いつまで続く?物価高。スーパーの価格データで探る、家計を守る賢い買い物術
公開日
2025年8月20日
更新日
2025年10月6日
この記事の主な内容
「また値上がり…」スーパーでため息をつく、あなたへ
スーパーマーケットの通路を歩きながら、見慣れた商品の値札に思わず足が止まる。「また値段が上がっている…」。そんな小さなため息が、最近の買い物では日常になっていないでしょうか。毎月の食費がじわじわと家計を圧迫し、「給料はなかなか上がらないのに、どうして物価ばかりが上がり続けるのだろう」という漠然とした不安を感じている方は、決して少なくないはずです。
この終わりの見えない物価上昇の波に対して、私たちはただ耐えるしかないのでしょうか。いいえ、そんなことはありません。不安の正体は、状況を正確に知らないことから生まれます。ならば、信頼できる「データ」を羅針盤にして、現状を正しく理解し、賢く生活する方法を見つければよいと思います。
この記事では、単なる節約術の紹介ではなく、総務省統計局が毎月公表している「小売物価統計調査」や「消費者物価指数」といった、私たちの生活に最も近い公式データを用いて、「なぜ」「何が」「どれくらい」価格が上がっているのかを、一つひとつ丁寧に解き明かしていきます。そして、そのデータ分析から導き出された、具体的で今日からすぐに実践できる「賢い買い物術」を提案します。データを味方につけることで、漠然とした不安を具体的な行動に変え、主体的に家計を防衛する力を考えてみましょう。
日本の「物価の今」をデータで客観視する
物価高という大きなテーマを理解するために、まずは日本全体の状況を映し出す最も重要な指標から見ることが大切です。それが「消費者物価指数(CPI)」となります。
1-1.家計の体温計「消費者物価指数(CPI)」とは?
消費者物価指数(Consumer Price Index、略してCPI)は、しばしば「家計の体温計」と表現されます。これは、全国の世帯が購入する様々な商品やサービスの価格変動を総合的に測定した指標だからです。食料品はもちろん、家賃、光熱費、医療費、教育費、娯楽サービスまで、約596品目もの幅広い対象が含まれており、私たちの生活実感に非常に近い経済指標と言えます。
この指数は、単に物価の動向を知るためだけのものではありません。日本銀行が金融政策(例えば金利の上げ下げ)を決定する際の重要な判断材料になるほか、私たちの年金支給額が物価の変動に合わせて調整される際にも基準として用いられます。つまり、CPIは政府の政策から私たちの暮らしまで、社会の隅々に影響を与える、極めて重要なデータなのです。
1-2.グラフで見る、物価上昇のリアル
では、その「家計の体温計」は今、どのような数値を示しているのでしょうか。最新のデータを見てみると、「総合指数は2020年を100として111.7、前年同月比で3.3%の上昇」といった数値が報告されています。しかし、数字だけでは実感が湧きにくいかもしれません。そこで、過去約5年間の推移をグラフで見てみましょう。
【グラフ1】消費者物価指数の推移(2020年~2025年)

出典: 総務省統計局「消費者物価指数(2020年基準)」より作成
このグラフからは、いくつかの重要な点が読み取れます。まず、2022年頃からすべての指数が顕著な右肩上がりを示しており、物価上昇が継続的なトレンドであることが一目瞭然です。
特に注目すべきは、私たちの食生活に直結する「食料指数(赤線)」の上昇角度が、全体の動きを示す「総合指数(青線)」よりも急である点です。これは、他の品目に比べて食料品の値上がりが特に家計に重くのしかかっているという、多くの人の実感を裏付けています。
さらに重要なのが、「生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数(緑線)」、通称「コアコア指数」です。この指数は、天候によって価格が変動しやすい野菜や、国際情勢に左右される原油価格などを除いて算出されるため、物価の基調的な強さ、いわば「日本経済の基礎体温」を示すとされています。このコアコア指数までもが上昇を続けているという事実は、現在の物価高が、一時的な天候不順や原油高だけが原因ではない、より構造的で根深い問題であることを示唆しています。これは、たとえガソリン価格が少し落ち着いたとしても、食品全体の価格がすぐには元に戻らない可能性が高いことを意味しており、私たちは長期的な視点で家計管理を考える必要があると言えるでしょう。
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何が、どれくらい上がった?スーパーのレシートから見える真実
日本全体の物価が上がっていることは分かりました。しかし、家計を守るためには、より具体的に「どの品目が」「どれくらい」値上がりしているのかを知る必要があります。この章では、スーパーの棚の値札に最も近いデータを使って、私たちの食卓の現状を分析します。
2-1. 分析の武器:「小売物価統計調査」を使いこなす
本章の分析で用いるのは、総務省統計局が毎月実施している「小売物価統計調査」です [6, 7]。この調査は、全国の約167市町村で、実際に販売されている商品の小売価格やサービス料金を調査員が直接調べるもので、まさに「生きた価格データ」と言えます [3, 5]。消費者物価指数(CPI)も、この小売物価統計調査の価格データをもとに算出されており、その信頼性は非常に高いものです [4]。
これらの貴重なデータは、「e-Stat」という政府統計の総合窓口サイトを通じて、実は誰でも閲覧・ダウンロードすることが可能です [8, 9]。データに触れることは、現状を客観的に理解するための第一歩です。
2-2. データで見る「値上がり優等生」ランキング
それでは、小売物価統計調査のデータを用いて、この3年間で特に価格が上昇した品目を見てみましょう。日々の買い物での実感が、データによって裏付けられるはずです。
【表1】食料品・値上がり率ランキング(過去3年間比較の例)
| 順位 | 品目名 | 3年前の平均価格 (円) | 現在の平均価格 (円) | 上昇率 (%) | 主な要因 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 食用油 (1000g) | 350 | 595 | +70% | 原料高、円安 |
| 2 | 鶏卵 (10個) | 210 | 315 | +50% | 鳥インフルエンザ、飼料高 |
| 3 | たまねぎ (1kg) | 280 | 406 | +45% | 天候不順による不作 |
| 4 | 食パン (1斤) | 170 | 204 | +20% | 輸入小麦高、エネルギー高 |
| 5 | マヨネーズ (450g) | 200 | 238 | +19% | 食用油・鶏卵の価格上昇 |
| 6 | 牛乳 (1000ml) | 205 | 236 | +15% | 飼料高、エネルギー高 |
| 7 | 豚肉バラ (100g) | 150 | 171 | +14% | 飼料高、輸入コスト増 |
注: 上記の価格は解説のためのモデルケースです。実際の価格は総務省「小売物価統計調査」をご参照ください。
この表を見ると、単に「物価が上がった」というだけでなく、品目によって上昇率に大きな差があることが分かります。特に食用油や鶏卵、たまねぎといった品目の上昇が際立っています。興味深いのは、マヨネーズのように、値上がり率が高い食用油と鶏卵を主原料とする加工食品も、連動して価格が上昇している点です。このことから、値上がりの構造は「加工度」と「輸入依存度」という2つの軸で整理できると考えられます。食用油や食パンのように、原料を輸入に頼る品目は、後述する円安などのグローバルな要因の影響を直接受けやすくなります。
2-3. 荒波に耐える「価格安定のヒーロー」たち
値上がりのニュースばかりでは気持ちが沈んでしまいますが、データは希望の光も示してくれます。同じ調査から、価格が比較的安定している、あるいは上昇率が穏やかな「価格安定のヒーロー」とも呼べる品目を見てみましょう。
【表2】価格が比較的安定している食料品リストの例
| 品目名 | 3年前の平均価格 (円) | 現在の平均価格 (円) | 上昇率 (%) | 安定している理由 |
|---|---|---|---|---|
| もやし (1袋) | 28 | 30 | +7% | 屋内栽培、国内生産 |
| きのこ類 (ぶなしめじ 1株) | 98 | 105 | +7% | 屋内栽培で天候に非依存 |
| 豆腐 (1丁 300g) | 70 | 75 | +7% | 主に国産大豆、加工度低い |
| 納豆 (3パック) | 85 | 90 | +6% | 主に輸入大豆だが価格転嫁が緩やか |
| 米 (コシヒカリ 5kg) | 2,310 (前年) | 3,285 (現在) | +42.2% | 国内自給率は高いが近年価格は上昇傾向 [10] |
こちらの品目には共通点が見られます。もやしやきのこ類のように、工場のような屋内の施設で栽培され、天候の影響を受けにくいものや、豆腐のように国内での生産が中心のものです。一方で、同じく国内自給率が高い米も、天候などの影響から近年価格が上昇するケースも見られます [10]。
これらの「価格安定品」は、家計管理において非常に重要な役割を果たします。なぜなら、単に安いだけでなく、「価格の予測可能性が高い」からです。価格が乱高下する品目は、月々の食費の計画を立てるのを難しくしますが、価格が安定している品目を食事の中心に据えることで、年間の食費を見通しやすくし、精神的な安定にも繋がります。賢い買い物とは、単に目先の安さだけを追うのではなく、こうした「価格の安定性」という新たな価値基準を持つことではないかと考えます。
なぜ?食料品値上がりの裏側にある3つの要因
多くの品目が値上がりしている背景には、単一ではない、複数の要因が複雑に絡み合っています。ここでは、その中でも特に影響の大きい3つの要因を、データと共に掘り下げていきます。
3-1.要因① グローバル経済の波:円安とエネルギー価格の高騰
現在の物価高を語る上で避けて通れないのが、グローバルな経済環境の変化です。特に「円安」と「エネルギー価格の高騰」は、日本の食卓に直接的な影響を及ぼしています。
日本の食料自給率はカロリーベースで38%(令和4年度)と低く、多くの食品原料を輸入に頼っています。例えば、パンや麺類の主原料である小麦、食用油の原料となる菜種や大豆、そして牛や豚、鶏の飼料となるトウモロコシなどです。円安が進行すると、同じ1ドル分の原料を買うのにより多くの円が必要になるため、輸入コストが自動的に上昇します。このコスト増が、最終的にスーパーでの販売価格に転嫁されるのです。
同時に、原油価格の高騰も深刻な影響を与えています。ガソリン代が上がれば、生産地から市場へ、そしてスーパーへと商品を運ぶトラックの輸送費が上昇します。また、食品を加工する工場の電気代やガス代、野菜を育てるビニールハウスの暖房費など、生産から流通に至るあらゆる段階でエネルギーは不可欠であり、そのコスト上昇分が価格に上乗せされているのです。
【グラフ2】ドル円為替レートと原油価格(WTI)の推移

出典: 日本銀行時系列統計データ検索サイト、資源エネルギー庁統計等より作成
このグラフを見ると、円安(青線の上昇)と原油価格(オレンジ線の上昇)が、食料品の価格が上がり始めた時期と強く連動していることがわかります。この2つの波が、日本の物価全体を押し上げる大きな圧力となっているのです。
3-2.要因② 地球からの警告:天候不順と異常気象
グローバルな要因に加え、私たちの足元、国内の天候もまた、食品価格、特に生鮮野菜の価格を大きく左右します。近年、夏場の記録的な猛暑や、局地的な豪雨、あるいは長期的な干ばつといった「異常気象」が頻発しており、農産物の安定供給を脅かしています。
例えば、農林水産省が公表する「野菜の生育状況及び価格見通し」では、「主産地において、高温、干ばつの影響により生育不良等がみられ、出荷数量は平年を下回り、価格は平年を上回って推移する見込み」といった報告が頻繁に見られます [15, 16]。
ケーススタディ:2022年のたまねぎ高騰
2022年にたまねぎの価格が一時的に急騰したことを覚えている方も多いでしょう。この背景には、天候不順がありました。気象庁の年報によると、2022年は全国的に年平均気温が高く、特に主産地である北海道などで生育期間中の天候が不安定でした。これによりたまねぎの収穫量が減少し、市場への供給が滞った結果、中央卸売市場での価格が上昇し、最終的に私たちの食卓に届く小売価格も大幅に引き上げられたのです [14]。
3-3.サプライチェーンの危機:鳥インフルエンザと人手不足
経済や天候といったマクロな要因だけでなく、特定の品目の供給網(サプライチェーン)を揺るがす個別の出来事も、価格高騰の引き金となります。その典型例が、2023年に発生した「エッグショック」です。
ケーススタディ:2023年の「エッグショック」
2023年、鶏卵の価格は過去に例を見ない水準まで高騰しました。最大の原因は、全国の養鶏場で発生した高病原性鳥インフルエンザ(HPAI)の感染拡大です。感染拡大を防ぐために、数百万羽もの採卵鶏が殺処分され、鶏卵の生産量が物理的に激減しました。
さらに、この供給不足に追い打ちをかけたのが、要因①で述べた円安と、ロシアによるウクライナ侵攻などに起因する世界的な穀物価格の上昇です。これにより鶏の餌となる飼料の価格が歴史的な水準まで高騰し、生産コストが大幅に増加しました [12]。供給が減り、かつ生産コストも上がるという二重苦が、深刻な価格高騰を引き起こしたのです。
これら3つの要因は、それぞれ独立しているわけではありません。円安(要因①)が飼料価格を高騰させ、エッグショック(要因③)をより深刻にする。エネルギー価格の高騰(要因①)が、天候不順(要因②)対策のためのハウス栽培のコストを押し上げる。このように、複数の要因が相互に影響し合う「複合的危機」こそが、現在の物価高の本質です。この構造を理解すると、「何かが解決すればすぐに物価は元に戻る」という楽観的な見通しではなく、この状況がしばらく続く可能性を前提とした、長期的な家計防衛策の重要性が見えてきます。
データが教える!今日からできる「賢い買い物術」
物価上昇の背景にある複雑な要因を理解した上で、いよいよ具体的な対策に移ります。ここからは、これまでのデータ分析に基づいて、今日からすぐに実践できる4つの「賢い買い物術」を提案します。
4-1.戦略① 「値上がり品」を「価格安定品」に置き換える
最も直接的で効果的な方法は、第2章で特定した「値上がり率が高い品目」の購入を一時的に控え、代わりに「価格が安定している品目」を積極的に食生活に取り入れることです。これは、我慢の節約ではなく、知恵を使った「食品のスイッチング(置き換え)」です。
【表3】今日からできる!賢い食品スイッチング術
| こんな時… | 値上がり中の選択肢 | 賢い代替案 | ポイント |
|---|---|---|---|
| パスタ料理が食べたいけど… | 輸入パスタ (上昇率 +25%) | 国産米粉の麺、うどん (上昇率 +8%) | 米は国内自給率が高く価格が安定。もちもちした食感も楽しめます。 |
| 葉物野菜が高い… | レタス、ほうれん草 (天候で価格変動大) | もやし、きのこ類、豆苗 (価格安定) | 屋内栽培の野菜は天候に左右されず、年間を通じて価格が安定しています。 |
| パンの消費を少し減らしたい… | 食パン (上昇率 +20%) | ご飯 (米) (上昇率 +5%) | 主食を価格が安定しているお米中心にシフトするだけで、食費全体を抑制できます。 |
| 鶏肉の代わりに… | 鶏もも肉 (飼料高で上昇傾向) | 豆腐、厚揚げ、魚の缶詰 | 植物性たんぱく質や、長期保存可能で価格が安定している缶詰を上手に活用します。 |
この置き換え術のポイントは、食生活の楽しさを損なわないことです。新しい食材やレシピに挑戦するきっかけと捉えることで、節約をポジティブな行動に変えることができます。
4-2.戦略② 食費節約の切り札「プライベートブランド(PB)」を使いこなす
かつては「安かろう悪かろう」というイメージもあったプライベートブランド(PB)ですが、今やその品質は劇的に向上しています。大手小売業者が開発するPB商品は、品質管理が徹底され、中にはナショナルブランド(NB)を超えるような付加価値の高いプレミアム商品も登場しています。
データを見ても、PBの成長は明らかです。日本のPB市場規模は数兆円規模に達しており、例えばイオンの「トップバリュ」やセブン&アイ・ホールディングスの「セブンプレミアム」は、それぞれ年間で数千億円から1兆円を超える売上を記録する巨大ブランドに成長しています。これは、多くの消費者がPBの価値を認め、積極的に選択している証拠です。
特に物価が上昇する局面では、PBの価値はさらに高まります。米国では、近年のインフレ下でPB商品の売上成長率がNBの約2倍に達したという報告もあり、賢い消費者がインフレ対策としてPBを選んでいることがうかがえます。次の買い物では、いつも手に取るNB商品の隣にあるPB商品を、ぜひ一度試してみてはいかがでしょうか。その品質と価格のバランスに、新たな発見があるかもしれません。
4-3.戦略③ 最大の節約は「フードロス」をなくすこと
様々な節約術がありますが、実は最も効果が高く、今日から始められるのが「フードロス(食品廃棄)をなくす」ことです。「食品を捨てることは、お金をそのまま捨てているのと同じ」と言っても過言ではありません。
消費者庁や研究機関の調査によると、日本の家庭から出る食品ロスによる経済的損失は非常に大きく、1世帯あたり年間で約5.6万円もの削減余地があると試算されています [10]。物価上昇によって家計の負担が年間約2万円増加するという試算と比較しても、フードロス削減がいかに大きなインパクトを持つかが分かります。
冷蔵庫の中身を把握してから買い物に行く、野菜の皮や芯まで使い切るレシピを試す、日持ちのしないものから先に使う「手前どり」を徹底するなど、小さな工夫の積み重ねが、結果的に年間数万円という大きな節約に繋がります。物価高で増えた支出を、フードロス削減で相殺する。これこそが、最も持続可能で賢い家計防衛策と言えるでしょう。
4-4.【応用編】買い物の「曜日」と「時間帯」を意識する
最後に、少し応用編として、買い物に行く「タイミング」を意識してみましょう。ある調査によると、スーパーマーケットの平均客単価は、平日が約1988円であるのに対し、土日祝日は約2259円と、休日の方が高くなる傾向があります [23]。これは、休日に「まとめ買い」をする人が多く、つい予定外のものまで買ってしまう「ついで買い」が発生しやすいためと考えられます。週末にまとめ買いをする場合は、事前に買うものをリストアップし、計画的に行動することが重要です。
また、時間帯もポイントです。スーパーのPOSデータ分析によると、多くの店舗では客足がピークを迎える夕方に向けて、総菜や生鮮食品の品出しに力を入れます。そして、閉店時間が近づくにつれて、売れ残りそうな商品に「見切り品」として割引シールが貼られ始めます。このタイミングを狙うことで、品質には問題のない商品をより安く手に入れることが可能です。
これらの戦略は、どれか一つだけを完璧にこなす必要はありません。「まずは簡単なPBから試してみる」「次に週末のまとめ買いの前にリストを作ってみる」「そして長期的にフードロス削減に取り組む」というように、ご自身のライフスタイルに合わせて、できることから始めてみることが大切です。
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データを知れば、物価高は怖くない
本記事では、総務省の公的な統計データを基に、現在の物価上昇の全体像から、品目ごとの詳細な動向、そしてその背景にある複合的な要因までを分析してきました。データは、私たちの漠然とした不安に客観的な輪郭を与えてくれます。食用油や鶏卵がなぜ高いのか、逆にもやしやきのこがなぜ安定しているのか。その理由を知るだけで、日々の買い物の景色は少し違って見えるはずです。
物価上昇という大きな経済の波を、一個人が止めることはできません。しかし、私たちには「データ」という科学があります。どの商品が荒波に揉まれ、どの商品が穏やかな値段を続けているのか。その情報があれば、どの食品に乗り換えるべきか、自分自身で判断することができます。
「価格安定品」への置き換え、品質の向上した「PB」の活用、そして最大の節約である「フードロス削減」。データが教えてくれるこれらの戦略は、単に支出を切り詰める「我慢の節約」ではありません。知恵と工夫で変化に対応し、むしろ生活をより豊かに、そして外部環境の変化に強いものへと進化させる「攻めの家計管理」です。
物価高の時代は、まだしばらく続くかもしれません。しかし、正しい知識と賢い選択という武器があれば、私たちはこの困難な時代を乗り越える力を持っています。まずは次の買い物で、価格が安定している「きのこ」や「豆腐」を、一つカゴに入れてみることから始めてみませんか。その小さな一歩が、あなたの家計を守る大きな力になるはずです。
<文/綱島佑介>
引用・出典一覧
- 総務省統計局「小売物価統計調査」
- 総務省統計局「消費者物価指数(CPI)」
- 政府統計の総合窓口「e-Stat」
- 農林水産省「食料自給率・食料自給力について」
- 日本銀行「時系列統計データ検索サイト」
- 資源エネルギー庁「統計情報」
- 農林水産省「野菜の生育状況及び価格見通し(毎月更新)」
- 気象庁「気候変動監視レポート」
- 農林水産省「鳥インフルエンザに関する情報」
- 消費者庁「食品ロス削減」





