リスキリング遅れ、社会人の学びが続かない4つの理由
公開日
2025年9月3日
更新日
2025年10月14日
「将来のために何か学びたい」
「スキルアップして市場価値を高めたい」
そう思っても、いざ勉強を始めても、なかなか続かない。
そんな悩みを抱えている方は多いのではないでしょうか。
日本の社会人が学び直さないという現状は、個人の問題だけではなく、日本経済全体の課題とも密接に関係しています。近年、日本の労働生産性は主要国と比較して相対的に低迷しており、その一因としてIT人材やデジタルスキルの不足が指摘されています。
国もこの状況を問題視しており、経済産業省が警鐘を鳴らした「2025年の崖」は、DX(デジタルトランスフォーメーション)の遅延がもたらす経済損失の可能性を示唆しています。
しかし、「学び直しの必要性」を感じていても、多くの人が学習に踏み出せないでいます。その背景には、どのような心理や障壁が存在するのでしょうか。そこで今回は、「勉強しない社会人」が抱える「4つの障壁」と、その心理の深層について、具体的なデータをもとに解説ししたいと思います。
この記事の主な内容
1. 心理的障壁:「特に理由がない」の裏側にある漠然とした不安
学習しない理由の筆頭に「特に理由がない」が挙げられることがあります。これは、学習への危機感の欠如を示していると考えられます。
多くの社会人は、将来に対して漠然とした不安を抱えています。しかし、その不安が「学ばなければまずい」という切迫した危機感にまでは高まっていないのです。
「面倒くさい」「自分には難しそう」といった学習への不安が、現状維持の気持ちを上回ることがないため、「なんとなく」学習を避けてしまうのだと思います。この状態を打破するには、学習を始めるハードルを下げるだけでなく、「学ばないことの損失」を具体的に提示し、漠然とした不安を「このままではリストラの対象になるかもしれない」「時代に取り残され、ビジネスパーソンとして最弱になる」といった具体的な危機感へと変える必要があると考えます。
2. 時間的障壁:「忙しい」という物理的な壁
「仕事で忙しい」「時間がない」という理由は、学びを遠ざける物理的な障壁として広く認識されています。
特に多忙な社会人にとって、学習を「習慣」として定着させることは容易ではありません。総務省の調査によると、令和3年における1日の平均学習時間は、1週間のうちの「仕事」や「家事」に比べて非常に短いことがわかっています。
この壁を乗り越えるには、「学ぶ時間」を無理に確保しようとするのではなく、「日常の延長」として自然に学習に触れる機会を創出することが重要です。例えば、通勤時間や休憩時間といったスキマ時間を有効活用したり、短時間で完了する学習コンテンツに触れることから始めるのも一つの手です。
3. 金銭的障壁:「費用が高い」という認識の重み
「費用が高い」という認識は、学習をためらわせる大きな要因です。しかし、生涯にわたってキャリアを築き、活躍し続けることを考えると、この「費用」を長期的な投資として捉えることができます。
例えば、10万円の学習費用を支払ったとしても、30年間働き続けると仮定した場合、1日あたりの費用は約9円です。これは、缶コーヒー1本よりもはるかに安価な金額です。学習によって得たスキルが、長期的に自身の市場価値を高め、年収アップやキャリアアップにつながると考えると、決して高いコストではないと考えられます。
この障壁を乗り越えるためには、短期的な「支出」ではなく、長期的な「投資」として学びを捉え直すことが有効です。スキルを身につけることで、将来の選択肢を増やし、経済的な安定や精神的な余裕を生み出すことができるのは間違いないと思います。
4. 成果・評価の障壁:学びが「自己満足」で終わる不安
せっかく学んでも、その成果が業務改善や昇給といった形で定量的に評価されにくいという問題も存在します。特に、学習費用を会社が負担しない旧態依然とした組織では、この傾向が顕著だと考えられます。
潜在層に学習を促すには、学びが「自己満足」で終わらず、「仕事ですぐに活かせる」「給与に連動する」という明確な価値を提示する必要があります。
例えば、データ分析やAI活用を学ぶことで、どれだけ業務効率が向上し、どれだけ残業時間を削減できるかを具体的な数字で示すことが有効です。また、資格取得やスキル習得が、昇給やキャリアアップにどうつながるのかを明確に伝えることも重要です。
まとめ
今回、社会人が学び直す際に直面する「4つの障壁」について解説しました。
- 心理的障壁:漠然とした不安を具体的な危機感に変える
- 時間的障壁:スキマ時間を活用し、学習を日常の延長にする
- 金銭的障壁:補助金や助成金制度を活用する
- 成果・評価の障壁:学びの価値を明確に提示する
これらの障壁を乗り越えるためには、従来の「リスキリング」という言葉に依存した受動的な戦略から脱却し、彼らの日常的な悩みに寄り添い、解決策としてデータ分析やAIを提示する能動的なアプローチが必要です。
『学びが終われば役に立つだけ』で、もはやそのスキルなしで仕事を行うことは考えれらません。学習を「難しくて面倒なもの」ではなく、「楽しくて簡単、そして役立つもの」として再定義し、一人でも多くの人が「学びたい」と能動的に考えられるようになることが、個人のキャリア形成、ひいては日本経済の発展につながっていくのだと思います。ぜひ、自分の周囲の人にも学びの輪を広げていきましょう!!
<文/綱島佑介>
参考・引用
- 日本の労働生産性の国際比較|公益財団法人日本生産性本部
- なぜ『学習しない人』『仕事の勉強をしたくない人』になってしまうのか?社員の意欲を保つ方法について|識学総研
- 「全然勉強しない社会人」がビジネスシーンで “最弱” な理由|Study Hacker
- 中小企業のDX推進にはSaaSが不可欠!?おすすめの理由とメリット|KDDI法人サイト
- 転職をご検討の方|リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業





