DCF法とは【経済用語をやさしく解説】
公開日
2022年12月12日
更新日
2024年7月29日
この記事の主な内容
DCF法とは
DCF法(Discounted Cash Flow)は期待される将来のキャッシュフロー(損益)を用いて投資価値・企業価値を算出するバリュエーションの方法です。言い換えると、DCF法では投資先が将来どれくらいの収益を生むかの予想に基づいて現在時点での投資の価値を調べます。DCF法はM&Aを検討している企業や投資の意思決定をする人に有用な方法です。DCF法は資本予算を作ったり、事業運営費にまつわる判断をする際に企業内部の人間にも重宝されます。日本語で割引キャッシュフローと呼ばれるように、DCF法は将来のキャッシュフローの額を割り引いて現在の価値とする計算が行われます。次に、DCF法を理解するのに欠かせない現在価値の考え方と計算方法について解説します。
現在価値とは
現在価値とは、将来受け取る予定の金額を現時点の価値に直して計算したものです。もちろん今目の前にある一万円札の現在価値は一万円ですが、10年後に受け取る予定の一万円札の現在価値は一万円ではありません。インフレや為替のリスクを無視すると、お金の価値は現在に近いほど高くなり、現在から遠ざかるほど低くなります。これは、例えば今日の一万円を国債に投資していたとしたら10年後には一万円よりも高い金額で手元に帰ってくるかもしれないためです。
現在価値を算出するためには、割引率を定める必要があります。割引率は一年で資本をどれくらい増加させることができるかを見込んだ値です。この割引率は安定運用であれば債権の利回り、あるプロジェクトへの投資であればWACC(加重平均コスト)という値に設定されます。
現在価値は以下のように計算されます。
\(現在価値=\frac{将来価値}{(1+割引率)^{年数}}\)
現在価値は、同じ割引率で同じ年数資産を増やしていった場合将来価値に一致するため、このような計算式になります。
DCF法による投資価値の算出方法
DCF法によって投資の現在価値を算出するには、以下の式を用います。今回は3年間収益を得られる新規プロジェクトについて考えましょう。
\(DCF=\frac{CF_1}{(1+r)^1}+\frac{CF_2}{(1+r)^2}+\frac{CF_3}{(1+r)^3}\)
ただし、
\(CF_i=i\)年目のキャッシュフロー
\(r=\)割引率
DCF法によって投資価値を見極めるとき、まず初めに将来キャッシュフローの予測をしなければなりません。これは企業の中期経営計画や損益情報などに基づいて計算されることが多いです。
次に、将来価値と現在価値を結びつける割引率を設定します。DCF法は企業やプロジェクト単位で実施されることが多いため、WACC(加重平均コスト)を用いることが多いです。
最後に、上の式によって適切な年度の期間について現在価値を算出することで投資価値や企業価値を計算することができます。一般に、DCF法によって算出された投資価値が投資コストを上回れば、投資をするメリットがあると判断されます。反対に、投資コストが投資価値を上回る場合は投資をしないことが最善の判断となります。
まとめ
DCF法とは将来価値と現在価値の考え方に基づいて投資価値を判断する方法でした。この方法は投資に関する意思決定をサポートする上で有用です。また、複数の候補があるときにそれらを比較するのに役立ちます。しかし、これは将来のキャッシュフローがある程度正確に算出できる場合にのみあてはまります。DCF法による予測は市場の需要、景気、技術力、競争、未曽有のリスクに影響を受けるため、どんなに精密に将来キャッシュフローが計算されていたとしても変動リスクがあります。そのため、マルチプル法などの他の手段も合わせて用いることが重要です。
それほど難しくない数式ではあるのですが、計算は比較的簡単ですので使いこなすように意識していきましょう。
参考:DCF法とは【経済用語をやさしく解説】-大人の数トレ教室
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<文/須藤>