数学教室「和」講師インタビュー・檜山正幸さん「バイオハザードが大好き」
公開日
2017年11月22日
更新日
2017年11月22日
和から株式会社が運営する大人のための数学教室「和(なごみ)」。実際に数学教室で教えている講師の人ってどんな人なの?気になる!という声にお答えして始まった講師インタビュー企画。そんな声あげてるのは私一人なんじゃないかという疑惑は常にあります。どうも、「数学のファン」としてやらせてもらってます。鯵坂もっちょです。今回インタビュアーを担当させていただきます。
そんな企画の記念すべき第一回のお相手は、お得意の分野は圏論、情報・計算科学、プログラミング! 長らくブログ「檜山正幸のキマイラ飼育記」を主宰してこられた檜山正幸先生です。ロマンスグレー!
今回も和からコーディネーターの松中さんのご案内でお届けします。松中さんが「せっかくなので近くのカフェでやりましょうよ」とのことなので今回はおしゃれな雰囲気です。
学習塾での経験が今も生きている
松中:こちら檜山先生です。
鯵坂:鯵坂です。よろしくお願いします。
檜山:よろしくお願いします。
鯵坂:早速ですが、檜山さんはどういった経緯で和からの講師になられたんですか?
檜山:そもそもビジネスとして大人のための数学教室が成立するとは全く思ってなくて。
鯵坂:たしかに珍しいですよね。
檜山:ええ。Googleかなんかに出てた広告を見たときに、今はもうちょっと増えてると思うけどその当時で200弱ぐらいの生徒さんがいらしたんですよ。それ自体に僕びっくりしちゃって。で調べたら講師募集、って出てたんで、応募してみようかなと。
鯵坂:なるほど。昔から数学はお好きだったんですか?
檜山:嫌いじゃなかったけど、そこまで切実でもなかったですね。後になって仕事での必要性を感じて、2008年くらいからプライベートでですけど数学っぽいセミナーはやってたんですよね。
鯵坂:へえ! それはどういった方向性の?
檜山:仕事がIT畑だったんですよ。それでセミナーのトピックもいろいろあったんだけど、一つには……「モナド」ってわかります?
鯵坂:……聞いたことは。
檜山:圏論の概念なんですけどね。セミナー始める少し前頃から、Haskellなんかが話題になりだして、関数型言語が盛り上がりつつあったんですよね。そのときに「モナドよくわかんない」って話をよく聞くようになって、じゃあちょっと説明しようかなみたいな感じで集めだしたのが始まりですね。
鯵坂:なるほど。もともとそういう経験があったので講師に応募されたと。
檜山:それもあるし、もっと言えばウンと昔に学習塾の先生もやってたんですよ。その時は田舎で、田舎って言っても東京近郊なんですけど、分譲の高級住宅街の子たちと地元の子たちが混ざってるような地域だったんで、もうすごい学力差があったわけですよ。
鯵坂:教えるの大変そうです。
檜山:教えるの大変なんですよ。当時僕は学力差のある中でも低い子達を主に担当していたので、本当に大変でした。
鯵坂:じゃあそのころの経験が今にかなり生きてる?
檜山:かなりある。かなり。子供と大人ってそこまで差ないですよ。「できない」って言うときのできなさってのは大人でも似たようなもんです。
「50分でテンソル解析を教えてくれ」
鯵坂:いまはどういうことを教えてらっしゃるんですか?
檜山:僕の方から「コレを教えたい」みたいなのはなくて。たまたまでしょうが、今担当しているお客様は数学にコンプレックスをもってる方とか、動機がない方が多いですね。
鯵坂:「動機がない人」来ます!?
檜山:来ます。お金払ってるんで「動機がない」はウソだけど、動機が薄い。はっきりしない。
鯵坂:そういう人にはどう対応されるんですか?
檜山:以前にこんなお客さんが来られたことがあって。その方はなんか仕事で必要かもしれないようが気がする、といった感じだったんですよね。切実なモチベーションは感じられなかった。にも関わらず内容としては「テンソル解析」をやってほしいと。50分で。
鯵坂:テンソル解析……。
檜山:その前にベクトル解析とか多様体も必要ですよね。それ全部を50分で。
鯵坂:ずいぶん重い話題ですね。
檜山:そう。だからちょっとどうしていいかわからない。だから「50分ではベクトル解析やテンソル解析を修めるレベルのところまではいけない。でも『お話』ならできますよ」って。
鯵坂:お話。
檜山:例えば僕なんかがピアニストのコンサートに行ってさ、ピアノ曲を何曲か聞きました。そこで曲に関わる音楽家とかのお話を50分聞きました。でうちに帰りました。ってそこでピアノが弾けるようになってるかって言うと弾けないでしょ。でも酒の席とかで「こういう話があるんだぞ~」ってちょっといい気分になることはできる。そういうタイプのお話。
鯵坂:なるほど。
檜山:そういうお話がいいか、あるいはベクトル解析・テンソル解析の山道を一歩だけ登る、スタート地点から少しだけ進む話でもいいですけどって聞いたら「いやお話がいい」とのことだったんで、その日はお話をすることにしたんです。
鯵坂:それで満足して帰ってもらった?
檜山:わりとね。だから臨機応変というか、お客さんに合わせていろいろと対応することはできます。
T-ウイルスぐらい常識だよねえ!
鯵坂:ここからは講師としての檜山さんではなくて、個人としての檜山さんについても少しお伺いしたいと思います。ご趣味とかありますか?
檜山:僕バイオハザードのシリーズが大好きでさ。
鯵坂:えっ意外。
檜山:ミラ・ジョヴォビッチが大好きで。
鯵坂:えっもっと意外。映画のシリーズってことですね、あれもともとゲームですよね。
檜山:もともとはゲームですね。今は僕ゲームはしないんですよ。うちの子供が小さい頃、あの手のゲームやってんのを見て「そんなんやるなよ」とは思ってたけどね。
鯵坂:グロいですしね。
檜山:まあ自分も好きなんで強くは言えなかったです。映画のバイオハザード・シリーズが好きなのはミラ・ジョヴォビッチが好きだからで、グロいのが好きというわけではないです。
鯵坂:なるほど。
檜山:今年の2月、名古屋大学で物理の方々に圏論のチュートリアルをする機会があったんですけど、バイオハザードの話にだいぶ時間を使ってしまって(笑)。
鯵坂:なんですかそのおもしろエピソードは。それはもともとどういうお話の予定だったんですか?
檜山:一応話題としてはフロベニウス代数の話を、物理の人たち興味持つかなと思ってやったんですけど、ネタでスライドにバイオハザードのシーンをたくさん入れてた。そこで「これが実はアリスの初登場のシーンで! 2002年! ミラ・ジョヴォビッチがまだ26歳ですよ! 若々しいですねえ!」
鯵坂:いや何やってんすか。
檜山:「これがハイブ! 地下の研究施設で、最初にT-ウイルスが発生したのがこのハイブです。でこの上の方にですね、このマンションにこれゲームでは『洋館』って呼ばれてましたけどここにアリスは住んでたんですけど」みたいな話を入れてっちゃったんですよ。で、至る所にバイオハザードのスライドをはさんでいたので、めくる度に解説がね。ある程度は入ると。
鯵坂:絶対聴衆それ聞きに来たんじゃないよ。
檜山:いやいや、面白がる人もいますよ。顰蹙(ひんしゅく)も買ったかもしれないけど。
鯵坂:そりゃそうですよ。全体としての反応はどうだったんですか?
檜山:どうなんでしょう? 基本顰蹙買ってたんかな。
鯵坂:ダメじゃないですか(笑)。
檜山:でもあとから聞いたら「本題の話、というかバイオハザード以外の話も面白かった」って。
鯵坂:そっちの話ばっかしてくれりゃよかったのにと。
檜山:いや、そうでもないのよ、バイオハザードの話も聞けてお得でしょ。
鯵坂:ウケる人にはウケた?
檜山:うん、ウケる人にはウケた。でも意外とみんなバイオハザード知らなくてね。「これがあの有名な」って言っても誰も反応してくれない。
鯵坂:『T-ウイルス』とか言っても誰も知らない?
檜山:T-ウイルスぐらい常識だよねえ!
鯵坂:『アンブレラ社』とかねえ。
檜山:そうそう! そうそうそう!
鯵坂:アンブレラ社ぐらい知っといてほしいですよねえ。
檜山:そうそう。アンブレラ社のマークももちろん出したんだよ!
鯵坂:アンブレラ社とか出したら「おお~っ出ましたねえ~これがあの!」ってなってほしいですよねえ。
檜山:うん。うんうん(深く頷く)。
松中:なんか以前に私らで飲み会したときもずっとバイオハザードの話されてらっしゃいましたよね。
檜山:あっそうそうそう。別の講師の方に60分間ずっとバイオハザードの話してたもんで、なんかそれからその人に避けられるようになっちゃった。
鯵坂:(笑)
松中:いや避けられてはいないと思いますけど……。
鯵坂:いやあ楽しい人だった。
松中:えっ。
鯵坂:えっ?
松中:いやバイオハザードの話が半分以上なんですけど……。
鯵坂:もともとの檜山さんの話からして半分以上バイオの話だったんで仕方なくないですか?
松中:いやまあそれは。
鯵坂:それともあれですか? バイオの話の後に話してた「中国人の踊り手がかわいい」って話も入れますか?
松中:いえ。大丈夫です。
鯵坂:「もともとニコニコ動画の『踊ってみた』が大好きで、踊り手の中でもお気に入りなのは『楽小漫(ルー・シャオマン)』って子。この楽小漫がニコニコ超パーティに出るって言うからずっとニコ生見てたんだけど、いつ出るかわかんないから結局一日中ずっと見てた」って話も入れますか?
松中:もう充分なんで。
鯵坂:その後ニコニコ動画の『踊ってみた』動画見ながらみんなで「うわ可愛い」とか「脚長っ!」とか言ってた話も入れ
松中:本当にもう大丈夫だから。
~
大人のための数学教室「和」、本当に個性的な講師の方が揃っているようですね!
檜山さんくらいの年代の方がバイオ好きだったり、踊ってみたとかニコ動見てるというのは親近感がわきます。教えられる側の目線に立ってみると、その親近感が安心感に変わるのかな、という感じを受けました。複雑怪奇なイメージのある圏論ですが、こんな方になら教わってみたいかも?
●数学教室和(なごみ)の講師・スタッフ紹介ページ(檜山先生単体のページは準備中)
https://wakara.co.jp/aboutus/member
(文/鯵坂もっちょ)