日本はまだ年功序列なのか?-ビジネス情報収集入門②-
公開日
2025年2月1日
更新日
2025年3月9日

WAKARAのマスログ(mathlog)シリーズ
今回は、綱島佑介が送る「ビジネス情報収集」第2弾。
「民間給与実体統計調査」から「年功序列」について考えていく話です。
【主な内容】
1.年功序列とは
2.10年前と比較して考えると
3.年齢別データを確認する
4.勤続年数の平均給与は?
5.まとめ
▷【文字で読みたい方はこちら】
➡ https://wakara.co.jp/mathlog/20220214
▷【WAKARA WEB:数学は大冒険だ】
▷【大人のための教室 Facebook】
日本はまだ年功序列なのか?-ビジネス情報収集入門②-
こんにちは!今回もビジネス情報収集の一環として、「日本はまだ年功序列なのか?」というテーマについて考えていきます。以前、年収データの分析についてお話ししましたが、今回は民間給与実態統計調査をもとに、現在の年功序列の実態を探ってみましょう!
年功序列とは何か
年功序列とは、年齢や勤続年数が昇進や昇給に大きく影響する制度のことです。もちろん、個々の能力も評価の基準になりますが、若手がどれだけ優秀でも、一定の年齢や経験を積まなければ昇格が難しいという特徴があります。
例えば、私が以前勤めていた企業では、入社から5年が経たないと主任試験を受けることすらできませんでした。また、昇給も毎年少しずつ上がる仕組みで、一気に大幅な昇給というのはほとんどありませんでした。こうした環境では、同じ業務を担当していたとしても、入社10年目の社員と2年目の社員の給与に大きな差が生まれるのは当然のことになります。
しかし、近年では「実力主義」を掲げる企業が増えてきたとも言われています。では、本当に日本の年功序列は崩れつつあるのでしょうか?データをもとに検証してみます!
10年前との比較
最近、「労働力不足」という言葉を耳にする機会が増えてきました。しかし、実際のデータを見てみると、10年前の平成22年(2010年)には給与所得者数が4,500万人だったのに対し、令和2年(2020年)には5,000万人と、約692万人増えています。つまり、労働者の数そのものは増加しているのです。
ただし、直近のデータでは労働者数が減少傾向にあります。その背景には、新型コロナウイルスの影響による雇用環境の変化が影響していると考えられます。そのため、一概に「労働力が足りない!」とは言えず、職種ごとに人手不足の度合いが異なる可能性があります。
ニュースなどでは「労働力不足」といった言葉が使われることが多いですが、データをしっかりと分析しないと、実態とは異なる印象を持ってしまうこともあるのです。
年齢別給与データの分析
次に、年齢別の給与データを見てみると、興味深い違いがありました。男女で傾向が異なっているのです。
男性の給与は、19歳から徐々に上昇し、60~64歳を境に減少します。一方、女性の給与は25歳から59歳まで大きな変化がなく、60歳を超えると下がるという傾向が見られました。
この違いの背景には、雇用形態の差が関係している可能性があります。たとえば、男性の給与所得者は約3,000万人のうち、非正規雇用の割合は約10%程度です。一方、女性の給与所得者は約2,000万人のうち、約38%が非正規雇用です。つまり、女性の給与の伸びが少ないのは、非正規雇用の比率が高いため、大幅な昇給が難しいという事情があると考えられます。
男性は正社員比率が高いこともあり、年齢とともに給与が上がる「年功序列」の影響を受けやすいようです。一方で、女性は年齢による給与の変動が少なく、年功序列の影響が薄いと言えそうです。
勤続年数と給与の関係
では、勤続年数別の給与データを見てみるとどうでしょうか?
結果としては、勤続年数が長くなるほど給与が上昇し、35年以上を境に大きく減少するという傾向がありました。しかも、この傾向は男女ともに共通していました。
つまり、「長く働けば働くほど給与が上がる」という仕組みは、現在も根強く残っていることがわかります。ただし、35年以上で給与が減少するのは、多くの企業で定年が近づくと役職を外れるケースが増えることが影響していると考えられます。
このように、勤続年数が給与に大きく影響する仕組みは、まさに年功序列の特徴です。最近では、転職市場が活発になり、実力主義を取り入れる企業も増えてきたと言われますが、データを見る限り、日本の企業において年功序列の影響はまだまだ健在のようです!
まとめ
今回、年齢別・勤続年数別の給与データを分析した結果、日本の給与体系には年功序列の影響がまだ色濃く残っていることがわかりました。
現在、日本の給与所得者数は10年前より増えているものの、直近では減少傾向にあります。また、女性の給与は年齢による変動が少ないものの、勤続年数の影響は受けていることがわかりました。男性に関しては、年齢・勤続年数とともに給与が上がる傾向が強く、年功序列の色が濃いと言えます。
「実力主義の時代」と言われることもありますが、全体のデータを見ると、年功序列の影響がまだまだ根強く残っていることが浮き彫りになりました!
統計データを正しく読み解く力は、ビジネスの世界でも非常に重要です。今回の分析を通じて、「数字の裏に隠れた本当の意味を考えること」の大切さを感じていただけたら幸いです。
さて、次回もビジネス情報収集に役立つ話題をお届けします!お楽しみに!