【連載第1回】経営コンサルタント大量倒産時代に、管理職はどう生きるか?
公開日
2025年8月5日
更新日
2025年9月12日
この記事の主な内容
はじめに――「コンサルタントが倒産する時代」が意味すること
2024年、日本国内で経営コンサルタントの倒産件数が過去最多を記録したという記事を目にしました。
私自身も経営コンサルタントを行っている身としては非常に非常に驚く内容でした。
東京商工リサーチの調査によれば、2024年の「経営コンサルタント業」の倒産は154件(前年比7.6%増)に達し、集計開始以降で年間最多だった2023年の143件を上回り、過去最多を更新したそうです。そのうち、実に94%が個人コンサルタントや小規模事業者であったとのことで、これは、ただの業界ニュースというより、あらゆるビジネスパーソン、特にマネジメント層にとって無視できない「働き方の警告灯」だと感じました。
これまで「経営のプロ」「企業改革の指南役」とされてきた存在が、ChatGPTのような生成AIの台頭によって、一部代替されつつあると考えられます。
「考える仕事」も、「提案する仕事」も、「分析する仕事」も――AIができるようになってきているように思います。
これまで“高度な知的労働”とされてきたコンサルティング業務が、生成AIのサポートを受けた社員や管理職によって一部担えるようになってきているとさえ感じています。それはつまり、これからの管理職にはコンサルタント的な視点とAI活用スキルが求められる時代が来ているのではないかと考えています。
そこで、本連載では、「ChatGPTを使いこなすことで、管理職が“社内コンサルタント”として活躍する方法」をテーマに、全10回でお届けしたいと考えています。その第1回である今回は、次の3つの問いについて考察してみたいと思います。
- なぜ2024年に経営コンサルタントが大量倒産したのか?
- AIの登場で、コンサル業務はどう変化したのか?
- そして、なぜ管理職こそ“コンサル視点”が求められるのか?
コンサル業界の現状:なぜ2024年に過去最多の倒産?
2024年、経営コンサルタント業界には、「汎用化の時代」が到来したのではないかと考えています。
主な倒産理由は以下の3点に集約できるように思います:
- 差別化できない「汎用型アドバイス」の陳腐化
ChatGPTで簡単に得られるようになったフレームワーク的な助言(例:3C分析、SWOT分析)が、個人コンサルの提供価値と重複し始めたと考えられます。 - 人脈・ブランド力の欠如による信頼性の低下
大手ファームと異なり、個人では営業力・信頼力が弱く、AIによって置き換え可能な存在と見なされやすかったのではないでしょうか。 - 戦略提案ではなく実行支援への移行に乗り遅れた
単なる助言型ではなく、施策実行や現場伴走支援が求められる中、それに対応できなかったコンサルが淘汰されてしまったと見ています。
倒産した多くのコンサルタントが、「思考の高度さ」や「資料作成スキル」などを価値の源泉としてきたように思います。しかしそれらは今や、生成AIによって“補助可能”な領域になっていると感じます。
コンサルタントの仕事は、AIと社員に一部代替されている
これまで経営コンサルタントが担ってきた代表的な業務には、以下のようなものがあったと認識しています:
- 市場・競合調査
- 経営課題の可視化と整理
- 仮説立案・施策提案
- 資料作成(PowerPoint、報告書など)
- 経営層とのコミュニケーション
この中で、調査・整理・提案・資料化といった業務は、今ではChatGPT等の生成AIを活用すれば一般社員でも一定水準で行えるようになってきたと感じています。
たとえば以下のような使い方が、すでに実務の中で進んでいる印象を受けます:
- 「自社業界の3C分析をChatGPTで作成する」
- 「過去の営業データをもとに改善案を提示させる」
- 「施策案を複数パターンで列挙させ、比較検討する」
こうした例から、知的労働の一部は社員自身がAIを活用して内製化できるようになってきた時代に入っていると考えられます。
管理職に求められるのは「社内コンサルタント」的視点
生成AIの進化によって、“考える業務”そのものが変質してきているように感じています。従来のように、情報を集めて資料にまとめて仮説を提案するだけでは、もはや十分な差別化にならないのではないでしょうか。だからこそ、管理職には「社内コンサルタント」としての視点や動き方が求められると考えています。
具体的には、
- 自部門や会社全体の課題を発見する
- 組織の中でそれを“言語化”する
- ステークホルダーを動かし、実行につなげる
こうした一連の思考と推進力を、ChatGPTなどのAIと協業しながら発揮していく姿勢が、新しい管理職像につながるのではないかと思います。
経営視点で考えること。仮説を立てること。AIを使ってその精度を高めること。そして、周囲を巻き込んで実行に移すこと。
これらが、これからの100年時代を生き抜くために、管理職が身につけておきたいスキルセットではないかと私は考えています。
次回予告:第2回「経営コンサルタントの仕事を分解してみる」
次回は、実際に経営コンサルタントが行っている業務プロセスを工程ごとに細かく分解し、それぞれがChatGPTでどこまで代替可能かを解説していきたいと思います。社員やマネージャーの方が「これは自分でもできるかも」と思えるような切り口でお届けする予定です。
この連載の目的
本連載は、単なるAI活用術ではなく、“考える力”を再定義するための実践知識として、ChatGPTというツールを通して、
「考える力」×「経営視点」×「行動力」
を兼ね備えた新時代のマネージャーを育てるための手引きになればと考えています。
管理職の皆さん、変化の波に呑まれるのではなく、その波に乗って未来をリードする管理職像を、共に模索していけたら嬉しく思います。
<文/綱島佑介>



