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「統計的問題解決の方法」-第3回:データ収集の基本【統計学をやさしく解説】

公開日

2025年9月23日

更新日

2025年10月14日

第1回では「統計的問題解決の全体像」を学び、第2回では「課題設定のしかた」を解説しました。今回はその次のステップである 「データ収集」 について扱います。どんなに優れた分析手法を知っていても、集めるデータが間違っていれば結論は役に立ちません。逆に、良いデータがあればシンプルな分析でも十分に効果的です。この記事では、一般のビジネスシーンでよく使われるデータ収集の基本をやさしく解説していきます。



1. 良いデータとダメなデータの違い

まず押さえておきたいのは「データにも質がある」ということです。

良いデータ:正確で信頼性が高く、課題に合致している
ダメなデータ:偏りが強い、測定方法が不明、課題と関係が薄い

失敗事例

ある会社が「顧客満足度を知りたい」と思い、SNSでアンケートを実施しました。しかし回答したのは熱心なファン層ばかりで、結果は「満足度が高い」と偏った結論に。実際にはライト層の不満が大きく、翌年に顧客離れが加速してしまいました。

👉 対象が偏るとデータは現実を正しく反映しない という典型的な例です。


2. データの種類を理解する

データと一口に言っても、大きく2種類に分けられます。

量的データ(数値で表せるもの):売上金額、身長、テストの点数など
質的データ(カテゴリーで表すもの):性別、地域、職業、アンケートの「満足」「不満」など

さらに、データを集める対象によって 母集団(全体)と 標本(一部を抽出)があります。例えば「日本全国の消費者の嗜好」を調べたい場合、全員に調査するのは現実的ではありません。そのため、代表的なサンプルを抽出して「標本」として調査するのです。

身近な例

▶ 母集団:全国のコンビニ利用者
▶ 標本:特定地域の店舗でランダムに選んだ100人


3. 実務でよく使うデータ収集方法

売上データ

▶ 出典:POSレジ、ECサイトの注文履歴
▶ メリット:客数・単価・時間帯別など、即時に利用可能
▶ デメリット:行動の「理由」まではわからない

アンケート調査

▶ 出典:顧客アンケート、オンライン調査
▶ メリット:顧客の意識や満足度を直接知ることができる
▶ デメリット:回答の偏り(「答えやすい人」だけが答えるなど)

アクセスログ

▶ 出典:Webサイトやアプリの利用記録
▶ メリット:大量のデータを自動で収集できる
▶ デメリット:解釈に専門知識が必要

観察や実験

▶ 出典:店舗での行動観察、ABテスト
▶ メリット:実際の行動変化を直接確認できる
▶ デメリット:準備やコストがかかる


4. Excelでできる簡単な集計

「データ収集=難しい統計ソフトが必要」と思われがちですが、最初はExcelで十分です。例えばアンケートの10件程度の回答をExcelに入力し、集計機能や棒グラフを使えばすぐに傾向が見えてきます。

実例

▶ Q:「この店舗に満足していますか?」
▶ 回答(10人):満足 7人、不満 3人

Excelで集計すると:

▶ 棒グラフで「満足70%・不満30%」と表示され、改善の余地が一目で分かる



まとめ

▶ 良い分析は「良いデータ」から始まる。
▶ データには種類があり、目的に応じて収集方法を選ぶことが重要。
▶ Excelレベルでも十分に実務で活かせる。

ここまでで「どんなデータを集めるか」の重要性がわかったと思います。では、集めたデータをどう料理すればよいのでしょうか?ただ数字を並べても意味はなく、整理・可視化することで初めて“気づき”に変わります。例えば、単純な表をグラフ化するだけで「平日は低迷しているが、土日は売上が伸びる」といった傾向がすぐに見えるようになります。

👉 次回(第4回)は 「分析の基本ステップ」 を取り上げます。単純集計やクロス集計、グラフ化など、初心者でもすぐに試せる方法から始めて、「データが知識に変わる瞬間」を一緒に体感していただきます。読み終えたときに「これなら自分でもできそう」と思える内容を用意していますので、ぜひお楽しみにしてください。

<文/綱島佑介>

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