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マツナカクエスト”キラキラ数学を探せ!” -第2話-

公開日

2024年11月6日

更新日

2025年1月18日

松中宏樹の「キラキラ数学」
第2話:カントールの対角線論法と無限の不思議な世界

こんにちは!数学を愛する松中宏樹です。
本シリーズでは、日常ではなかなか触れることのない数学の魅力をわかりやすくお届けしています。
今回のテーマは「カントールの対角線論法」です。この手法を通じて、無限の世界がいかに深く、そして驚きに満ちたものであるかを感じていただければと思います。
「実数の集合」と「自然数の集合」の大きさを比べると、果たしてどちらが大きいのか?今回は、この不思議な問いに迫ります。

自然数と偶数の集合:どちらが多い?

まずは身近な例から始めましょう。自然数と偶数、どちらの方が多いでしょうか?
自然数は、小学校の算数で習うように「1, 2, 3, 4, 5…」と続く数です。一方、偶数は「2, 4, 6, 8…」と2の倍数で構成されます。小学生にこの問いを投げかければ、多くの子どもが「自然数の方が多い」と答えるでしょう。
しかし、数学の視点から見ると、実は「自然数と偶数の数は同じ」と言えるのです。どういうことなのでしょうか?

1対1対応で比較する

自然数と偶数が「同じ大きさ」であることを示すためには、「1対1対応」の考え方を使います。これを具体的に説明してみましょう。
自然数の「1」に偶数の「2」を対応させます。
自然数の「2」に偶数の「4」を対応させます。
自然数の「3」に偶数の「6」を対応させます。
このように、それぞれの自然数に対して対応する偶数を決めていけば、どちらも余りが出ることなく対応付けることができます。この対応が完全に成立しているため、数学的には「自然数と偶数の集合は同じ大きさ」と結論づけられるのです。

整数と自然数の集合も同じ大きさ?

次に、自然数の集合と整数の集合を比べてみましょう。整数は、自然数に「0」と「負の数」を加えたもので、「…, -3, -2, -1, 0, 1, 2, 3, …」と続く数です。直感的には、負の数が加わる分だけ、整数の方が自然数より多いように思えます。しかし、数学的には「自然数と整数も同じ大きさ」だとわかります。

整数を1対1対応させる方法

整数と自然数が1対1対応するように並べるには、次のように順番を決めます。
自然数の「1」に整数の「0」を対応させます。
自然数の「2」に整数の「1」を対応させ、自然数の「3」に整数の「-1」を対応させます。
自然数の「4」に整数の「2」を対応させ、自然数の「5」に整数の「-2」を対応させます。
このように、「0, 1, -1, 2, -2, 3, -3, …」と並べることで、どの自然数にも必ず対応する整数を決めることができます。この1対1対応によって、整数の集合と自然数の集合は同じ大きさだと考えられるのです。

有理数と自然数も同じ大きさ?

有理数とは、「整数分の整数」で表せる数のことです。たとえば「1/2」「7/4」「-3/5」などです。有理数は無限にありますが、これも自然数と同じ大きさなのでしょうか?
一見すると、有理数の方が多いように感じるかもしれません。実際、数直線上に有理数を描けば、自然数よりもはるかに多くの数が存在するように見えます。しかし、数学では有理数も自然数と同じ大きさだと結論づけられます。

有理数を1列に並べる方法

有理数を1列に並べるには次の手順を使います。
有理数を「分子」と「分母」の形で表します。
横軸に分母を、縦軸に分子を設定し、座標平面上に有理数を配置します。
分母や分子が小さい順に斜めに進むようにして、有理数を1列に並べます。
同じ有理数(例えば1/2と2/4)は重複を取り除きながら進めることで、すべての有理数を1列に並べることが可能です。この方法を用いることで、有理数の集合も自然数の集合と1対1対応できることが証明されます。

実数の集合:自然数よりも大きい?

ここでさらに不思議な問いに進みます。実数(小数を含むすべての数)は、自然数や有理数と同じ大きさなのでしょうか?
実は、実数の集合は自然数や有理数の集合よりも「大きい」のです。これを証明するために登場するのが、カントールの対角線論法です。

カントールの対角線論法

カントールの対角線論法を簡単に説明すると、次のようになります。

0以上1以下の実数をすべてリストに並べたと仮定します。
(例)
0.12345…
0.67890…
0.54321…

このリストに「含まれない実数」を作ります。
リストの1番目の数の1桁目を変更します(例えば1なら2に)。
リストの2番目の数の2桁目を変更します。

この手順を繰り返すことで、どのリストにも現れない実数が作られます。
この手法により、「どんな方法で実数を並べても、リストに含まれない実数が存在する」という矛盾が導き出されます。この矛盾から、実数は1列に並べることができない(つまり、自然数や有理数と1対1対応できない)ことが証明されるのです。

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