マスログ

広告から会話へ変わった10年 - 2010年代

公開日

2025年8月23日

更新日

2025年11月5日

前回は「スマホ&クラウド」の時代を振り返り、モバイルとクラウドが働き方をどう変え、場所や時間の制約を取り払ったのかを見てきました。

この連載は、Windows95発売30周年という節目に、技術革新とともに変化してきた社会人のスキルとリスキリングの歴史をたどるものです。PC革命からインターネット普及期、そしてモバイル化を経て、次に訪れた大きな波が「SNSビジネス活用期」となります。ここからは、企業と個人の境界を曖昧にし、情報発信の在り方そのものを変えたSNSの時代を見ていきます。



背景:Facebook・Twitter・Instagram・LINE――双方向コミュニケーションと瞬時拡散でビジネスを変えた4大SNS

2010年代、SNSは単なる交流の場からビジネスの現場へと急速に浸透しました。以下は主要SNSのサービス開始年と特徴をまとめた対比表です。

プラットフォーム サービス開始年 主な特徴
Facebook 2004年(日本は2008年頃本格展開) 実名制、企業ページによる広報、コミュニティ形成に強み
Twitter 2006年(日本は2008年頃普及) 140文字の短文投稿、リアルタイムな情報拡散、ハッシュタグ文化
Instagram 2010年 写真・動画中心、ビジュアルブランディング、ストーリーズ機能
LINE 2011年 無料通話・メッセージ機能、公式アカウントで顧客と直接つながる、情報配信

Facebookページは、ネットユーザーの多くが実名で登録し、友人やコミュニティとつながる場である特性を生かし、企業広報の新たな窓口となりました。Twitterは速報性と拡散力に優れ、ニュースやキャンペーン情報を瞬時に広められるツールとして活用されました。Instagramはスマホカメラの高性能化とともに写真・動画投稿が容易になり、ビジュアルを軸にブランドイメージを訴求する場として急成長しました。LINEはスマホの普及と同時に、顧客とのダイレクトかつ即時のコミュニケーションが可能なツールとして広がり、メルマガに代わる情報配信チャネルとして注目されました。

これらが急速に普及した背景には、スマホの普及による常時接続環境、消費者が情報を受け取る時間や場所を自ら選べるようになったこと、そして企業側がマス媒体中心の広告から多様なチャネル戦略へ移行せざるを得なくなったという時代の流れがあります。結果として、これらのSNSは顧客と企業の距離を縮め、双方向でのやりとりを可能にし、従来の一方通行型広告とは全く異なるマーケティングのステージを作り上げていくことになります。

必要になったスキル

  • 短くわかりやすい発信力:限られた文字数や画面内で、ユーザーの関心を一瞬で引く文章やビジュアルを作る力。文章力だけでなく、プラットフォームの特性に合わせたレイアウトや表現手法を選択する理解も必要。
  • 炎上リスク管理・ブランド構築:投稿内容の事前チェック体制や危機対応マニュアルの整備、ブランドの世界観を一貫して伝えるスキル。アルゴリズムの変更やトレンド変化にも対応できる柔軟性が求められる。
  • SNS分析・改善力:インサイト分析やハッシュタグ戦略を活用し、投稿の効果を数値化・改善する力。各SNSの管理画面や分析ツールの操作スキルも含まれる。
  • 顧客対応スキル:DMやコメントへの即時かつ適切な対応で、顧客体験を向上させる能力。SNS特有のテキストやスタンプ、画像などのやりとりを理解し使いこなす力も重要。
  • SNSプラットフォーム操作能力:投稿機能や広告マネージャー、スケジューリングツールを効率的に使いこなす実務スキル。

不要になったスキル

  • 広告はマス媒体一択という固定観念:テレビ・新聞・雑誌中心の一方的な広告戦略から脱却し、SNSを含む複数チャネルの組み合わせが前提に。
  • 情報発信の長文偏重:長文のプレスリリースや紙ベースのニュース配信だけでは、情報のスピードと拡散力に対応できなくなった。
  • 単方向型コミュニケーションの固定化:企業からの一方的な告知のみではユーザーの関心を維持できなくなり、対話型の発信が必須となった。
  • 広告効果測定の勘と経験頼み:クリック数やエンゲージメント率などの数値指標を用いない評価方法は時代遅れに。
  • 限られた広告枠への依存:枠や放映時間に制限のあるマスメディア依存から、無制限かつ常時発信可能なSNSへ移行。
  • 地域限定の訴求のみ:SNSにより地域や国境を超えて発信できる環境が整い、ローカル前提の戦略は見直しを迫られた。

※文系・初心者向け動画多数展開!まずは無料登録を!!

当時のリスキリング状況

SNS黎明期、多くの企業では「誰が担当するのか」という人材配置から議論が始まりました。部署横断的なスキルが求められ、SNS運用の研修や外部セミナーが盛んに行われました。

また、SNSに限らず、アクセス解析、CRM、統計、データ分析、BIツールなどの活用スキルも強く求められ、「発信力+分析力」の両輪で企業研修が進められました。

一方で、リスク管理が甘い企業では炎上を経験することもあり、ガイドライン整備・教育が進められました。

教訓:情報発信は企業と個人の境界をなくし、透明性と即時対応が必須に

PC革命で「誰もが使える」ようになり、インターネットで「誰もが調べられる」ようになり、クラウドで「どこでもつながれる」ようになった――そしてこのSNS時代、「誰もが発信できる」ようになったのです。

企業全体や個人レベルでの情報発信がブランド価値に直結する時代。信頼を築く鍵は、透明性とスピード。ここではもう、“広報だけの仕事”では済まされなくなりました。

次回予告:データサイエンス時代(2010年代後半〜2020年代前半)

次章では、統計学の基礎から機械学習、そして高度なデータ分析へと進化した「データサイエンス時代」を振り返ります。SNS活用で蓄積された膨大なデータをどう分析し、ビジネスの意思決定や予測に活かしてきたのか。BIツールやPython・Rといった分析環境、AIの前段階としてのアルゴリズム活用など、生成AI時代へつながる重要な橋渡しとなった流れを追います。

<文/綱島佑介>

新着記事

同じカテゴリーの新着記事

同じカテゴリーの人気記事

CONTACTお問い合わせ

個別講義や集団講義、また法人・団体向けの研修を行うスペース紹介です。遠人に在住の方や自宅で講義を受けたい方はオンライン講座をご用意しております。よくある質問はこちら