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共創する知性へ 生成AIが変える働き方の本質 - 2022年~

公開日

2025年8月25日

更新日

2025年11月5日

1995年にWindows95が発売され、パソコンが一気に一般家庭にも普及したことを皮切りに、私たちの働き方は急速に変化してきました。インターネットの登場により情報が世界中に広がり、スマートフォンの普及とクラウドの進化により、場所や時間に縛られない働き方が可能になりました。その過程で蓄積された膨大なデータは、やがてデータサイエンスの時代を生み出し、私たちはデータを”活かす”文化を手にし始めました。

そしていま、次のステージへと進もうとしています。30年に及ぶテクノロジーの進化の先に現れたのが、文章や画像、コードなどを自動で”生成”するAIの登場です。人とAIが共に創る時代、つまり「生成AI時代」が始まりました。



背景:AIが”知的労働”の概念を再定義しはじめた

2022年末、OpenAIが公開したChatGPTは、瞬く間に世界中で注目を集めました。対話形式で文章を生成するその能力は、「AIが人間の知的作業を代替する」という未来像を、現実のものとして感じさせるに十分なインパクトを持っていました。

それはちょうど、かつてオフィスにパソコンが導入されたときのような驚き──あるいはインターネットが社内に引かれ、検索すれば何でも手に入るようになったときの感覚──を、知的労働の世界にもたらしたのです。

ChatGPT、Midjourney、Stable Diffusion、GitHub Copilotなど、自然言語処理・画像生成・コード補助といった複数領域で次々に実用的な生成AIが登場。かつて「ブルーカラー」「ホワイトカラー」と分けられた仕事観は、いまや「AIと協働できるか否か」という新たな軸に再編されつつあります。

文章作成、企画提案、議事録、メール、コード記述といった業務において、AIは単なる補助ではなく”共創パートナー”として活躍を始めました。特定の職種だけでなく、すべてのビジネスパーソンがAIとの付き合い方を模索する時代が始まったのです。

こうした流れを受けて、ビジネスの現場では「AIをどう使いこなすか」が個人と組織の競争力を左右する要素となり、AIスキル習得が新たなリスキリング領域として急速に広がっていきます。もはや職種や肩書きではなく、「どのようにAIを活用できるか」がキャリアを左右する時代が、確実に近づいています。

必要になったスキル

  • プロンプト設計力:AIに適切な指示を出し、望むアウトプットを得るための対話スキル
  • AIの出力結果の評価・修正力:AIが返した情報の信頼性や文脈妥当性を判断する力
  • 著作権・情報倫理に関するリテラシー:生成物の権利・データの出所などに対する基礎理解
  • 業務への統合力:AIを既存の業務フローに自然に組み込むための設計力や再構築力
  • 発想・創造の拡張力:AIとの対話を通じて、自分の発想をより広げるマインドセット
  • データ分析的思考力:出力内容の背景にある情報構造や因果関係を読み解く力
  • 要約と再構成の能力:長文や複数案を目的に応じて再構成する編集力
  • 対話設計スキル:AIとの継続的なラリーを通じて精度を高める会話構築能力
  • 人間らしさの再定義:曖昧さや共感といったAIにない強みを活かすメタ認知力

不要になったスキル

  • ゼロから作成することへのこだわり:一字一句手打ちで作成することが必須ではなくなった
  • 過剰な資料量や装飾:AIで瞬時に要約・視覚化できるため、情報密度の高さより本質が重要に
  • 属人的なナレッジ共有:知識を「記憶」するよりも、必要なときに「再現」できるスキルが求められるように
  • 一律の会議資料作法:AIの自動要約や話し言葉→文書変換により、厳密な書式や文法が相対化されてきている
  • 「経験年数=スキルの証明」という思考:AIの登場により、新しい技術習得のスピードと実装力が優先されるようになった
  • 「自分の頭で考えなければ意味がない」という固定観念:AIとの共創を前提とした思考が求められる時代に変わった

当時のリスキリング状況

生成AIの爆発的な普及を受け、多くの企業では「使ってみたが、業務にどう活かせばいいかわからない」という段階に直面しました。2023年には、研修会社や自治体によるAI活用講座、eラーニング講座の提供も急増し、AI初心者層を対象としたリテラシー教育が一気に広がります。

一方で、表面的な使い方にとどまるケースも多く、「なぜAIにこう聞くとこの答えになるのか」「どこまでAIに任せてよいのか」といった設計力や判断力を持った人材は依然として不足していました。

そのため、一部企業ではプロンプト設計専門職を立ち上げたり、部門横断でのAI活用コミュニティを構築したりといった動きが活発化。AIを「全社の業務変革ドライバー」として捉え、中長期的な活用戦略を描く動きが加速しています。


※まずは生成AI活用としてこれができれば大丈夫!動画はこちら

教訓:”考える力”はAI時代の最大の武器に

AIの登場により、知識の再生産や定型文の作成といった仕事の多くは、自動化・効率化されていきます。しかしその一方で、AIに正しい問いを投げかけ、意図を持ったアウトプットを引き出すには、やはり人間側の”考える力”が欠かせません。

情報をただ受け取るだけの姿勢では、AIの力は活かしきれないため、自分で問いを立て、仮説を立て、検証し、必要なら修正する。この“人間の知的営み”こそが、AIを最大限活用する鍵となります。

そしてこの力は、データサイエンス時代において求められていた「データを意味づけ、活かす力」とも地続きにあります。つまり、生成AI時代に必要なのは、単にAIを”触れる”力ではなく、AIと”対話し、共創する”力であり、それこそが現代のビジネススキルの核となりつつあるといえます。

次回予告:変化し続けるスキルの時代に必要な視点とは?

これまで6つの時代を振り返ってきました。次回は総まとめとして、「変化し続ける時代」においてどんな姿勢で学び、スキルをアップデートしていくべきなのか。そのために役立つフレームワークや思考法を紹介し、リスキリングの本質に迫りたいと考えています。

<文/綱島佑介>

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