【生成AI時代の7原則:第3回】成果を決めるのは“問い”─AIと人の力を最大化するPrompt Powerとは?
公開日
2025年12月18日
更新日
2025年12月11日
この記事の主な内容
1.これはどのようなスキルなのか?
問いの力(Prompt Power)とは、問題解決や意思決定の出発点となる「問い」を適切に立てる能力です。AIがどれだけ進化しても、AIが出す答えの質は“問いの質”に依存します。つまり、良い問いが立てられる人ほどAIを最大限に使いこなせるということです。
問いの力を持つ人の特徴:
・目的を的確に言語化できる
・必要な情報と不要な情報を区別できる
・思考の焦点を適切に絞れる
・AIにとって答えやすい構造で質問できる
AIは「答えを作る」のが得意ですが、「問いをつくる」のは人間だけが担える役割です。このスキルが仕事の成果を大きく左右します。
2.なぜAI時代に重要なのか?
AI時代の仕事は、次の3ステップで成り立っています。
1. 問いをつくる(人)
2. 答えを生成する(AI)
3. 判断し意味づける(人)
この中で最も重要なのが「問いをつくる」プロセスです。問いがあいまいだと、AIの出力も当然あいまいになります。逆に、目的の明確な問いを立てれば、AIの出力精度は劇的に向上します。
実務ではこのような場面で差がつきます:
・企画のアウトライン作成
・データ分析の方向性決定
・資料作成で押さえるポイントの特定
・改善策の抽出
・意思決定の判断軸づくり
AIの力を最大化するのは“誰が一番良い問いをつくれるか”。ここがこれからのビジネスパーソンの勝負どころです。
3.どのように鍛えられるのか?(具体的トレーニング)
● 方法1:目的から逆算して問いをつくる
問いを立てる際は「何のために?」を最初に明確にします。
目的が曖昧だと、問いも曖昧になり、AIの回答もブレます。
例:
・悪い問い:「提案書の作り方を教えて」
・良い問い:「意思決定者が5分で判断できる提案書の構成案を作って」
目的の明確さが、問いの質を決めます。
● 方法2:前提・条件を整理する
良い問いは、条件が明確です。
例:
・対象は誰なのか?
・制約は何か?
・期間はどれくらいか?
条件が整理されていれば、AIはより適切な答えを返せます。
● 方法3:視点を切り替えて問いを増やす
良い問いは1つではなく、複数の角度から考えることで精度が高まります。
例:
・Why(なぜ?)
・What(何が?)
・How(どのように?)
視点を変えるだけで、AIが引き出す情報の幅が広がります。
● 方法4:AIに“問いの改善”を依頼する
AIは問いを磨く相棒です。
例:
「この質問をもっと良い質問に改善してください」
問いの質がどんどん洗練され、思考の精度も上がっていきます。
4.このスキルをチェックする練習問題
あなたは新しいサービス改善プロジェクトのリーダーです。最近、ユーザーの離脱が増えているという報告がありました。ただし、原因はまだ特定されていません。
▼目的
離脱の主要原因を特定し、改善方針を決めること。
▼質問
目的達成のために、AIに投げるべき“良い問い”を3つ作成してください。
5.解答と解説(例)
● 良い問いの例
1. 「直近3ヶ月のユーザー行動データから、離脱直前に共通して見られる行動パターンは何ですか?」
2. 「離脱につながる可能性が高い要因を、重要度順に3つ挙げてください。その根拠も説明してください。」
3. 「離脱改善につながる施策候補を5つ提示し、それぞれの実行難易度と期待効果を比較してください。」
● 解説
・目的に直結している
・データ → 要因 → 施策の“論理の流れ”がある
・AIが回答しやすい構造になっている
・曖昧な部分が少なく、判断基準が明確
良い問いとは「目的を達成するために必要な情報を、最短距離で引き出すための設計」です。
まとめ
AI時代の成果は、問いの質で決まります。AIは答えを返してくれますが、何を聞くか、どう聞くかを決めるのは人間です。
・目的を明確にする
・条件を整理する
・視点を切り替える
・AIで問いを磨く
この4つを習慣にするだけで、仕事の精度もスピードも大きく変わります。
次回は「批判的読み取り(Critical Reading)」について解説していきます。





