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データを“見る”統計グラフ-第3回 ビジネスで使えるグラフ選び【統計学をやさしく解説】

公開日

2025年10月14日

更新日

2025年11月25日


はじめに:グラフを“選ぶ力”が、伝える力になる


これまでの2回で、データの散らばりを「箱ひげ図」で、関係性を「散布図」で見る方法を学びました。今回は、さらに実践的なテーマ――「どんなデータに、どんなグラフを使うべきか」をやさしく整理します。

ビジネスの現場では、データを“読む”だけでなく、“伝える”力が求められます。報告書やプレゼンで「グラフの選び方を間違える」と、正しい分析でも誤解を招いてしまうことがあります。グラフ選びは、まさに「データの翻訳力」です。


棒グラフ:カテゴリーの比較に強い

棒グラフは、「グループや項目ごとの違いを比較する」ときに最も使われるグラフです。たとえば、部署ごとの売上や地域別の顧客数など、カテゴリー(区分)を比較するのに向いています。

■ 棒の長さ=数量の大きさを直感的に比較できる。
■ 横棒にすると「名前が長い項目」も見やすい。
■ 棒の色を変えると、前年対比・男女別などのグループ比較も可能。


折れ線グラフ:時間の変化を追うのに最適

折れ線グラフは、「時系列の変化」を示すのに向いています。月別売上、週ごとのアクセス数、年度ごとの経費など、「変化の流れ」を把握したいときに便利です。

■ 点を線で結ぶことで、増減の傾向が一目で分かる。
■ 複数の線を重ねることで「比較」も可能。
■ ただし、時間の間隔が不均一なデータには不向き。


円グラフ:割合を直感的に伝える

円グラフは、「全体に占める割合」を示すときに使います。マーケットシェア、アンケート結果、支出構成など、比率を感覚的に理解させたい場合に適しています。

■ 全体=100%を分割して構成比を表現。
■ 色やラベルで明確に区別することが重要。
■ 3D円グラフは見た目は派手でも、実際の比率が誤解されやすいので避ける。


箱ひげ図:ばらつきを比較するのに便利

箱ひげ図は、「データの分布やばらつきを比較」するときに適しています。平均や中央値だけでは分からない、データの広がりを伝えることができます。

■ 箱の高さ(または幅)=データのばらつき。
■ 中央線=中央値。外れ値も可視化できる。
■ チーム比較・年度比較に使うと違いが一目瞭然。


散布図:関係性を探る“対話型”グラフ

散布図は、「2つの変数の関係」を視覚化するグラフです。前回学んだように、売上と広告費などの関係を探るのに役立ちます。

■ 点の集まり方から関係の強さが見える。
■ 外れ値(例外)を見つけやすい。
■ 他の要因(第三の変数)も考慮する視点が大切。


グラフ選びのコツ:目的に合わせて“伝わる”形を

どんなグラフも万能ではありません。大切なのは、「何を伝えたいか」から逆算して選ぶことです。以下に簡単な目安をまとめます。

■ 「比較したい」→ 棒グラフ
■ 「変化を追いたい」→ 折れ線グラフ
■ 「割合を示したい」→ 円グラフ
■ 「ばらつきを見たい」→ 箱ひげ図
■ 「関係を見たい」→ 散布図



まとめ:正しいグラフ選びが、意思決定を変える

グラフは、単なる「見せ方」ではなく、情報を伝える戦略ツールです。見る人の理解を助け、意思決定の精度を上げる力を持っています。

正しいグラフを選ぶことは、正しい結論へ導く第一歩。あなたのプレゼンやレポートが、「わかりやすい」と評価されるためには、分析そのものよりも「伝え方の設計」が鍵になります。


シリーズ総括:データを“見る力”から“伝える力”へ

これで「データを“見る”統計グラフ」シリーズ全3回は完結です。第1回では“データのばらつき”を箱ひげ図で可視化し、第2回では“2つの変数の関係”を散布図で読み解き、そして今回の第3回で“目的に応じたグラフの選び方”を整理しました。

この3回を通じて、統計グラフは単なる飾りではなく、「データを正しく理解し、共有するための言語」であることをお伝えしてきました。見る力、選ぶ力、そして伝える力――この3つが揃うことで、数字に強いビジネスパーソンへと一歩近づけます。

今後は、こうしたグラフをより効果的に見せるための“デザイン”や“ストーリーテリング”の工夫についても扱っていく予定です。これからも、「統計学をやさしく解説」シリーズで、データを活かす知恵を一緒に学んでいきましょう。

<文/綱島佑介>

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