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疑似相関シリーズ 第5回|残業が少ないチームほど成果が低い?

公開日

2026年1月10日

更新日

2026年1月27日


いきなり結論

残業が少ないから成果が低いんじゃない。忙しい案件がない(または減った)から残業も成果も減っただけかもしれない。

「残業時間が多いチームほど売上が高い」
「残業が少ないチームほど成果が低い」
こういう相関、社内データを見ていると普通に出てきます。

すると、つい言いたくなる。

「残業を減らすと成果が落ちるのでは?」

でもこれは、疑似相関の典型例です。
残業が“原因”ではなく、別の黒幕が両方を動かしている可能性が高い。

相関はヒント。因果は証拠。
今日は「努力の量=成果」という思い込みで、間違った打ち手に行かないための話です。



1. なぜ「残業が少ないほど成果が低い」が起きるのか

まず、シンプルな例で考えます。

チームA(繁忙期)

・大型案件が重なっている
・残業:多い
・売上:高い

チームB(閑散期)

・案件が少ない/小さい
・残業:少ない
・売上:低い

これをデータでまとめると当然こう見えます。

残業が多いほど成果が高い

ここで危ないのが、次の飛躍。

「残業が成果を生んでいる」

もちろん、残業が全く関係ないとは言いません。
でも多くの場合、本当の因果はこうです。

・案件が大きい(忙しい)→ 残業が増える
・案件が大きい(忙しい)→ 成果も増える

つまり黒幕は、案件の量・質・単価・難易度です。


2. 用語を“日本一やさしく”整理する

今回の主役は「交絡因子」と「逆因果」です。

相関(correlation)

Aが増えるとBも増える(または減る)という「いっしょに動く」関係。
残業と成果が同時に増減するのは、相関としてよくある。

因果(causation)

Aが原因でBが起きるという関係。
相関があるだけで「残業を増やせば成果が出る」とは言えません。

交絡因子(confounder:こうらくいんし)

AとBの両方に影響する“黒幕”。

今回の黒幕候補は、たとえばこれです。

・案件の量(忙しさ)
・案件単価(高単価かどうか)
・リード数(そもそも商談があるか)
・人員構成(新人比率、欠員)
・期末・繁忙期など季節要因

逆因果(reverse causality)

成果が落ちたから残業が減るケースもあります。

・受注が減った → 仕事が減った → 残業が減った

この場合もデータ上は「残業少→成果低」に見えます。


3. 「これは本当? 嘘?」をちゃんと分ける

今回も2つに分解します。

Q1:相関は本当?

本当です。
忙しい時期は残業が増えやすく、成果も増えやすいので相関が出ます。

Q2:因果(残業が成果を生む)は本当?

嘘かもしれない。
少なくとも相関だけでは、因果は言えません。

むしろ疑うべきは次。

・黒幕(案件量・単価・季節)が両方を動かしている
・逆因果(成果が落ちたから残業が減った)


4. ビジネスでの“実害”:間違うと「長時間労働」が正当化される

この相関を因果だと決めつけると、打ち手がこうなります。

・間違い:残業を増やす/残業を減らす施策をやめる
・正しい:成果のドライバー(案件量・単価・成約率など)を見に行く

残業を増やすのは、短期的には見た目の成果が出ることもあります。
でも、長期的にはこうなりがちです。

・疲労がたまり、ミスが増える
・離職が増え、組織力が落ちる
・属人化し、再現性がなくなる

つまり、「残業=成果」は危険な処方箋になりやすい。


5. 今日から使える:黒幕チェック「3つだけ」

初心者でも迷わないよう、3つに絞ります。

チェック①:案件の量・単価を揃えると関係は残る?

同じ条件(案件量・単価が近い)で比べたとき、

・残業が多いほど成果が高い

がまだ残るか?
残らないなら、黒幕が作った見せかけの可能性が高い。

チェック②:時間の順番は合ってる?

原因なら先に起きているはず。

・残業が増えた“あと”に成果が伸びた → 因果の可能性
・成果が落ちた“あと”に残業が減った → 逆因果の可能性

まずは順番を確認するだけで、誤判断が減ります。

チェック③:成果を「時間あたり」で見ると結論は変わる?

残業が増えると、成果の絶対量は増えて見えます。
でも本当に大事なのは、

成果 ÷ 時間(生産性)

です。

残業が多いほど生産性が下がっているなら、「頑張りで押している」状態かもしれません。


6. 実務の最小アクション:残業ではなく「成果のレバー」を設計する

最小手を3つ紹介します。

最小手①:成果を分解して“レバー”を特定する

成果(売上/受注)を、ざっくりでいいので分解します。

・リード数(流入)
・商談化率
・成約率
・平均単価

どこが落ちているかが見えると、「残業」ではなく「レバー」に手が伸びます。

最小手②:忙しさを「均す」だけで成果が上がることがある

残業が多いチームは、単に仕事が偏っていることも多い。

・案件の割り振り
・ナレッジ共有
・テンプレ化

これだけで残業は減り、成果は維持できることがあります。

最小手③:残業をKPIにしない(代わりに先行指標を持つ)

残業を評価軸にすると、頑張りの量が正義になりやすい。
代わりに、

・提案数
・商談数
・改善アクション数

など、成果につながる先行指標を置くのがおすすめです。



まとめ

・「残業が少ないほど成果が低い」という相関は出る(これは本当
・でも「残業が成果を生む」という因果は言えない(これは嘘かもしれない
・正体は、黒幕(案件量・単価・季節)+逆因果の可能性が高い
・打ち手は残業ではなく、成果のレバー(リード・成約率・単価)に置く

最後に一言。
残業は成果の原因じゃない。成果の「状況」を映す鏡だ。


次回予告:第6回「リモートが増えるほど、チャットが増える?」
増えたのは仕事量ではなく“記録”かもしれない、測り方のワナを扱います。

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