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データの関係を読み解こう-第3回:線でつなげば“未来”が見える【統計学をやさしく解説】

公開日

2025年11月4日

更新日

2025年10月29日

はじめに:数字の関係を“予測”に変える

前回の第2回では、2つのデータの関係を「相関係数」という数値で測る方法を学びました。今回はその一歩先、回帰分析(かいきぶんせき)について解説します。回帰分析とは、2つの変数の関係を「線(数式)」で表し、未来を予測するための手法です。

例えば、広告費と売上の関係がわかっていれば、「広告費を10万円増やしたら、売上はいくら上がるか?」を予測できます。まさに“データで未来を読む”ための第一歩です。

回帰分析とは?

回帰分析とは、「ある数値(説明変数)から別の数値(目的変数)を予測する」ための統計手法です。もっとシンプルに言うと、散布図に引いた1本の線(回帰直線)で「全体の傾向」を数式に置き換えることです。

Y = aX + b

Y: 予測したい数値(例:売上)
X: 説明する数値(例:広告費)
a: 傾き(Xが1増えるとYがどれだけ増えるか)
b: 切片(X=0のときのYの値)

この「a」と「b」を求めることで、Xの値からYを予測できるようになります。

散布図に“線”を引いてみよう(Excel)

1)散布図を作成
2)グラフ上のデータ点を右クリック → 「近似曲線の追加」
3)「線形近似」を選択し、「グラフに数式を表示」「R²値を表示」にチェック

すると、グラフに回帰式(Y = aX + b)と「R²(決定係数)」が表示されます。R²は0〜1の範囲で、1に近いほど当てはまり(予測精度)が高いことを意味します。

例:広告費から売上を予測する

売上 = 1.2 × 広告費 + 30

この式は、「広告費を1万円増やすと、売上は平均して1.2万円増える」という意味になります。

・広告費が50万円 → 1.2×50 + 30 = 90万円
・広告費が70万円 → 1.2×70 + 30 = 114万円

このように、回帰式を使えば「もし◯◯だったらどうなるか?」を数値でシミュレーションできます。

決定係数(R²)の意味

R²(アール二乗)は、「この線がどれくらいデータにフィットしているか」を表す指標です。

・R² = 1.0:完全に一直線(完璧)
・R² = 0.8:8割程度の説明力
・R² = 0.3:関係は弱め(他の要因も影響)

R²を見れば、回帰式の“信頼度”をざっくり把握できます。ビジネスでは、0.7以上なら「かなり良い」と考えてよいでしょう。

ビジネスでの活用例

広告効果測定:広告費と売上の回帰分析を行うことで、広告投資がどの程度売上に寄与しているかを数値で明確化できます。単なる感覚的判断ではなく、「広告費を◯万円増やせば平均で売上が◯万円伸びる」という具体的な根拠を持つことが可能です。

人事・教育:研修時間とパフォーマンススコアの関係を線形回帰で分析すれば、どの程度の学習量が成果向上につながるかを定量的に把握できます。人材育成のROI(投資対効果)を測定し、研修の最適化にも役立ちます。

営業分析:訪問回数や商談数と契約金額の関係をモデル化し、「営業活動量が売上にどの程度影響するか」を把握できます。これにより、営業方針の改善や重点顧客戦略を立てる材料になります。

製造現場:作業時間や機械稼働率と不良率の関係を回帰式で捉えれば、どの工程で品質に影響が出やすいかを特定できます。生産効率の向上や不良削減の施策を立てる根拠データとして有効です。

経営予測:売上を説明する複数の要因(広告費、従業員数、顧客数、在庫量など)を回帰式にまとめることで、経営全体のパフォーマンスを予測できます。たとえば、「従業員数が10%増加すると売上は平均でどれくらい伸びるか」といったシミュレーションも可能です。

これらの活用法に共通して言えるのは、「データの関係を定量的に可視化することで、意思決定の精度を上げる」ことです。回帰分析を使えば、経験や勘に頼らず、数字で未来を語れるようになります。

まとめ

— 回帰分析は、データの関係を「線」で表して未来を予測する手法。

— 回帰式(Y = aX + b)を使えば、Xの値からYを予測できる。

— 決定係数(R²)は、どれくらいその線がデータに当てはまっているかを示す。

— ビジネスでは、売上予測や人事評価、営業戦略など多方面で活用可能。

— 「関係を見つける」から「結果を予測する」へ——これが相関から回帰へのステップアップです。

3回にわたって「散布図」「相関」「回帰分析」と、データの関係を読み解く基本をやさしく解説してきました。

ここまで学んだ内容を使えば、「データのつながりを目で見て」「関係を数字で測り」「未来を予測する」まで、一連の流れを自分の手でできるようになります。

ビジネスでも日常でも、データを“読む力”は確実にあなたの判断を支える武器になります。ぜひ実際のデータで試してみてください。

ここからがスタートです。数字の向こうにある「意味」を読み解く力を、あなた自身の手で磨いていきましょう。

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