性、医療資源などが複数の変数に共通して影響。
  • 年齢・性別などの属性差:属性の分布が違う集団同士をそのまま比べると、見かけの相関が生じやすい。
  • 測定の仕方や定義の違い:検査・報告・集計プロセスの差が、結果変数と説明変数の双方に影響することがある。

こうした“交絡が起きやすい地形”を知っておくと、数字の読み違いをグッと減らせます。


5. まとめ:数字を疑う勇気と、学び続ける姿勢

本記事では、交絡というレンズを使って「郵便局の数とコロナ患者数」という例を眺め直しました。伝えたかったのは、

  1. 相関は因果の証拠ではないこと。
  2. 背後にある第三の要因を想像し、指標の定義や比較方法を工夫すること。
  3. ひと目で“それっぽい”グラフほど慎重に読むこと。

この先の解釈のコツや、より丁寧な考え方のヒントに関心があれば、気になる続きは動画へ。本記事では触れなかった部分もあるため、理解を深める入り口としてぜひご活用ください。

動画視聴はこちら
データのウソを暴く考え方-因果推論とは?

youtube short ver.

新着記事

同じカテゴリーの新着記事

同じカテゴリーの人気記事

CONTACTお問い合わせ

個別講義や集団講義、また法人・団体向けの研修を行うスペース紹介です。遠人に在住の方や自宅で講義を受けたい方はオンライン講座をご用意しております。よくある質問はこちら