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知っておきたい統計学の豆知識~平均を表す“\(\mu\)”について~

公開日

2020年11月21日

更新日

2020年11月21日


こんにちは。和からの数学講師の岡本です。今日は「平均値」についてお話をします。
「平均値」という言葉は普段からよく耳にすると思います。データの中心部分を把握するときに使われる、最もポピュラーな要約統計量(データの特徴を表す指標のこと)の1つです。
実際に自然科学の世界から社会。人文科学、ビジネスの世界まで幅広く使われています。この平均について、知っておいた方がいい事項をまとめてみました。

1.平均\(\mu\)の「\(\mu\)」って何?

統計学の教科書や参考書を読むとよく出てくる記号として「\(\mu\)」という文字があります。これが何者なのか、なんと読むのか、など気になる方も多いと思います。この「\(\mu\)」とはギリシャ文字で「ミュー」と読み、平均値を表す記号として一般的に使われます。
しかし、なぜこの記号なのか、疑問は次々溢れてきます。実はギリシャ文字のいくつかはアルファベットと対応があり、今回の「\(\mu\)(ミュー)」は「\(m\)(エム)」と対応します。いわれてみると形が似ていますよね!

ではなぜ「\(m\)」なのか。それは、「平均」を表す英語「mean」に由来します。
「mean」と聞くと「意味」という意味が真っ先に浮かぶ方が多いかもしれません(表現がややこしいですがご了承ください 笑)。しかし、「mean」には「意味」以外に「平均」という意味があります。そこで、「mean」の頭文字である「m」を平均値として採用する流れになりました。しかし、「m」という記号は数列の添え字や最大(max)、最小(min)を表す際に頻繁に使われるので、差別化を図りギリシャ文字の「\(\mu\)」が使われています(実は他にも訳があります(後述))。

2.Average(アベレージ)との違いは?

ここでまた1つ疑問が出てきます。平均値をExcelで出力する際に「AVERAGE」という関数を使います。いわれてみれば英単語の「Average(アベレージ)」も「平均」を意味します。
「Mean」と「Average」って何か違いがあるのでしょうか?
 実は「Average」には「平均」以外も「平凡な」「標準的な」「並みの」という意味があり、統計学の世界では「代表値」というニュアンスで使われます。つまり、「Average」の方が広い意味があり「Mean」と「Average」は、正確には異なる用語として使い分けられています。
※しかし、そこまでこだわる必要はなく、どちらも一般には「平均」という意味で使われています。

3.\(\bar{x}\) と\(\mu\)の違いは?

教科書は参考書を読み進めていくと、また疑問が生じます。そうです、「平均値\(\bar{x}\)(エックス・バー)」の出現です。
 この「\(\bar{x}\)」と「\(\mu\)」にも実は違いがあります。実は「\(\bar{x}\)」とは\(x_1, x_2, \ldots\,x_n\)で表されるサンプル・データ(標本)の平均値を表しています。そのため「標本平均」と呼びます。なお、データの記号が\(y_1, y_2\ldots, y_n \)であれば、\(\bar{y}\)といった具合で表せるので、記号として使い勝手はいいです。
 対して、「\(\mu\)」は一部のサンプル(標本)ではなく、全てのデータ(母集団)の平均値を表し、「母平均」と呼びます。場合によっては直接求めることが困難なこともあり、文字通り、「母なる平均値」、あるいは「神のみぞ知る値」という位置づけになります。

マクドナルドのポテトの長さについて考えてみましょう。地球上に存在する全ポテト(母集団)の「平均の長さ」は、少なくともこの瞬間において存在しています。この平均値の事を「母平均(\(\mu\))」といいます。しかし、その値を測定することが現実的に不可能です。まさに「神のみぞ知るポテトの平均値」です。そこで、なるべく偏りのないサンプル・データ(標本)の平均(標本平均\(\bar{x}\))を使ってこの母平均を推測するのが統計学の「推定」の考え方です。視聴率調査や内閣支持率も同じような考え方です。
このように、「\(\bar{x}\)」と「\(\mu\)」は、「Average」と「Mean」よりも決定的な違いがあるので、使用する際は気を付けましょう!
 補足ですが、「\(\mu\)」のようなギリシャ文字は特別な、あるいは「神聖」な意味を込められる慣習があります。上の説明の通り、「神のみぞ知る値」というニュアンスから平均値はアルファベットの「\(m\)」でなく「\(\mu\)」が採用されています。

4.さいごに

いかがでしたでしょうか?今回は統計学で必須の概念である「平均値」の、普段あまり語られることのない話題についてお話をしてきました。現代の社会においては、さまざななデータや情報は行き来しており、いかに正確に読み取るかが重要になってきます。その根本にある考え方は統計学と言っても過言ではないでしょう。実際に高校の数学の授業でも2015年度から「データ分析」が必須となり、仕事や生活の上でも統計学やデータ分析は今後もますます必須のスキルになってくると思います。そこで、和からでは初めて統計学を学ぶ、あるいはハードルが高くてなかな勉強が進まないという方は是非、参加費無料の「統計超入門セミナー」にご参加ください!

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<文/岡本健太郎>

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