データの関係を読み解こう-第1回:2つの数字の関係を“目で見る”【統計学をやさしく解説】
公開日
2025年11月2日
更新日
2025年10月29日
この記事の主な内容
はじめに:数字の“つながり”を可視化しよう
今回のテーマでは「散布図・相関・回帰」を全3回に分けてやさしく解説します。第1回の今回は“散布図”を中心に、数字の関係を目で見て理解する力を身につけましょう。
「広告費を増やすと売上は上がるのか?」――そんな問いに答えるとき、ただ数字を並べても関係は見えてきません。そこで役立つのが、散布図(さんぷず)です。散布図は「2つの数値の関係を、点の集まりで表すグラフ」。数字の“つながり”を目で感じることができる、統計分析の第一歩です。
散布図を理解すれば、「関係がありそう」「影響が強い」といった“直感”を、グラフとして捉えられるようになります。難しい数式は一切不要。Excelがあればすぐ作れます。
散布図とは?
散布図は、横軸に1つの変数、縦軸にもう1つの変数を取り、対応する2つの数値を1つの点で表したものです。例えば、ある月の「広告費」と「売上」をそれぞれプロットすれば、2つの数字の関係が見えてきます。
広告費(万円)
図1:広告費と売上の散布図(右上がり=正の関係)
グラフを見てみると、右上がりの傾向が見えます。つまり「広告費が増えると売上も上がる傾向」があることを、視覚的に把握できるのです。これが「正の関係」と呼ばれるパターンです。
散布図で見える3つのパターン
1. 正の相関(右上がり)
→ 広告費が増えると売上も増える。右上がりの線のように点が並ぶのが特徴です。
2. 負の相関(右下がり)
→ 価格が高くなると販売数が減る。右下がりのライン状に分布し、マイナスの関係性を表します。
3. 無相関(バラバラ)
→ 社員数と平均気温のように関係がない。点が広く散らばり、明確な傾向線が見えません。
これら3つのパターンを理解しておくと、グラフを見ただけで「どんな関係か」「影響し合っているか」を瞬時に把握できます。さらに、正・負・無相関の違いを感覚的に理解できれば、次回扱う“相関係数”の意味もスムーズに理解できるようになります。
外れ値(はずれち)を見逃さない
散布図では、ときどき他の点から大きく離れた「外れ値」が現れます。これは単なる入力ミスの場合もありますが、特別な要因を示す“ヒント”かもしれません。
広告費(万円)
図2:外れ値の例(右端下の点が他と離れている)
例えば「ある月だけ極端に売上が高い」としたら、特別キャンペーンや季節要因かもしれません。外れ値を見つけたら、「なぜ?」と一度立ち止まることが重要です。
Excelで散布図を作る方法(かんたん3ステップ)
1)データを2列に並べる(例:A列=広告費、B列=売上)
2)[挿入]→[散布図]→[マーカーのみ]
3)グラフタイトル・軸ラベルをつけて完成!
ヒント:Excelの「近似曲線」を追加すると、点の流れに沿った“傾向線”も表示できます。次回の「相関」や「回帰」でこの線を使います。
散布図が教えてくれること
散布図は、データを「数字」ではなく「形」で見るツールです。ビジネスの場では:
・ 広告費と売上の関係
・ 価格と購買数の関係
・ 残業時間と生産性の関係
など、さまざまな場面で使えます。
「なんとなく関係ありそう」を、視覚的に確かめる。これが、データ分析の最初のステップです。
まとめ
— 散布図は“2つの数値の関係”を点で表すグラフで、データの関係性を視覚的に確認できる最も基本的なツールです。
— 点の並び方から「正の関係」「負の関係」「無関係」を判断でき、データの傾向やパターンを直感的に理解できます。
— 外れ値は単なる誤りではなく、特別な要因やチャンスを示すこともある重要な観察対象です。
— 散布図を作ることで、データ分析の出発点となる“仮説づくり”の力を鍛えられます。どの変数が関係しているのか、次に何を調べるべきかを考えるヒントが得られます。
— ビジネスでも「売上と広告費」「価格と購買数」など、多くの実務データで活用できる汎用的な手法です。
次回は、この散布図で見た「関係」を数字で測る「相関係数」について、やさしく解説します。





