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「データ収集の種類」-第1回:量的データと質的データ【統計学をやさしく解説】

公開日

2025年9月26日

更新日

2025年10月20日

はじめに

以前の記事では「統計的問題解決の方法」を5回に分けてお届けしました。今回からは新しいシリーズとして「データ収集入門」を全4回で解説していきます。まず第1回では、データを理解するうえで欠かせない基本である「量的データ」と「質的データ」の違いについて取り上げます。


統計学というと難しい数式や計算をイメージしてしまいがちですが、実は私たちの身の回りには統計につながるヒントがあふれています。例えば「先月の売上は増えたのか減ったのか」「どの色の商品が一番人気か」といった日常の問いも、データの見方を知っていればぐっと分かりやすくなります。本記事では、この2つの違いを文系や初心者の方でもスッと理解できるよう、身近な例を交えて丁寧に解説していきます。


量的データとは?

量的データとは、数値で表されるデータ のことです。足し算や平均を計算できるのが特徴で、ビジネスの現場では「売上の増減」や「顧客数の推移」を把握する際に欠かせません。数字として扱えるからこそ、比較や傾向の可視化に直結するのです。

・例1:売上金額(10万円、12万円、15万円)→ 月ごとの売上トレンドを確認できる
・例2:従業員の年齢(25歳、30歳、45歳)→ 組織の年齢構成や人材戦略に活用できる
・例3:来店客数(100人、120人)→ 集客施策の効果を測定できる

👉 共通点:大小比較や平均値を出すことで、「どれくらい増えたか」「どこに改善余地があるか」を把握できる。


質的データとは?

質的データとは、カテゴリーで表されるデータ のことです。数字ではなく「区分」や「名前」で整理されるため、平均や合計を出すのではなく「どのグループが多いか」「どんな傾向があるか」を見るのに向いています。ビジネス現場では顧客分析やアンケート調査など、マーケティング戦略を考える上で欠かせないデータです。

・例1:性別(男性/女性/その他)→ ターゲット層ごとの反応を比較できる
・例2:顧客の職業(会社員/学生/主婦など)→ 商品の購買層を特定できる
・例3:アンケートで好きな色(青/赤/緑)→ 人気商品やデザイン企画に活かせる

👉 共通点:平均は出せないが、割合や構成比を使って「どの層が多いか」を把握できる。


量的データと質的データの違い

種類 特徴 分析方法
量的データ 数値で表される 売上、年齢、来店数 平均・中央値、散布図、時系列分析
質的データ 区分やカテゴリ 性別、職業、色の好み 割合、クロス集計、円グラフ

ここは注意!
質的データは、数字が割り当てられていても「数値」として平均を出すことには意味がありません。例えば「男性=1、女性=0」とコーディングして平均をとり、0.5になったとしても「半分が男性」という意味ではなく、ただ数字の平均を計算しただけで解釈できません。質的データはあくまでカテゴリとして扱い、割合や構成比で分析するのが正しい方法です。

見分けるポイント
計算できるか? 平均や合計を計算して意味がある → 量的データ。
区分けか? 「男性/女性」「赤/青/緑」のようにカテゴリ分けしかできない → 質的データ。
数値でも注意! 従業員番号や郵便番号のように数字でも計算に意味がないものは質的データとして扱う。


ビジネスでの活用例

売上分析(量的データ):平均売上を出して「通常水準」を把握。前年比を比較して成長を確認。
顧客属性分析(質的データ):年齢層や職業別に購買傾向を整理し、マーケティング戦略に活用。
組み合わせ分析:例えば「年代別 × 平均購入額」を見れば、どの年代が最も価値ある顧客層かが分かります。

まとめ

・データは 量的データ(数値)質的データ(カテゴリ) に分けられる。
・量的データは「平均・比較」が得意。質的データは「割合・構成」が得意。
・ビジネスでは両方を組み合わせることで、売上や顧客行動をより深く理解できる。

今回ご紹介した2種類のデータを理解しておくことは、単なる基礎知識ではなく「どんな分析が可能か」を決める重要な入り口です。なぜなら、質的か量的かによって使える分析手法がまったく変わるからです。例えば売上の推移(量的データ)は平均や増減率で議論できますが、顧客の職業(質的データ)は割合やクロス集計でしか捉えられません。正しく見分けられなければ、誤った結論につながってしまうのです。

次回は、こうしたデータを「全体」と「一部」の視点からどう捉えるのかに踏み込みます。母集団と標本の考え方を理解すると、部分的なデータから全体を推測するという、ビジネスでも頻繁に直面する場面に役立つ力が身につきます。ぜひ楽しみにしてください。

<文/綱島佑介>

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