ベクトルの外積とは?何に使われる概念なのか分かりやすく解説
公開日
2021年2月28日
更新日
2021年2月28日
和からでは大人の方向けに数学や統計学の授業を行なっていますが、勉強されている方から「数学って役に立つの?」というご質問をいただきます。
先日授業を行なった際に、「ベクトルを勉強していると”外積”なるものが出てきたのですが、計算方法がよく分からない上に、何のためにこんな計算をしているのかがさっぱりなんですが…」とおっしゃる方がいらっしゃいました。
ちなみにベクトルの外積について教科書を開いて調べてみると、例えばこんな説明が書いてあります。
これだけ見ても、なぜこのような計算をしているのか、外積とは結局何のことなのか聞きたくなる気持ちは非常に分かります。分からないことを大切に、和から。今回はベクトルの外積についてみていきましょう。
この記事の主な内容
ベクトルの「外積」とは?
「外積」という言葉は英語の「cross product」の訳語です。ほぼ直訳ですね。また、「a×b」と書くからには掛け算かなと予想して定義を見てみると、掛けたり引いたりと複雑な計算をしています。名前や定義からは、何を計算しているのか、どんな計算をするために使うものなのかが見えてきません。そこで、どういったことに利用されるのかを見てみましょう。
何の役に立つのか?
皆さんは「フレミングの法則」をご存知でしょうか。高校で下記のような指の形を覚えた方もおられるのではと思います。
この法則を、簡潔にまとめると「磁場中に流れる電流があると、力が生じる」法則のことです。この法則を応用したものに、モーターがあります。ドライヤーはモーターによってファンが回転して風を送る仕組みになっている他、自動車やゲーム機など私たちの生活の至るところにモーターが利用されています。
フレミングの法則を見て、なぜ電流や磁場の向きとは関係ない方向に力が働くのか、素直に疑問に思った方は、素晴らしい着眼点です。なぜなら普通は力というとまっすぐ伝わるからです。模様替えのために机をまっすぐ押したら前に進みますし、冷蔵庫の近くにマグネットを近づけたらまっすぐ冷蔵庫に向かって引き寄せられます。それでは電流と磁場によって力が発生する向きはどうかというと、実は外積によって計算することができます!
実際に計算してみましょう。計算が苦手な方は読み飛ばしていただいて大丈夫です。私たちのいる3次元の空間において、x軸方向に電流が流れており、y軸方向に磁場が働いているとします。そのとき発生する力は、電流と磁場の外積として計算することができます。
これを数式ではなく図で書き表すと、下記のようになります。電流と磁場の向きに対して、垂直な方向に力が働いていることが分かります。これが「フレミングの法則」なのです。
外積はこの他にも、コマや台風のような回転する物体に働く力の計算などにも利用されます。興味が湧いた方は他にも外積が身近に応用されている例を調べてみてください。
終わりに
いかがだったでしょうか。ベクトルの外積に限らず、多くの数学の概念は現実に利活用されています。「何の役に立っているのか」と思ったことは、ぜひ応用例を調べてみたり詳しい人に聞いてみたりすると、より楽しく学ぶことができるでしょう。
和からでは各分野の数学に長けた講師を揃えて皆様の学びをサポート致します。資格習得のために数学を急いで身に付けたい、学生の頃意味がよく分からなかった数学を学び直したい、という方はぜひ一度無料学習相談にお越しください。
それではまた。
<文/岡崎 凌>
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