標本調査と実験のキホン-第3回:観察研究と実験研究のちがいをビジネスで体感!【統計学をやさしく解説】
公開日
2025年10月31日
更新日
2025年10月28日
この記事の主な内容
はじめに
第1回と第2回では、データの「取り方」──つまり標本調査とサンプリングの基本を学びました。ここまでで「どのデータを集めるか」は理解できたと思います。
では次のステップ、「どうやってデータから因果関係を見抜くのか?」を学びましょう。
統計学で重要なのは、“関係がある”と“原因である”を混同しないこと。
今回は、実務でもよく登場する観察研究と実験研究の違いを、ビジネスの例を交えてわかりやすく解説します。
1. 観察研究とは?──「見て記録する」分析
観察研究とは、研究者が何も操作せずに、自然のままのデータを観察・分析する方法です。
たとえば、SNS投稿数と売上の関係を調べたいとき、特に操作せずに「どのくらい投稿が多い会社ほど売上が高いか」を見るだけ──これが観察研究です。
特徴:
・現実の行動をそのまま記録する
・操作をしないため、倫理的・コスト面で安全
・ただし「なぜそうなったのか(因果)」までは言えない

ここでは「SNS投稿数が多いほど売上が高い」という相関はわかりますが、
「投稿を増やしたから売上が上がった」とまでは言えません。
2. 実験研究とは?──「条件を変えて確かめる」分析
実験研究は、研究者が意図的に条件を操作して結果を比べる方法です。
たとえば、広告デザインAとBでどちらのクリック率が高いかを比べる「A/Bテスト」が代表的な例です。
特徴:
・条件をコントロールして因果関係を検証できる
・現場での検証やマーケティングで多用される
・設計が悪いと誤った結論を導くリスクもある

(左:広告Aグループ、右:広告Bグループ。それぞれのクリック率を比較)
3. 観察研究と実験研究のちがい
| 観点 | 観察研究 | 実験研究 |
|---|---|---|
| 方法 | 自然な状況を観察 | 条件を操作して比較 |
| 目的 | 現象の理解 | 原因の特定 |
| コスト | 低い | 高い(設計が必要) |
| 代表的な例 | SNS投稿と売上の関係 | A/Bテスト、広告効果検証 |
| 注意点 | 相関関係しか言えない | 設計ミスで誤因果のリスク |
4. “相関”と“因果”のちがいを図で理解

(散布図で右上がりの関係を示すが、第三の要因=気温などが両方に影響)
例:アイスの売上と日焼け止めの売上が同時に増える。
→ 実際の原因は「気温が高い」ことで、2つの売上は直接の因果関係ではありません。
このように、見かけの相関(擬似相関)に惑わされないことが重要です。
5. ビジネスでの使い分け方
観察研究と実験研究は、どちらが優れているわけではなく、目的によって使い分けることが大切です。
| 目的 | 適した手法 | 例 |
|---|---|---|
| 現状を把握したい | 観察研究 | 顧客行動分析、SNS投稿傾向の確認 |
| 効果を検証したい | 実験研究 | 広告・UI・価格設定のA/Bテスト |
観察研究で仮説を立て、実験研究で検証する──この流れが最も効果的です。
6. ChatGPTで「A/Bテスト」を体験してみよう
ChatGPTを使うと、簡単に実験の考え方をシミュレーションできます。
例:
「広告AとBのクリック率データを比較して、どちらが有意に高いかを教えて」
「仮にAの効果が3%高い場合、サンプル数はいくつ必要?」
こうした指示を出せば、AIが統計的な考え方をわかりやすく説明してくれます。
まとめ
・観察研究は「見る」、実験研究は「試す」分析方法。
・観察研究では相関を、実験研究では因果を明らかにできる。
・ビジネスでは「観察で仮説 → 実験で検証」が王道の流れ。
・ChatGPTを使えば、実験設計やA/Bテストの考え方を手軽に体験できる。
次回は最終回、「良い実験を設計するための考え方」をテーマに、統計学の実務応用の核心に迫ります。





