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確率の考え方-第2回:同時確率と独立のルール【統計学をやさしく解説】

公開日

2025年10月23日

更新日

2025年11月25日



はじめに


前回は、偶然を「数で考える」ための基本として、樹形図や単純な確率を学びました。今回は一歩進めて、ビジネス判断に欠かせない「同時確率」と「独立」という考え方を扱います。

「2つの出来事が同時に起こる確率」は、営業成約率、再購入率、アンケート結果のクロス分析など、現場の意思決定にそのまま活かせるテーマです。数式よりも“考え方”を重視して、だれでも理解できる形で解説します。


1. 「同時に起こる確率」って何?

「同時確率」とは、2つの出来事AとBがどちらも起こる確率のことです。

例:ある顧客が「購入する」確率が40%、さらにその顧客が「SNSで紹介する」確率が20%の場合。
では、「購入し、かつSNSで紹介する」確率は?

このように、2つの条件を同時に満たす確率を考えるのが「同時確率」です。

同時確率は次のように表されます:

P(AかつB) = P(A) × P(B|A)

つまり、「Aが起きたあとでBが起きる確率(条件付き確率)」を掛け合わせるという考え方です。


2. 条件付き確率のイメージをつかもう

「条件付き確率」と聞くと難しく感じますが、考え方はシンプルです。

・ある営業リスト100件のうち、40件が“購入見込みあり”。
・その40件のうち、10件が“実際に契約”。

この場合、「契約する確率」は 10 / 100 = 10%。
一方、「購入見込みありの顧客に限った契約率」は 10 / 40 = 25%。

これが「条件付き確率」です。全体では10%でも、条件をつけると25%になる。条件を区切ることで、どんな要素が成功を左右しているかを見抜けます。


3. 「独立」とは影響しない関係のこと

同時確率を考えるときに重要なのが「独立」という考え方です。

2つの出来事AとBがお互いに影響しないとき、次の関係が成り立ちます:

P(AかつB) = P(A) × P(B)

たとえば:

・サイコロを振って1が出る確率(1/6)
・コインを投げて表が出る確率(1/2)

これらはお互いに無関係なので、同時に起こる確率は 1/6 × 1/2 = 1/12。

ビジネスでも、「独立」の考え方は重要です。たとえば:

・顧客の性別と「再購入率」が独立か?
・広告のクリックと「購入」が独立か?

これを見誤ると、“関係があるように見えるだけ”のデータに振り回されてしまいます。


4. 同時確率をビジネスに使う

4-1. 成約率とリピート率を組み合わせてみよう

・新規顧客が「初回購入する確率」=40%
・その中で「リピート購入する確率」=30%

→ 「購入し、かつリピートする確率」=0.4 × 0.3 = 12%

つまり、100人の見込み顧客がいたら、約12人がリピーターになると見込めるわけです。
このように、「確率の掛け算」は全体の中で“両方を満たす”人数を見積もるときに使えます。

4-2. 独立でないケースに注意

もしリピート購入が「初回の満足度」に左右される場合、それは独立ではありません。この場合、単純な掛け算ではなく、「条件付き確率(満足度が高い人の再購入率)」で考える必要があります。

多くのデータ分析で誤解されやすいのがこの点です。
「AだからBになった」と思い込む前に、「Aの中でBがどのくらい起きるのか?」を数で確かめる。
これが確率思考の第一歩です。



5. まとめと次回予告:確率で“関係の強さ”を読む

同時確率は「両方が起きる」割合。
条件付き確率は「Aが起きたときにBが起きる」割合。
独立は「一方が他方に影響しない」関係。

これらを理解すれば、データの「相関」と「因果」を区別できるようになります。
ビジネス判断では、数字が示す“関係の濃さ”を冷静に読むことが大切です。

💡 明日からできること:
1. 成約率 × リピート率 で同時確率を算出してみる。
2. 条件を変えて確率の違いを比較する。
3. 「独立かどうか?」を確認して、数字の背景を読む。


次回:
「確率の考え方-第3回:条件付き確率とベイズ思考をビジネスに応用する【統計学をやさしく解説】」では、
確率の更新(ベイズの考え方)を使って、予測・判断の“精度を高める”方法を紹介します。

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