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【連載第10回(最終回)】ChatGPTを味方にする“未来型管理職”への第一歩

公開日

2025年8月14日

更新日

2025年10月20日

AIの進化がビジネスの現場を変革し続ける中、私たちは今、新しい管理職像と向き合う時代に入っていると感じます。これまでの連載では、経営コンサルタント的な視点と生成AI(とくにChatGPT)を組み合わせることで、管理職がいかに「社内コンサルタント」として価値を発揮できるかを探ってきました。

その最終回となる今回は、未来型管理職としての第一歩をどのように踏み出すか、その実践ステップを整理しながら、社内研修やチーム展開への形成、そしてこれからの時代に必要とされる「知的再設計者」という新しい管理職像についても考察していきます。


明日から始められる実践ステップ

まずは、ChatGPTを日常業務に取り入れるための具体的なステップを紹介します。これは「何か大がかりなシステム導入をしなくては」といった話ではなく、今日からでも実行できる“小さな第一歩”を前提としています。

1. ChatGPTを“個人の思考パートナー”として使う

早朝の業務整理やToDoの優先度付けに使ってみる、企画や提案のたたき台作成に使ってみる、壁打ち相手として考えを言語化・整理する場面で活用するなど、自分の業務の中で「考える」「まとめる」「構造化する」場面において、ChatGPTと“実際に導入して実験する”ことから始めるのが有効だと考えています。

たとえば、毎朝の始業時に「今日の仕事で優先順位をつけるべき項目を整理してほしい」とChatGPTに依頼したり、「この企画アイデアに抜け漏れがないかチェックして」と壁打ち相手になってもらう活用が有効です。1人で悩んでいた時間が大幅に短縮され、結果として判断の質も向上する効果が得られます。

ここで大事なのは、AIに使われるのではなく、自分の思考の拡張として「使いこなす」感覚を持つことです。AIは常に正しい答えをくれるわけではありませんが、問いかけによって新しい視点を引き出してくれる存在かと思います。

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2. ChatGPTの使い方をチームで共有する

チーム内で「私の活用法」を持ち寄って共有する場を作る、テンプレート化されたプロンプト例を社内Wiki等で共有する、SlackやTeamsなどのチャットツール上で実験的な壁打ちスレッドを設置するなど、「1人だけが便利に使っている」状態から、「チーム全体で情報共有・活用する」フェーズに進んでいきます。

さらに、チームでプロンプト例を共有することで、他人の視点や工夫を知ることができ、発想力の幅が広がるという副次的な効果も得られ、AI活用の共有は、チームのナレッジマネジメントにも大きく貢献します。

3. AI活用を“業務の改善施策”とセットにする

ChatGPTを使って現場マニュアルやFAQを作成したり、営業トーク例や接客応答パターンを自動生成・蓄積し、チーム内で共有することで、日常業務の効率化が進んでいきます。加えて、部門ごとの会議などでChatGPTを用いた分析や提案内容を発表する機会を設けることで、生成AIの価値を実感する社員も増えていくかと思います。

このように、単なるツールとして使うだけでなく、「業務の仕組みそのものを再設計する視点」と組み合わせて活用することで、AIは組織の生産性を加速させる“変革のエンジン”になりえると感じています。

たとえば、問い合わせ対応のテンプレートを自動生成する仕組みを作ったり、社内報告書のひな型を生成・改善していくサイクルを構築することも可能です。経理部門では仕訳や月次業務の補助ツールとして、製造現場では工程改善のアイデア出し支援として、AIの活用範囲は広がりつつあります。

この段階では、「AIができること」に任せるのではなく、「我々の業務において、AIに任せるべきことはどこか?」という視点で業務プロセス全体を捉え直すことが求められます。その結果、自然と「AIの活用がチームの中で文化として根づく」状態が生まれていくと実感しています。

さらに一歩進めて、部門ごとに“AI推進担当”を任命し、継続的にChatGPTを活用した施策の成果を観測・改善していく体制を整えると、PDCAの仕組みの中にAIが組み込まれていきます。すると、単なる効率化にとどまらず、組織全体がより創造的かつ戦略的に動けるようになる――それがAI活用の到達点であり、未来型管理職がリードしていくべき方向性だと考えられます。


管理職研修での活用法・チーム展開の方法

ChatGPTを「考える支援ツール」として位置づけ、管理職向けの研修に組み込むことで、マネジメントの質を底上げすることが可能になります。たとえば、以下のような研修カリキュラムが考えられます。

  • ChatGPTを使った課題整理と論点抽出ワーク
  • プロンプト設計を通じた仮説思考力の強化
  • チーム内壁打ち実践とフィードバック演習

研修では、座学ではなく実際にChatGPTを使いながら課題解決プロセスを体験することが重要です。たとえば、自社の経営課題を想定したシナリオをもとに「課題整理→仮説立案→提案書作成」までをAIと共に行う形式をとることで、体験的に“AIと共創する感覚”を養うことができます。

また、チームへの展開を促進するためには、AI活用を「業務改善の一環」と位置づけ、部門長やプロジェクトリーダーが率先して使ってみせることが有効です。現場での成功事例を社内で共有することにより、「うちの部署でも使ってみよう」という雰囲気が自然と広がっていきます。

AIを個人のスキルにとどめず、チームや組織に定着させるには、「習慣化」「テンプレート化」「フィードバック文化の定着」の3つが鍵となっていきます。管理職はその旗振り役として、日常の中にAI活用を組み込む風土づくりを担う存在となるのです。


これからの組織に必要な“知的再設計者”とは?

今後の時代に必要とされる管理職像を一言で表すなら、それは「知的再設計者」であると私は考えています。

知的再設計者とは、単なる管理・監督を行う存在ではなく、業務・情報・組織の構造を再編成し、新たな価値を創出する存在です。ChatGPTのような生成AIを理解し、それを業務にどのように組み込むかを考え、現場で実装しながらチームの“考える力”全体を底上げしていく役割です。

この役割に求められるのは、以下のようなスキルセットです:

  • 情報整理力:複雑な状況を構造化する力
  • 問いの設計力:AIと協働するためのプロンプト力
  • 変化適応力:不確実な環境に柔軟に対応する力
  • 共創マインド:人とAI、現場と経営をつなぐ姿勢

未来型管理職は、「上から指示する」存在ではなく、「現場と共に考えるパートナー」としてチームに関わります。ChatGPTを活用しながらも、最終的には「人間にしかできない判断」や「感情のマネジメント」が求められる場面において、自分の力を発揮できる存在こそが、これからの組織に求められる知的再設計者なのです。


AIは、あくまでも“考える力”を支える道具。その本質は、人間の問いかけの深さにあります。だからこそ、管理職こそが「問いをデザインし、チームに問いを広げていく」知的触媒としての役割を担うことで、組織は未来に向かって進化し続けることができると私は信じています。

<文/綱島佑介>

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