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2016/11/05

選挙における若者の投票率は、日本の将来を左右するか?

18歳・19歳の投票率に注目集まる

今年の夏は7月10日に参議院選、7月31日に東京都知事選という2つの大きな選挙が行われました。特に参議院選に関しては、昨年の公職選挙法一部改正により、満18歳まで選挙権年齢が引き下げられて以降初の国政選挙であり、新たに選挙権を得た18歳・19歳の人の投票率に注目が集まりました。

結果はと言うと、18歳と19歳を合わせた投票率は45.45%。しかし年齢別に見ると、18歳は51.17%、19歳が39.66%と大きく差がありました。この理由については、19歳の人は大学進学や就職で地元を離れて暮らしている人が多く、住民票を現住所に移していないのではないか、そうした人たちがわざわざ地元に戻って投票をすることのハードルが高かったのではないかと言われています。

年代別の投票率は、ほぼ順位が固定

では、有権者全体および他の年代の有権者と比べると、18歳・19歳の投票率は高いのでしょうか、低いのでしょうか。3年ごとに議席の半分が改選される参議院選挙の、年代別投票率の推移を見てみます。なお、10歳代に関しては今回2016年の選挙が初めてだったため、2013年までのデータはありません。

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出典:総務省|国政選挙の年代別投票率の推移について http://www.soumu.go.jp/senkyo/senkyo_s/news/sonota/nendaibetu/

出典:総務省|国政選挙の年代別投票率の推移について
http://www.soumu.go.jp/senkyo/senkyo_s/news/sonota/nendaibetu/

今回の参院選における全体の投票率は、2013年の参院選が52.61%だったのに対して54.70%、前回から2.09pt上がりました。18・19歳の投票率は、全体の投票率よりはやや低いですが、20歳代よりは高く、30歳代と同程度となっています。

少なくとも1989年(平成元年)以降、年齢別投票率の「順位」はほとんど変わっておらず、特に20代の投票率は他の年代に比べてずっと最低で推移しています。「最近の若者は政治への関心が低い」という声が時々聞かれますが、投票率が低いのは、「最近」に限った話ではないようです

若者の投票率を上げるにはどうすればよい?

しかし、この恒常的とも言える若者の投票率の低さは、今後改善されていくのでしょうか?そして、どうすれば若者の投票率を上げられるのでしょうか?

それを考えるには、「若者がなぜ棄権するのか」を知ることが必要です。公益財団法人 明るい選挙推進協会による「第23回(2013年)参議院議員通常選挙全国意識調査」で、調査対象のうち「投票しなかった人」に棄権理由を質問しています。

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これによれば、最も多かった棄権理由は、「適当な候補者も政党もなかったから(26.4%)」。次いで「選挙にあまり関心がなかったから」「政党の政策や候補者の人物像など、違いがよくわからなかったから」が19.0%で同率2位。「仕事があったから(27.8%)」は4位で、これもかなり高い割合となっています。

※ただしこのデータは、すべての有権者に対する調査であり、例えば20歳代に限って集計した場合、違った特徴が見えてくるかもしれません。言い換えれば、年代別とのクロス集計は公表されていません。これが分かると、若者の投票率を上げるためにはどんな施策が必要なのかが、見えてくるのではないでしょうか。

下のグラフをご覧ください。

※これは、クロス集計のサンプルのためのグラフであり、データはあくまでもダミーのデータ、実際の回答とは異なります。

※これは、クロス集計のサンプルのためのグラフであり、データはあくまでもダミーのデータ、実際の回答とは異なります。

例えば、このように年代を絞って棄権理由を見てみると、20歳代に最も多い棄権理由は何なのかがより正確に把握できます。この場合は、「仕事があったから」という理由が突出して多いので、「期日前投票をもっとしやすくする」「投票時間を延ばす」「投票所に行かずともネットで投票できるようにする」といった具体策が有効ではないか、ということが見えてきます。

シルバーデモクラシーの牙城を崩せるか

年代別の棄権理由は公表されていないため分からないものの、上位3つ、「適当な候補者も政党もなかったから」「選挙にあまり関心がなかったから」「政党の政策や候補者の人物像など、違いがよくわからなかったから」を理由に投票に行かない背景として考えられそうな状況があります。

出典:総務省|参議院議員通常選挙結果 18・19歳に関しては2016年のデータ、それ以外は2013年のデータです。

出典:総務省|参議院議員通常選挙結果
18・19歳に関しては2016年のデータ、それ以外は2013年のデータです。

上のグラフは、有権者数の年代別の割合を表したものです。少子高齢化により、60歳代以上が4割近くを占めています。現在、企業の定年が60歳から65歳へと移行している時期なので一概には言えませんが、企業で働いている人が20代~50代だとすると、4割もの決定権を、仕事をリタイアした層が握っているのです

このように、有権者全体のうち高齢者が占める割合が高く、また高齢者の投票率が高いとどうなるでしょうか。

選挙で当選したい政治家は、より多数の票を得やすい高齢者に配慮した政策を優先的に打ち出す傾向が強まります。

若者は自分たちの年代にとって魅力的でない政策を見て、さらに投票意欲を低下させ、高齢者の意見がより政治に反映されやすくなる状況が生まれます。

このような構図は「シルバーデモクラシー」と言われ、政治への民意の反映という観点で、世代間に不公平が生じることが問題視されています。具体的には、年金、医療、介護などの社会保障制度の抜本的な改革が後回しにされたり、高齢者向けの支出が増やされたりすることによって、国の財政の将来性が懸念されています。

もしも若者の投票率が上がったら…?

仮に若年層、10~20歳代の投票率が、高齢者の投票率と同じくらい高くなったとしたら、選挙結果はどうなるでしょうか?

下の表は、年代別投票率調査のデータを元に、選挙当日の有権者、投票者、棄権者の人数を年代別に割り出したものです。(ただし、年代別投票率調査は188市区町村のサンプル調査のため、それを元に算出した下記の投票者数は実際の投票者数とは異なります)

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ここから、若年層(「18-19歳」+「20歳代」)の投票率が、「仮に、最も投票率が高い高齢者(60歳代)の70.07%と同じ率にまで高まった場合」の投票者数を算出したものが下の表です。

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実際の若年層の投票者数 1,216,628 + 4,316,953 = 5,533,581人
投票率が高まった場合の投票者数 1,875,546 + 8,497,463 =10,373,009人

若年層の投票者数の増加分は、
10,373,009 – 5,533,581 = 4,839,428人
となります。

この、約484万人の棄権していた若者たちが投票したら、選挙結果にどのくらいインパクトを与えるでしょうか?(これは、全投票者の7.5%に相当します)

今年の7月の参院選の結果を元にシミュレーションをしてみましょう。

選挙区は、文字通り選挙区ごとの戦いになるため、分かりやすいところで「比例区」の議席がどうなるかを見てみます。(※今回の選挙では、参議院の定数242のうちの半分、121議席が改選となりました。そのうち選挙区の議席数が73議席、比例区が48議席です)

仮に約484万人の若者たちが全て、野党第一党の民進党に投票したとすると…以下の通り、自民党・公明党は実際の獲得議席より1つずつ議席を減らし、民進党は3議席の増加となります。

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そして、自民党・公明党の「連立与党」とそれ以外の「野党」の二陣営で比較すると…

24 対 24

という結果になり、勝敗が覆る可能性が見えてきます。

ただし、もちろんこれは仮定の話であり、統計学的に、若者だけ投票率が飛躍的に上がるなどということはありえませんし、約484万人の若者全員が民進党に投票するということはありえません。また実際の選挙であれば、比例区だけではなく選挙区の結果で全体の議席数が決まってきます。したがって、実際には若者の投票率を上げたところで勝敗を覆すことはないでしょう。

しかし、このように、若者の投票率を上げることで政治への関心の高さを示せば、高齢者だけに目を向けがちな政治への牽制にはなります。もし日本の50年先、100年先を案ずるなら、その時代を生きる若者がこぞって投票に行くような選挙制度の設計が必要だと言えるのではないでしょうか。

(文/畑邊康浩)

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