WACC(加重平均コスト)とは?【経済用語をやさしく解説】
公開日
2022年12月9日
更新日
2024年7月29日
この記事の主な内容
WACCとは
WACC(Weighted Average Cost of Capital)(読み方:ワック)は加重平均コストとも呼ばれ、会社の平均的な資本コストを表します。資本コストとは、株式発行や負債などの資金を調達するために必要なコストです。負債コストは借入にかかるコストであるため定められた利子率に比例しますが、株式資本コストはインカムゲイン(株主に支払う配当)やキャピタルゲイン(株式の上昇益)を合わせたものであるため正確に算出することは困難です。
WACCは債権者や株主の要求に応えるために必要な収益率を表すため、収益のハードルレート(必要最低限達成しなければいけない収益率)として採用している企業が多いです。
WACCの計算式
WACC=\((\frac{E}{E+D}×R_e)+(\frac{D}{E+D}×R_d×(1-T_C))\)
ただし、
\(E\)=株式の時価総額
\(D\)=負債総額
\(R_e\)=株主基本コスト
\(R_d\)=負債コスト
\(T_c\)=実効税率
WACCは上のように計算されます。ここでは、それぞれの資金源(負債と株式)のコストの加重平均を計算しています。\(\frac{E}{E+D}\)は株式による資金調達の割合であり、\(\frac{D}{E+D}\)は負債による資金調達の割合です。
WACCは以下の二項を足すことによって求められます。
\((\frac{E}{E+D}×R_e)\)
\((\frac{D}{E+D}×R_d×(1-T_C))\)
一項目は株式資本の加重コストを表し、二項目は負債の加重コストを表しています。
各要素の説明
株式資本は明示的な価値を持たないため、株式資本コスト(\(R_e\))は一意に定まりません。そのため、会社は株式資本コストを推定しなければいけません。株式がマーケットの参加者の期待収益率を達成できなければ、株主は株式を手放してしまいます。このことから、株式資本コストとは株主が満足するようなリターンを産み出すために必要なコストになります。このコストを計算するために企業は通常CAPMというモデルを用います。
反対に、負債コストは利子率があらかじめ定められているため、より簡単に計算することができます。ただし負債に関しては、金利費用に関する税金が控除されるため(負債コスト)×(1-実効税率)という式が用いられます。
WACCの見方
WACCは投資判断をする際に証券アナリストによって使われることがあります。例えば、DCF法による分析でWACCを将来のキャッシュフローに関する割引率として用いることで企業の現在価値を算出することがあります。また、企業内部で財務が新規プロジェクトの収益率のハードルレートとしてWACCを用いることがあります。この場合、WACCと比較してリターンの割合がそれよりも低い場合は投資しない判断をします。
WACCは資金調達をするにあたって返済しなければならない金額の目安であるため、一般的には低いことが望ましいです。しかし、業界によって様々で、平均的にWACCが高い業界や低い業界があります。
WACCが高い企業は企業価値の算出において不利であり、ハードルレートが高くなってしまうという欠点があります。しかし、株式は返済義務のない資本であり財務の安定性が増すため、必ずしもWACCが高いことは問題になりません。
まとめ
WACCは企業買収や設備投資の際に使われる重要な指標であるため、計算式とその考え方について理解しておきましょう。WACCは株式資本レートを基に計算されるので、計算方法や用いる根拠によって値が変動してしまいます。そのため、WACCは企業の財務状態を知るのに良い指標ですが、他の指標と合わせて判断することが大切です。
参考:WACC(加重平均コスト)とは?【経済用語をやさしく解説】-大人の数トレ教室
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<文/須藤>